某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

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真夏の夜の儚い夢②

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「じゃーん!」
「どうです、この柄!華やかですよねー!」
「…おー…。」
「そ、そう、だね…。」
「いいと思う。」
「反応悪いわねー。」

見せてもらった生地の中から、気になったものを試着させてもらう。エナちゃんに手伝ってもらいながら着てみたが、確かに見た目より通気性がいいのか涼しく感じられる。肌触りもいいし。きれいな色にテンションも上がって暑さなんか気にならないかも!と思ったが、それに理解を示してくれるのはエナちゃんだけで、男連中は無茶言うな、とばかりにお茶をすするばかりだ。まったく。

「純粋に機能がいいっていうのもありますけど、こういった華やかなものや新しいものに触れるのはとても楽しいので、暑さを吹き飛ばしてくれます!まずは楽しむってことがいいのかもしれませんね。」
「楽しむ、なるほどね…。」

そう言われれば、ただ暑い暑いってばかりでマイナス方向に考えてばっかりだったかも。これは発想の転換がカギになるのかも…。
この生地のように、他の地域では暑いときにどうやって過ごしているのかを知ることができれば、私たちも暑さを乗り切ることができるんじゃ…!?

「いいこと考えた!」
「嫌な予感しかしない。」
「まだ何も言ってなしでしょ。」
「言わなくても分かる、これはまずいことが起きる前兆だ。」
「人を不吉なもんか何かみたいに…。」

まったくもって失礼な反応だ。エナちゃんの前でなかったらこの右手が黙っちゃいなかっただろうに、運のいいやつめ。

「この暑さ、もう少し続くでしょうし何とかしたいけど…。私たちだけじゃどうにもできないと思うのよね。」
「まぁ…それはそう思う。」
「だったら、色々な人たちに聞いて回って意見を求めたらいいんじゃない?もっと熱い地域から来ている人なんかに聞けたら、いい涼み方知っているかも!今って、いろんな地域の物を取り寄せたりしているから、商品を持ち込んで来る地元の人とか、いるはずでしょ?それでその方法をみんなに広めたら、幸せになれるでしょ。」
「あ、暑さで参ってるの、僕たちだけじゃないもんね…!」
「そうよ!世のため人のため、私たちが聞き込みをしてくるの!」
「そして?」
「あわよくば、新たなビジネスの開発にこぎつけて…って何言わせてんの!」
「いや勝手に何言ってんだ、お前。」

そりゃ、何かいい方法があって皆が過ごしやすくなるんだったらいいでしょうが。
そのついでに商売繁盛したらよりいいでしょうが!別に何も悪いことしてないんだし!

「まぁ、そうね…大体一週間後までに情報収集して、皆にお披露目って感じでどう?」
「いいんじゃないかな。」
「…なぁ。どうせだったら、皆に披露して一番評判がよかったやつに何か褒美を出す、ってのはどうだ?やる気出るだろ?」
「ほーう…なかなか面白そうじゃない。じゃあ、私が公平に審査してあげるわ。」
「あぁ?何だよ、参加しないのかよ。」
「だって判断する人間は必要でしょ。それに、私はエナちゃんと一緒にこういった華やかな衣装を身に着けて楽しむ!がいい方だと思うし。ね!」
「はい!」
「へーへー…。んじゃ、オレら三人で競えばいいってことだな。」
「何を褒美にする?」
「ぼ、僕、なにも思いつかないんだけど…。」
「…ユイに何でも言うこときかせる権利、何てどうだ?」
「はぁ!?」
「これだったら真剣に審査するだろ。ちなみに俺が一番になったら、飯でも奢ってもらおうかな。俺たち三人分。」
「三人分!?何でよ!」
「いつもオレたちを振り回してるんだ。それくらいいいだろうが。…あ、だったらエナの分も含めて四人分か。」
「え、いいんです?」
「え、エナちゃんまで…!んー…いいでしょう!もし一番になれたら、だからね!」

なにやらとんでもないことになってしまった。確かに、普段から皆に協力もらっているのはそうなんだけども…。
ニコニコとレイのやつに笑いかけているエナちゃんを見て、そっとため息が出てしまう。
頼む、常識的な金額で収まってくれ…!
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