55 / 84
じゃじゃ馬娘の嫁入り⑫
しおりを挟む
「満場一致で賛成だったぁ!?」
「あぁ。皆ウィルが納得しているならと、全てお任せする方向で話がまとまったよ。」
「…心配するだけ損だったってか。はぁ…。」
若干緊張しながら、親父からの報告を聞くことになったが、結果拍子抜けするほどあっさりとしたもんだった。みんなが手入れし続けてくれていた気持ちを考えれば、多少なりとも揉めるもんだと思っていたが…。まさかの満場一致とは。
「もちろん、皆の気持ちだけで言えば難しい部分はあっただろう。しかし、お前が手紙を持ってきてくれたおかげでみんな受け入れる決心ができたようだ。つまりはお前のおかげだ、レイ。」
「…オレじゃなくて、ウィル自身のおかげだろ。あいつが、みんなの気持ちを考えたうえで、決めたことなんだからよ。」
「…そうだな。ウィルにも、よろしく伝えてくれ。もし、叶うのなら、この村に顔を出しても欲しいもんだ…。」
「…あぁ。」
きっと、ウィルが手紙に託した思いが伝わったんだな。帰ったら、あいつに伝えなきゃなんないことが山ほどできそうだ。とにかく、エナたちにとっちゃ新規事業への第一歩がやっと踏み出せたってとこだな。ガーディさんは早速この後の視察のために、同行していた専門家とやらと相談しているようだ。
「…ここが、ウィル君のご実家。」
「あぁ。オレももうここに来ることはないと思っていたが…。」
特に何もできることはないが、オレもウィルの実家へと一緒に向かうことにした。子供の頃何度も行った所だが…。少し緊張しながら行ってみると、そこにはオレの記憶とほとんど同じ風景が広がっていた。みんな、相当丁寧に管理していてくれたんだろうな。
「…きれいなところ。」
「そうだね、エナ。…早速だが、我々は始めさせてもらおう。」
「アタシ、邪魔にならないように見てる。」
「そうか、気をつけてな。レイ君、くれぐれも、娘を頼むよ。」
「あぁ、はい。」
「ちょっと、お父さん!」
「…ガーディさん、エナさんが可愛いのね。ほら、話し合っている途中だっていうのにこっち見ているわ。」
「…少しは集中してほしいです。」
本格的な視察が始まると、親父もそっちに混ざってしまうのでついて来ていたルゥも暇になってしまったようだ。オレたち3人はすっかり暇を持て余してしまって、適当な所に腰を下ろしながら雑談を始めた。時折ガーディさんがこちらの様子を窺うように振り返るのを、エナは少しうっとおしそうにしている。
「エナさんの気持ち、ちょっと分かるかも。私もしつこいくらいに様子見に来られる時期があったから。」
「自業自得だろ。」
「分かってるわよ。あの時は、とにかく考えるよりも先に動いてみるタイプだったから。」
「どうせ今もそうだろ。」
「ちーがーいーまーすー!これでも成長しているんですー!」
「…あはは。」
腰に手を当ててわざとらしく怒って見せるルゥに、エナもつい吹き出してしまったようだ。なんとなく緊張しているんだろうなって感じはしてたから、これでもう少し気楽にできたらいいんだが。…そこら辺の機微は、同性であるルゥの方が察してやれるところなのかもしれない。
「エナさんは、兄弟はいないの?」
「はい。…だからお父さんも、しつこくちょっかいかけてくるのかも。」
「しつこくって…。」
父親も一苦労だな、同情するぜ…。
「一人っ子ってそういうものなのかしら?あまり想像できないけど…。」
「まぁな、オレらはそういう環境にないからな。」
「双子って、どんな感じ?」
「どんな感じって言われてもな…。」
「当たり前にいるもんだから、どうも思ったりは…。あ、でも何でもセットみたいに扱われるのが嫌だったことはあったかも。」
「そっかぁ…。それは、アタシには経験できないなぁ…。」
「経験できなくていいと思うぜ。」
そのあとも、なんてことない昔のことを思い出しながら話していたが、エナにとっては新鮮な感覚だったようだ。いつも妹に振り回されていたこと、世話を焼かれるのが嫌でムキになって外の森に入って迷子になった話、初めて合った村の外の人間に、男の双子だって勘違いされていた話…。
中でもエナの笑いを誘ったのは、オレがこっそり晩飯をつまみ食いした時、真っ先にルゥの奴が疑われて怒られて知った時の話だった。ルゥが反論しても聞き入れてもらえないもんだから、珍しく大号泣して…。少しして勘違いだったと気づいて家族全員で謝ったが、機嫌が直るまでに1週間はかかってたな。当時はなかなかの大事に感じたが、今となっちゃ確かに笑い話かもしれないな。
「あぁ。皆ウィルが納得しているならと、全てお任せする方向で話がまとまったよ。」
「…心配するだけ損だったってか。はぁ…。」
若干緊張しながら、親父からの報告を聞くことになったが、結果拍子抜けするほどあっさりとしたもんだった。みんなが手入れし続けてくれていた気持ちを考えれば、多少なりとも揉めるもんだと思っていたが…。まさかの満場一致とは。
「もちろん、皆の気持ちだけで言えば難しい部分はあっただろう。しかし、お前が手紙を持ってきてくれたおかげでみんな受け入れる決心ができたようだ。つまりはお前のおかげだ、レイ。」
「…オレじゃなくて、ウィル自身のおかげだろ。あいつが、みんなの気持ちを考えたうえで、決めたことなんだからよ。」
「…そうだな。ウィルにも、よろしく伝えてくれ。もし、叶うのなら、この村に顔を出しても欲しいもんだ…。」
「…あぁ。」
きっと、ウィルが手紙に託した思いが伝わったんだな。帰ったら、あいつに伝えなきゃなんないことが山ほどできそうだ。とにかく、エナたちにとっちゃ新規事業への第一歩がやっと踏み出せたってとこだな。ガーディさんは早速この後の視察のために、同行していた専門家とやらと相談しているようだ。
「…ここが、ウィル君のご実家。」
「あぁ。オレももうここに来ることはないと思っていたが…。」
特に何もできることはないが、オレもウィルの実家へと一緒に向かうことにした。子供の頃何度も行った所だが…。少し緊張しながら行ってみると、そこにはオレの記憶とほとんど同じ風景が広がっていた。みんな、相当丁寧に管理していてくれたんだろうな。
「…きれいなところ。」
「そうだね、エナ。…早速だが、我々は始めさせてもらおう。」
「アタシ、邪魔にならないように見てる。」
「そうか、気をつけてな。レイ君、くれぐれも、娘を頼むよ。」
「あぁ、はい。」
「ちょっと、お父さん!」
「…ガーディさん、エナさんが可愛いのね。ほら、話し合っている途中だっていうのにこっち見ているわ。」
「…少しは集中してほしいです。」
本格的な視察が始まると、親父もそっちに混ざってしまうのでついて来ていたルゥも暇になってしまったようだ。オレたち3人はすっかり暇を持て余してしまって、適当な所に腰を下ろしながら雑談を始めた。時折ガーディさんがこちらの様子を窺うように振り返るのを、エナは少しうっとおしそうにしている。
「エナさんの気持ち、ちょっと分かるかも。私もしつこいくらいに様子見に来られる時期があったから。」
「自業自得だろ。」
「分かってるわよ。あの時は、とにかく考えるよりも先に動いてみるタイプだったから。」
「どうせ今もそうだろ。」
「ちーがーいーまーすー!これでも成長しているんですー!」
「…あはは。」
腰に手を当ててわざとらしく怒って見せるルゥに、エナもつい吹き出してしまったようだ。なんとなく緊張しているんだろうなって感じはしてたから、これでもう少し気楽にできたらいいんだが。…そこら辺の機微は、同性であるルゥの方が察してやれるところなのかもしれない。
「エナさんは、兄弟はいないの?」
「はい。…だからお父さんも、しつこくちょっかいかけてくるのかも。」
「しつこくって…。」
父親も一苦労だな、同情するぜ…。
「一人っ子ってそういうものなのかしら?あまり想像できないけど…。」
「まぁな、オレらはそういう環境にないからな。」
「双子って、どんな感じ?」
「どんな感じって言われてもな…。」
「当たり前にいるもんだから、どうも思ったりは…。あ、でも何でもセットみたいに扱われるのが嫌だったことはあったかも。」
「そっかぁ…。それは、アタシには経験できないなぁ…。」
「経験できなくていいと思うぜ。」
そのあとも、なんてことない昔のことを思い出しながら話していたが、エナにとっては新鮮な感覚だったようだ。いつも妹に振り回されていたこと、世話を焼かれるのが嫌でムキになって外の森に入って迷子になった話、初めて合った村の外の人間に、男の双子だって勘違いされていた話…。
中でもエナの笑いを誘ったのは、オレがこっそり晩飯をつまみ食いした時、真っ先にルゥの奴が疑われて怒られて知った時の話だった。ルゥが反論しても聞き入れてもらえないもんだから、珍しく大号泣して…。少しして勘違いだったと気づいて家族全員で謝ったが、機嫌が直るまでに1週間はかかってたな。当時はなかなかの大事に感じたが、今となっちゃ確かに笑い話かもしれないな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる