某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

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じゃじゃ馬娘の嫁入り⑬

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「…だからよ、このくだり何回あるんだよ…。」
「まぁ…よかったじゃない。特に問題なかったみたいで。」
「はぁ…。」

視察の結果、小規模で開始する分には問題なし、とのことだった。安心した半面、なんだかこう…手ごたえってもんが…。ルゥの言う通り、よかったに違いはないんだが。

「いやーよかったよかった、本当によかった!せっかくいただいた話だったから、何とかものにしたいと思っていたので、一安心ですよ!」
「それはこちらもですよ、ガーディさん。この小さな村を活用していただけるなら、こんなに嬉しいことはありません。それに…ウィルのことも、私どもは気がかりでしたから。」
「そういった意味でも、ウィル君にはいい報告ができそうです。本当に、ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらそこ!ウィルに、よろしくお伝えください。」

がっちりと握手をするガーディさんと親父を見て、エナはほっと息を吐いた。こいつの念願が叶った瞬間でもあるんだもんな。

「おう、よかったな。これでお前の夢が叶ったな。」
「ありがと。…でも、これで終わりじゃない。この事業が軌道に乗るまで、気は抜けないもの。この話に協力してくれたたくさんの人がいる。その人たちのためにも、頑張らないと。」
「…そうかい。」

飛び上がって喜びそうなもんだと思ったが、本人は実に冷静なもんだった。うれしいのはうれしいんだろうが、これから本格的に稼働することになれば、当然ながら責任がついて回る。それをなんとなくわかっているんだろうな。子ども扱いするなってのも、あながちその通りだな、これは。
オレたちはウィルへの報告をするため、街へといったん帰ることにした。村総出で見送りに来てくれたのはうれしいやらくすぐったいやら…。その中でも、新鮮な野菜をこれでもかと持たされたのには笑うしかなかった。ウィルとアレックスの分もあるんだからね、こんな時代じゃ何が役に立つか分からないんだからとにかく持っていきな!と馬車にまで押しかけてきそうな勢いだったので、対応を親父とルゥに押し付けて全速力で村を後にしたのだった。

「…という感じでな。つつがなく新規事業が開始できそうだぜ。まずはお試しって感じなんだろうけどな。」
「そうだったんだ。お疲れ様、レイ。エナさんも。」
「いえ、アタシは本当についていくだけでしたから…。」

ウィルは事の顛末だけでなく村の様子も聞きたかったようで、それならばとアレックスの奴も呼んでどんなもんだったかを伝えていた。エナはアレックスとは初対面だったから、想像していた人物像と違っていたのかなかなか驚いていた。まぁでかいからな、アレックスは。あの手紙も村のみんなで読んで、この事業に協力してくれる心づもりができた話をすると、ウィルはそんなにたくさんの人に読まれると思っていなかったと恥ずかしそうにしていた。

「ま、何にせよ。ここまでは随分ととんとん拍子に進んできちまったが、ここからが本番なんだよな、エナ?」
「もちろん!現状小規模で開始して様子を見ることになるけど、そこからどんどん拡大させていかないとね!」
「期待してるぜ。」
「え、エナさんはすごいね。新しいことを考えつくなんて…。し、しかも、その実現に向かって行動できるなんて。」
「アタシはただ…何かできないかって、必死で…。」
「だ、誰にでもできることじゃ、ないよ。自信持っていいと、僕は思うよ…。」
「行動する元気はあんだけあんのに、変なところで自信なくすよなぁお前はさ。オレたちは感謝してるんだぜ。村の奴らだってそうだ。胸張れよ。」
「…うん。」
「俺からも、改めて感謝を。エナさん、ありがとう。これからもよろしくお願いします。」
「はい!」

これからどうなることやら。先日のガーディさんの一番いい馬を貸してくれるよう手配するって約束を果たしてもらうためにも、何とか頑張ってほしいもんだが。ささやかながら夢へ歩みを進めたことへの労いとこれからの激励も兼ねて、エナと祝いの席を設けたのだった。約束の証として贈られた蹄鉄が、ギルドのカウンターの上で輝いている。
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