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真夏の夜の儚い夢③
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今日も今日とて暑すぎる。
終わりの見えない熱気に呻きながらも、約束の一週間後を迎えることができた。この暑さをどう乗り越えるのか、純粋に楽しみではあるが…果たして。
日が沈み始めた頃、挑戦者たちが各々の作戦を携えて顔をそろえていた。
「…さて。みんな揃ったし、始めていこうかしらね。…誰からいく?」
「オレからいかせてもらおうか。」
「ほーう、自信満々みたいね。レイ、勝算でもあるの?」
「負けることを考えながら勝負するやつがいるかってんだよ。」
初戦。ここは誰がどう出るかかなり重要になると思われるが…。
迷うことなく手を挙げたのは、レイだった。
なかなかの自信ね。この企画の提案者だし、何かしら考えがあってのこととは思っていたけど。
それじゃあ早速聞かせてもらおうじゃないの。
「…オレの提案する暑さをしのぐ方法は、これだ!」
「これは…!」
「…は、箱…?」
レイが取り出したのは、何の変哲もないように見えるただの箱。
これが一体何だというのだろうか。
私たち三人、そして特別審査員として招いたエナちゃんは首をかしげている。
「まぁ慌てるな。ちゃんと説明してやるからよ。この箱の中身が大事なんだよ。エナ、持ってみろよ。」
「え?…あっ、えぇ?冷たい!」
「「「えぇ?」」」
「じゃあこれの中身って…あぁ!これ、話に聞く…!」
箱を開けるように指名されたエナちゃんは不思議そうにしていたが、箱に触った瞬間表情が変わった。
箱が冷たいというのだ。この暑さの中、一体どうして…。
エナちゃんは何か思い当たるものがあるようで、期待を感じさせるような眼差しを向けながらも恐る恐る箱を開けてみる。その中から出てきたものは…!
「見ろ!これが最近噂になり始めているという蜜氷だ!」
「み、蜜氷…!」
「もう名前だけで冷たくておいしそう…!」
「これこの前レイさんに教えた商品…!」
「「「え?」」」
「しーっ!エナ黙っとけって!」
箱から現れたのは、キラキラと輝いている氷の山、そしてそこにたっぷりとかけられた甘い香りのする真っ赤なシロップ。その神々しいまでの姿に目が離せない。
エナちゃんの発言は、ちょーっと気になるけれど。
「うぅん!まぁなんだ。こいつはこの暑さで売れ始めた新商品で、冷核っていう、魔物の臓器?だかを使った商品で…。」
「え、魔物?臓器?…完全にアウトな単語が出てるんだけど…。」
「ぞ、臓器と言っても、魔物のエネルギーの結晶のようなものですので…。市場にも一般に出回るものですよ。」
「へー…って何エナちゃんに説明させてんのよ。」
「オレに言われてもな…。まぁそんなわけで、この冷たくて溶けにくい氷を作るのに一役買っているわけなんだが、この氷に甘い蜜をかけて楽しむのが最近流行っているんだと。」
「そうなのね。それじゃあ早速…ってレイ。これ一つしかないんだけど。」
「あぁ。」
「あぁって…、皆で食べるんじゃないの?一人だけ?」
「予算の都合上一つしか用意できなかったんだよ。全員で少しずつ食べればいいだろ。」
「まぁ…そういうことなら。」
魔物の単語に少しぎょっとしてしまったが、エナちゃんのフォローもあってまぁ納得できた。本当に運のいいやつ。
問題はその味。実食といこうにも、目の前に用意されたのは一つだけ。この暑さの中情報収集してくれたみんなを差し置いて一人だけ食べるなんてこと…まぁ、ちょっとは気が引けるのでみんなで分け合うことになった。
「全員器は持ったわね?じゃあ、いただきます。」
サリサリ…シャク…シャク…
こ、これはおいしい…!暑さで火照った体が、中から冷やされていくこの快感…!かけられている真っ赤なシロップはソウゲンイチゴね。ただ甘いだけじゃなくくどさのない香りも素晴らしい!んーたまらない!
皆で分けたことで少なくなってしまったけど、こんなにおいしいんだったらいくらでも食べられそう!
「…あぁそうだ、この商品を食べるにあたって、一気に食べないようにって注意がされてたんだ。だからお前ら、あまりかきこむなよ。」
「はぁ?何でよ、別にそんなの個人の自由…ゔぅっ…!?」
夢中でかき込んでいると、何かを思い出したようにレイが一気に食べにないようにと言い出した。
こんな暑い中、氷をゆっくり食べてたら溶けちゃうじゃない!せっかく涼もうと食べているんだから!と忠告を無視していると、鋭い痛みがはしる。
何これ…!そう思うと一緒に食べていたウィルやエナちゃんまでもが顔を顰めて呻いていた。
いったい何が起こっているの…!?
終わりの見えない熱気に呻きながらも、約束の一週間後を迎えることができた。この暑さをどう乗り越えるのか、純粋に楽しみではあるが…果たして。
日が沈み始めた頃、挑戦者たちが各々の作戦を携えて顔をそろえていた。
「…さて。みんな揃ったし、始めていこうかしらね。…誰からいく?」
「オレからいかせてもらおうか。」
「ほーう、自信満々みたいね。レイ、勝算でもあるの?」
「負けることを考えながら勝負するやつがいるかってんだよ。」
初戦。ここは誰がどう出るかかなり重要になると思われるが…。
迷うことなく手を挙げたのは、レイだった。
なかなかの自信ね。この企画の提案者だし、何かしら考えがあってのこととは思っていたけど。
それじゃあ早速聞かせてもらおうじゃないの。
「…オレの提案する暑さをしのぐ方法は、これだ!」
「これは…!」
「…は、箱…?」
レイが取り出したのは、何の変哲もないように見えるただの箱。
これが一体何だというのだろうか。
私たち三人、そして特別審査員として招いたエナちゃんは首をかしげている。
「まぁ慌てるな。ちゃんと説明してやるからよ。この箱の中身が大事なんだよ。エナ、持ってみろよ。」
「え?…あっ、えぇ?冷たい!」
「「「えぇ?」」」
「じゃあこれの中身って…あぁ!これ、話に聞く…!」
箱を開けるように指名されたエナちゃんは不思議そうにしていたが、箱に触った瞬間表情が変わった。
箱が冷たいというのだ。この暑さの中、一体どうして…。
エナちゃんは何か思い当たるものがあるようで、期待を感じさせるような眼差しを向けながらも恐る恐る箱を開けてみる。その中から出てきたものは…!
「見ろ!これが最近噂になり始めているという蜜氷だ!」
「み、蜜氷…!」
「もう名前だけで冷たくておいしそう…!」
「これこの前レイさんに教えた商品…!」
「「「え?」」」
「しーっ!エナ黙っとけって!」
箱から現れたのは、キラキラと輝いている氷の山、そしてそこにたっぷりとかけられた甘い香りのする真っ赤なシロップ。その神々しいまでの姿に目が離せない。
エナちゃんの発言は、ちょーっと気になるけれど。
「うぅん!まぁなんだ。こいつはこの暑さで売れ始めた新商品で、冷核っていう、魔物の臓器?だかを使った商品で…。」
「え、魔物?臓器?…完全にアウトな単語が出てるんだけど…。」
「ぞ、臓器と言っても、魔物のエネルギーの結晶のようなものですので…。市場にも一般に出回るものですよ。」
「へー…って何エナちゃんに説明させてんのよ。」
「オレに言われてもな…。まぁそんなわけで、この冷たくて溶けにくい氷を作るのに一役買っているわけなんだが、この氷に甘い蜜をかけて楽しむのが最近流行っているんだと。」
「そうなのね。それじゃあ早速…ってレイ。これ一つしかないんだけど。」
「あぁ。」
「あぁって…、皆で食べるんじゃないの?一人だけ?」
「予算の都合上一つしか用意できなかったんだよ。全員で少しずつ食べればいいだろ。」
「まぁ…そういうことなら。」
魔物の単語に少しぎょっとしてしまったが、エナちゃんのフォローもあってまぁ納得できた。本当に運のいいやつ。
問題はその味。実食といこうにも、目の前に用意されたのは一つだけ。この暑さの中情報収集してくれたみんなを差し置いて一人だけ食べるなんてこと…まぁ、ちょっとは気が引けるのでみんなで分け合うことになった。
「全員器は持ったわね?じゃあ、いただきます。」
サリサリ…シャク…シャク…
こ、これはおいしい…!暑さで火照った体が、中から冷やされていくこの快感…!かけられている真っ赤なシロップはソウゲンイチゴね。ただ甘いだけじゃなくくどさのない香りも素晴らしい!んーたまらない!
皆で分けたことで少なくなってしまったけど、こんなにおいしいんだったらいくらでも食べられそう!
「…あぁそうだ、この商品を食べるにあたって、一気に食べないようにって注意がされてたんだ。だからお前ら、あまりかきこむなよ。」
「はぁ?何でよ、別にそんなの個人の自由…ゔぅっ…!?」
夢中でかき込んでいると、何かを思い出したようにレイが一気に食べにないようにと言い出した。
こんな暑い中、氷をゆっくり食べてたら溶けちゃうじゃない!せっかく涼もうと食べているんだから!と忠告を無視していると、鋭い痛みがはしる。
何これ…!そう思うと一緒に食べていたウィルやエナちゃんまでもが顔を顰めて呻いていた。
いったい何が起こっているの…!?
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