某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

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じゃじゃ馬娘の嫁入り⑫

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「満場一致で賛成だったぁ!?」
「あぁ。皆ウィルが納得しているならと、全てお任せする方向で話がまとまったよ。」
「…心配するだけ損だったってか。はぁ…。」

若干緊張しながら、親父からの報告を聞くことになったが、結果拍子抜けするほどあっさりとしたもんだった。みんなが手入れし続けてくれていた気持ちを考えれば、多少なりとも揉めるもんだと思っていたが…。まさかの満場一致とは。

「もちろん、皆の気持ちだけで言えば難しい部分はあっただろう。しかし、お前が手紙を持ってきてくれたおかげでみんな受け入れる決心ができたようだ。つまりはお前のおかげだ、レイ。」
「…オレじゃなくて、ウィル自身のおかげだろ。あいつが、みんなの気持ちを考えたうえで、決めたことなんだからよ。」
「…そうだな。ウィルにも、よろしく伝えてくれ。もし、叶うのなら、この村に顔を出しても欲しいもんだ…。」
「…あぁ。」

きっと、ウィルが手紙に託した思いが伝わったんだな。帰ったら、あいつに伝えなきゃなんないことが山ほどできそうだ。とにかく、エナたちにとっちゃ新規事業への第一歩がやっと踏み出せたってとこだな。ガーディさんは早速この後の視察のために、同行していた専門家とやらと相談しているようだ。

「…ここが、ウィル君のご実家。」
「あぁ。オレももうここに来ることはないと思っていたが…。」

特に何もできることはないが、オレもウィルの実家へと一緒に向かうことにした。子供の頃何度も行った所だが…。少し緊張しながら行ってみると、そこにはオレの記憶とほとんど同じ風景が広がっていた。みんな、相当丁寧に管理していてくれたんだろうな。

「…きれいなところ。」
「そうだね、エナ。…早速だが、我々は始めさせてもらおう。」
「アタシ、邪魔にならないように見てる。」
「そうか、気をつけてな。レイ君、くれぐれも、娘を頼むよ。」
「あぁ、はい。」
「ちょっと、お父さん!」
「…ガーディさん、エナさんが可愛いのね。ほら、話し合っている途中だっていうのにこっち見ているわ。」
「…少しは集中してほしいです。」

本格的な視察が始まると、親父もそっちに混ざってしまうのでついて来ていたルゥも暇になってしまったようだ。オレたち3人はすっかり暇を持て余してしまって、適当な所に腰を下ろしながら雑談を始めた。時折ガーディさんがこちらの様子を窺うように振り返るのを、エナは少しうっとおしそうにしている。

「エナさんの気持ち、ちょっと分かるかも。私もしつこいくらいに様子見に来られる時期があったから。」
「自業自得だろ。」
「分かってるわよ。あの時は、とにかく考えるよりも先に動いてみるタイプだったから。」
「どうせ今もそうだろ。」
「ちーがーいーまーすー!これでも成長しているんですー!」
「…あはは。」

腰に手を当ててわざとらしく怒って見せるルゥに、エナもつい吹き出してしまったようだ。なんとなく緊張しているんだろうなって感じはしてたから、これでもう少し気楽にできたらいいんだが。…そこら辺の機微は、同性であるルゥの方が察してやれるところなのかもしれない。

「エナさんは、兄弟はいないの?」
「はい。…だからお父さんも、しつこくちょっかいかけてくるのかも。」
「しつこくって…。」

父親も一苦労だな、同情するぜ…。

「一人っ子ってそういうものなのかしら?あまり想像できないけど…。」
「まぁな、オレらはそういう環境にないからな。」
「双子って、どんな感じ?」
「どんな感じって言われてもな…。」
「当たり前にいるもんだから、どうも思ったりは…。あ、でも何でもセットみたいに扱われるのが嫌だったことはあったかも。」
「そっかぁ…。それは、アタシには経験できないなぁ…。」
「経験できなくていいと思うぜ。」

そのあとも、なんてことない昔のことを思い出しながら話していたが、エナにとっては新鮮な感覚だったようだ。いつも妹に振り回されていたこと、世話を焼かれるのが嫌でムキになって外の森に入って迷子になった話、初めて合った村の外の人間に、男の双子だって勘違いされていた話…。
中でもエナの笑いを誘ったのは、オレがこっそり晩飯をつまみ食いした時、真っ先にルゥの奴が疑われて怒られて知った時の話だった。ルゥが反論しても聞き入れてもらえないもんだから、珍しく大号泣して…。少しして勘違いだったと気づいて家族全員で謝ったが、機嫌が直るまでに1週間はかかってたな。当時はなかなかの大事に感じたが、今となっちゃ確かに笑い話かもしれないな。
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