66 / 84
冷えた体に
しおりを挟む
カランカラン…
「こ、こんにちは。」
「ん?あぁ、アンタかい。」
「おー?アレク坊じゃないか。どうしたんじゃ?」
寒さが身に染みる年の瀬。時折手伝いに顔を出しているアレックスは、今日も今日とて薬屋『魔女の一撃』に足を運んでいた。
「いくらアタシでも、この年の瀬にまともに営業はしないよ。手伝いなんてのも必要ないさね。」
「そんなこと言ってー。先輩はいつでも薬が必要な人が来てもいいように、待ち構えるつもりでしょうに!」
「黙ってなジーク!」
「あはは…。」
この店の店長であり一部から魔女とも恐れられるアメリアは、我が物顔で入り浸っているジークに目を吊り上げて叫んでいる。それをいいじゃないか!と軽く笑って流すまでがいつもの光景だ。アレックスから見てジークは年齢の割に元気な男だ。毎日薬屋に来なければならないような人間には思えないが、それでもここに足しげく通っているのは別の理由があるのだろうか。…二人が楽しそうにしているのでいいとは思うが。
「…客が来たら、対応しないわけにはいかないじゃないか。普段通りに開店しないつもりなのは本当さ。」
「この間まで、常備薬を買い込もうとするお客さんでいっぱいでしたもんね…。」
年の終わりから新しい年を迎えての数日間まで、通常営業はしないと知っているお客さんは前もって必要な薬を買い求めに来ていた。手伝いに来ているアレックスは、ここ数日の忙しさを思い出してため息が出そうになる。
「まったくじゃー!わしもただ遊びに来ただけじゃというのに駆り出されて、体のあちこちが悲鳴を上げとる!」
「薬屋遊は遊びに来るような場所じゃないんだよ!まったく、何度言えば…。恨むんだったら、そんな時期にまでうちに来ちまった自分を恨むんだね。」
「でも、あれでしばらくはゆっくりできそうじゃないですか?」
「…だったら、何だってアンタはここに来たんだい?まさかアンタまで遊びに来た、何て言うんじゃないだろうねぇ?」
「えぇ!?いやいや、そういうつもりじゃ…!寒くなってきたので、雪かき必要かなって…。」
ジークから怒りの矛先がこちらに向きそうになった気配を察知して、慌てて用件を伝える。北の地域ほどではないが、この街にも雪は降る。雪が積もった日には、子供も大人も関係なく雪かきに駆り出される。ここよりも少し南の地域になる故郷でも、たびたび見られた光景だ。僕は体が大きかったから、他の家の手伝いに行ったりして同郷のウィルやレイよりも多少雪かきに慣れているという自負がある。ふわふわした新雪であればそこまで苦労せずに片づけることができるが、問題は少し水分を含んで重くなってしまった雪を寄せなければいけない時だ。昨日まさに、この時期にしては少し暖かく雨が降った。雪が融けるという意味ではありがたいが、融け残った雪を片付けなければならないとなれば話は別だ。
「雪かき?…アンタ、そんなことまで。」
「いやー偉いなぁ、アレク坊!ありがたいじゃないか、先輩!」
「また雪が積もる前に、少しでも片づけたほうがいいと思って…。雪が重そうだから、手伝おうかと。」
「…店先だけで十分だよ。」
「はい、キリのいいところまでやっちゃいますね。」
「アンタ話聞いてるかい?」
さっそく入り口近くに寄せてあったシャベルに手をかける。日が高いうちにできるだけ片付けてしまいたい。手袋をつけて、よしと気合を入れて外へと踏み出した。
「こ、こんにちは。」
「ん?あぁ、アンタかい。」
「おー?アレク坊じゃないか。どうしたんじゃ?」
寒さが身に染みる年の瀬。時折手伝いに顔を出しているアレックスは、今日も今日とて薬屋『魔女の一撃』に足を運んでいた。
「いくらアタシでも、この年の瀬にまともに営業はしないよ。手伝いなんてのも必要ないさね。」
「そんなこと言ってー。先輩はいつでも薬が必要な人が来てもいいように、待ち構えるつもりでしょうに!」
「黙ってなジーク!」
「あはは…。」
この店の店長であり一部から魔女とも恐れられるアメリアは、我が物顔で入り浸っているジークに目を吊り上げて叫んでいる。それをいいじゃないか!と軽く笑って流すまでがいつもの光景だ。アレックスから見てジークは年齢の割に元気な男だ。毎日薬屋に来なければならないような人間には思えないが、それでもここに足しげく通っているのは別の理由があるのだろうか。…二人が楽しそうにしているのでいいとは思うが。
「…客が来たら、対応しないわけにはいかないじゃないか。普段通りに開店しないつもりなのは本当さ。」
「この間まで、常備薬を買い込もうとするお客さんでいっぱいでしたもんね…。」
年の終わりから新しい年を迎えての数日間まで、通常営業はしないと知っているお客さんは前もって必要な薬を買い求めに来ていた。手伝いに来ているアレックスは、ここ数日の忙しさを思い出してため息が出そうになる。
「まったくじゃー!わしもただ遊びに来ただけじゃというのに駆り出されて、体のあちこちが悲鳴を上げとる!」
「薬屋遊は遊びに来るような場所じゃないんだよ!まったく、何度言えば…。恨むんだったら、そんな時期にまでうちに来ちまった自分を恨むんだね。」
「でも、あれでしばらくはゆっくりできそうじゃないですか?」
「…だったら、何だってアンタはここに来たんだい?まさかアンタまで遊びに来た、何て言うんじゃないだろうねぇ?」
「えぇ!?いやいや、そういうつもりじゃ…!寒くなってきたので、雪かき必要かなって…。」
ジークから怒りの矛先がこちらに向きそうになった気配を察知して、慌てて用件を伝える。北の地域ほどではないが、この街にも雪は降る。雪が積もった日には、子供も大人も関係なく雪かきに駆り出される。ここよりも少し南の地域になる故郷でも、たびたび見られた光景だ。僕は体が大きかったから、他の家の手伝いに行ったりして同郷のウィルやレイよりも多少雪かきに慣れているという自負がある。ふわふわした新雪であればそこまで苦労せずに片づけることができるが、問題は少し水分を含んで重くなってしまった雪を寄せなければいけない時だ。昨日まさに、この時期にしては少し暖かく雨が降った。雪が融けるという意味ではありがたいが、融け残った雪を片付けなければならないとなれば話は別だ。
「雪かき?…アンタ、そんなことまで。」
「いやー偉いなぁ、アレク坊!ありがたいじゃないか、先輩!」
「また雪が積もる前に、少しでも片づけたほうがいいと思って…。雪が重そうだから、手伝おうかと。」
「…店先だけで十分だよ。」
「はい、キリのいいところまでやっちゃいますね。」
「アンタ話聞いてるかい?」
さっそく入り口近くに寄せてあったシャベルに手をかける。日が高いうちにできるだけ片付けてしまいたい。手袋をつけて、よしと気合を入れて外へと踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる