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さよなら、??③
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「面倒なことしてごめん。でも、もうこれ持っていられないから。」
「…はぁ。」
へらっと笑いかけてみるが、ペルは黙ってため息をつくだけだ。
改めて花瓶に飾られた花束を見る。
シンプルな花瓶に活けられた花束。カラフルではあるが、花自体の種類は少ない。こうして明確に置いていくという決意を示そうと、詳しくはないながらも調べた花。
「まったく柄にもないことを…と言いたいところだけど、まぁいいわ。この花が枯れて、役目を終えるその日まで、アタシがそばにいてあげる。」
「ありがとう。」
「これは餞別よ。」
ペルはどこから取り出したのか、尻尾を器用に使って何かを投げてよこす。反射的に受け取り、投げられたものを改めて確認すると、それは一輪のひまわりだった。
「花に詳しくないアンタでも、意味は分かるでしょ。…まぁ、アタシが準備したんだから、知らないはずないんだけど。」
「うん。」
「言わんとしていることも、分かるわね?」
「…うん。」
ひまわり。花言葉は『あなただけを見ています』。
「アタシのことを知っているのは、他でもないアンタだけなんだから。…社会を生きていくって大変だろうけど、アタシのことも…本当の自分のことも大事にしてもらいたいわ。」
「肝に銘じます。」
「自分を蔑ろにして他人に尽くしていても、いつか『なんで私が』とか『自分のことも犠牲にしてまで…』って気持ちになる。そうなれば、もう他人に優しくなんてできやしないんだから。」
「はい。それはもう、身をもって。」
「頼むわよ、ホント。」
頷きながら、ひまわりを大事に抱える。ここから覚めたら、このひまわりも消えてしまう。決して忘れることのないようにしなければ。念入りに確認したペルも、納得したように頷いて見せた。
気がつくと、私が想像していたよりも随分とオフィスが狭い。安田が飛び出していった窓も、大久保さんが入り浸っていた給湯室も、高橋夫妻が立っていた床も、もうただの白い空間になってしまっている。
だが、もう一度想像して出現させようという気にはならない。
「…それじゃ、そろそろさよならかしらね、お菓子ちゃん。寂しくなったら、また来ていいのよ。」
「うん。きっとまた来るから。」
「…急がなくていいのよ。アタシもちょっと、疲れちゃったから。」
残されたオフィスの出入り口となっているドアに手をかける。
ありがとうペル。いつか来る、また逢う日まで。
ドアをくぐり、最後に振り返った瞬間に見えたのは、消えていくオフィスの景色の中で愛おしそうに花に寄り添っているペルの姿。
あの花束は、アネモネと友禅菊。
アネモネは『恋の苦しみ』『儚い恋』。
友禅菊は『さようなら』『恋の思い出』。
さよなら、恋心。
「…はぁ。」
へらっと笑いかけてみるが、ペルは黙ってため息をつくだけだ。
改めて花瓶に飾られた花束を見る。
シンプルな花瓶に活けられた花束。カラフルではあるが、花自体の種類は少ない。こうして明確に置いていくという決意を示そうと、詳しくはないながらも調べた花。
「まったく柄にもないことを…と言いたいところだけど、まぁいいわ。この花が枯れて、役目を終えるその日まで、アタシがそばにいてあげる。」
「ありがとう。」
「これは餞別よ。」
ペルはどこから取り出したのか、尻尾を器用に使って何かを投げてよこす。反射的に受け取り、投げられたものを改めて確認すると、それは一輪のひまわりだった。
「花に詳しくないアンタでも、意味は分かるでしょ。…まぁ、アタシが準備したんだから、知らないはずないんだけど。」
「うん。」
「言わんとしていることも、分かるわね?」
「…うん。」
ひまわり。花言葉は『あなただけを見ています』。
「アタシのことを知っているのは、他でもないアンタだけなんだから。…社会を生きていくって大変だろうけど、アタシのことも…本当の自分のことも大事にしてもらいたいわ。」
「肝に銘じます。」
「自分を蔑ろにして他人に尽くしていても、いつか『なんで私が』とか『自分のことも犠牲にしてまで…』って気持ちになる。そうなれば、もう他人に優しくなんてできやしないんだから。」
「はい。それはもう、身をもって。」
「頼むわよ、ホント。」
頷きながら、ひまわりを大事に抱える。ここから覚めたら、このひまわりも消えてしまう。決して忘れることのないようにしなければ。念入りに確認したペルも、納得したように頷いて見せた。
気がつくと、私が想像していたよりも随分とオフィスが狭い。安田が飛び出していった窓も、大久保さんが入り浸っていた給湯室も、高橋夫妻が立っていた床も、もうただの白い空間になってしまっている。
だが、もう一度想像して出現させようという気にはならない。
「…それじゃ、そろそろさよならかしらね、お菓子ちゃん。寂しくなったら、また来ていいのよ。」
「うん。きっとまた来るから。」
「…急がなくていいのよ。アタシもちょっと、疲れちゃったから。」
残されたオフィスの出入り口となっているドアに手をかける。
ありがとうペル。いつか来る、また逢う日まで。
ドアをくぐり、最後に振り返った瞬間に見えたのは、消えていくオフィスの景色の中で愛おしそうに花に寄り添っているペルの姿。
あの花束は、アネモネと友禅菊。
アネモネは『恋の苦しみ』『儚い恋』。
友禅菊は『さようなら』『恋の思い出』。
さよなら、恋心。
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