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真夏の夜の儚い夢④
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「み、皆…!」
「あーぁ、だから言ったのによ。一気に食うなって。」
「レイ…あんた…!」
蜜氷の前に崩れ落ちる私たちを、心配そうに見ているアレックス。その隣ではレイが呆れたような愉快そうな、そんな表情で肩をすくめている。
「レイ…!これは一体、どういうことなんだよ…。」
「だから、こいつはゆっくり食わないとダメなんだって。オレも買った時にそう聞かされてよ。」
「そ、そんな危険なものを食べさせるなんて…!信じらんない、他の皆にも、知らせないと…!」
「おいおい、勘違いすんなって!こいつは別に危険な食い物ってわけじゃないぜ!」
「そ、そうだよ、皆、落ち着いて…!」
「…そういえば、アレックスさんは、平気そう、ですね…。頭痛く、ないんですか…?」
「えぇと…。」
蜜氷を食べ進めていた私たちを、急に襲った頭痛。大きな声を出すと響きそうで、犯人と思われるレイを静かに睨みながら責める。
心外だというようにレイも反論するが、確かに冷静になると一緒に食べていたはずのアレックスは平気そうにしている。…まさか共犯…!?
「こ、これは多分、レイの言うように、蜜氷を一気に食べてしまったことが原因だよ…。」
「アレックスはもともと、食べるのあまり早くないもんな。ま、体質とかもあるかもしんねーけど。」
「じゃあ…魔物の素材を使っていることとかは、関係ないってこと…?」
「あぁ。第一、そんなもんだったらもっと注意喚起のために噂になるか、とっくに取り締まられてるって。お前ら、この商品について何も知らなかっただろ?」
「…レイさんだって、この間教えるまで知らなかった…。」
「しーっ、しーっ!」
「た、多分、急激な血管の収縮とか拡張とか…そのあたりが関係しているんじゃないかな。と、特別な治療とかしなくても、治まってくるはずだよ…。」
「そうだと、いいけど…。」
半信半疑ではあったものの、アレックスの言う通り、数分で痛みは治まってきた。一緒に苦しんでいたウィルやエナちゃんも体調が戻ってきたのか、穏やかな表情に変わっている。
「…ひどい目にあった。」
「お前らがオレの忠告無視したからだろ。」
「その忠告が遅かったんじゃないか、食べ始めてから言うなんて。…情報源エナさんだったみたいだし。」
「それは別に違反とかじゃないだろー。誰に聞くなんて指定されてなかったんだからよ。」
「…まぁいいわ。この蜜氷の判定は…保留ね。」
「保留!?」
「他の二人の提案と比較しないと。…ウィルの言う通り、提案者の不手際が気になるし。」
「理不尽だろ!?」
「まぁまぁ。」
蜜氷自体はおいしかったけど、あの痛みがね…。思いっきり楽しみたいところに思わぬリスク、うーん悩ましいところ。
まぁこの後に出てくる提案の内容次第、ってところかしらね。良くも悪くも、このレイの蜜氷が判断基準となる。
次は誰が仕掛けてくるのやら…。
「さて、引き続いて提案してくれるのは?誰がいくの?」
「じゃ、じゃあ、僕が…。」
「アレックス、珍しいわね…。」
「う、うん…これはその…あまり遅くにやっちゃうと、困ると思って…。」
「「「「困る?」」」」
「困るって…誰が困るってんだ?」
「えっと…れ、レイ、が…。」
「…オレ?ってまさかお前…!」
「ぼ、僕が提案するのは…!」
怪談の、話なんだ
ひゅっ…と誰かが、いや全員だったかもしれない。
息をのむような音を最後に、静寂に包まれてしまった。
「あーぁ、だから言ったのによ。一気に食うなって。」
「レイ…あんた…!」
蜜氷の前に崩れ落ちる私たちを、心配そうに見ているアレックス。その隣ではレイが呆れたような愉快そうな、そんな表情で肩をすくめている。
「レイ…!これは一体、どういうことなんだよ…。」
「だから、こいつはゆっくり食わないとダメなんだって。オレも買った時にそう聞かされてよ。」
「そ、そんな危険なものを食べさせるなんて…!信じらんない、他の皆にも、知らせないと…!」
「おいおい、勘違いすんなって!こいつは別に危険な食い物ってわけじゃないぜ!」
「そ、そうだよ、皆、落ち着いて…!」
「…そういえば、アレックスさんは、平気そう、ですね…。頭痛く、ないんですか…?」
「えぇと…。」
蜜氷を食べ進めていた私たちを、急に襲った頭痛。大きな声を出すと響きそうで、犯人と思われるレイを静かに睨みながら責める。
心外だというようにレイも反論するが、確かに冷静になると一緒に食べていたはずのアレックスは平気そうにしている。…まさか共犯…!?
「こ、これは多分、レイの言うように、蜜氷を一気に食べてしまったことが原因だよ…。」
「アレックスはもともと、食べるのあまり早くないもんな。ま、体質とかもあるかもしんねーけど。」
「じゃあ…魔物の素材を使っていることとかは、関係ないってこと…?」
「あぁ。第一、そんなもんだったらもっと注意喚起のために噂になるか、とっくに取り締まられてるって。お前ら、この商品について何も知らなかっただろ?」
「…レイさんだって、この間教えるまで知らなかった…。」
「しーっ、しーっ!」
「た、多分、急激な血管の収縮とか拡張とか…そのあたりが関係しているんじゃないかな。と、特別な治療とかしなくても、治まってくるはずだよ…。」
「そうだと、いいけど…。」
半信半疑ではあったものの、アレックスの言う通り、数分で痛みは治まってきた。一緒に苦しんでいたウィルやエナちゃんも体調が戻ってきたのか、穏やかな表情に変わっている。
「…ひどい目にあった。」
「お前らがオレの忠告無視したからだろ。」
「その忠告が遅かったんじゃないか、食べ始めてから言うなんて。…情報源エナさんだったみたいだし。」
「それは別に違反とかじゃないだろー。誰に聞くなんて指定されてなかったんだからよ。」
「…まぁいいわ。この蜜氷の判定は…保留ね。」
「保留!?」
「他の二人の提案と比較しないと。…ウィルの言う通り、提案者の不手際が気になるし。」
「理不尽だろ!?」
「まぁまぁ。」
蜜氷自体はおいしかったけど、あの痛みがね…。思いっきり楽しみたいところに思わぬリスク、うーん悩ましいところ。
まぁこの後に出てくる提案の内容次第、ってところかしらね。良くも悪くも、このレイの蜜氷が判断基準となる。
次は誰が仕掛けてくるのやら…。
「さて、引き続いて提案してくれるのは?誰がいくの?」
「じゃ、じゃあ、僕が…。」
「アレックス、珍しいわね…。」
「う、うん…これはその…あまり遅くにやっちゃうと、困ると思って…。」
「「「「困る?」」」」
「困るって…誰が困るってんだ?」
「えっと…れ、レイ、が…。」
「…オレ?ってまさかお前…!」
「ぼ、僕が提案するのは…!」
怪談の、話なんだ
ひゅっ…と誰かが、いや全員だったかもしれない。
息をのむような音を最後に、静寂に包まれてしまった。
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