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身の危険③

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「…いやぁ…改めて見てみると、本当に広ーい。」
「そうでしょー?部屋がたくさんあるから専用部屋もあるんだー!案内してあげるよ!」
「ナーイーンー?」
「…また今度ねー。」
「ふふ、はいはい。」

結局私たちは、目的の部屋までの廊下を文字通り切り開きながら進んでいる。郡司さんは箱物をひたすら積み重ねながら動線を確保しているし、ナイン君はひたすら小物を段ボールに詰めている。私はというと、大きなごみ袋にぶちまかれたぬいぐるみを押し込んでいる。ぎゅむぎゅむと歪んでいくぬいぐるみたちはなかなかのインパクトだ。可愛らしいであろうぬいぐるみたちが、みっちみちに袋に入れられた状態でこっちを見ている。…目が合わせられない。どうか許してほしい。
それにしても、私が目的の部屋の位置を分かっていないことを加味しても、この家は非常に広い。時々ドアが開けっ放しになっていて、中が見える部屋にもたくさんの物であふれかえっているのが見える。…覗くような態度はいけないとも思うのだが、思わず凝視してしまうような大量さだ。これは郡司さんの言い分の方が正しかったのかもしれない。

「…さて、こんなもんか。」
「やぁっと終わったー!」
「言っとくが、普段から整理しておけばこんなことにはならないんだからな。大体、前から片づけるように言ってあっただろ。それにな…。」
「はいはいはい!分かったって!これからはちゃんとするから、今回来たのは別件でしょ?」
「…そうだな。」
「んじゃ、新島さん。ちょっと寄り道しちゃったけど、改めてようこそ我が家へ。そして我がラボへ!」
「お、お邪魔しまーす…うわぁー!」

わちゃわちゃと言い合って二人の光景もすっかり見慣れたなぁ、なんて思っているとナイン君が私に向かってある部屋のドアを開けて促す。それに小さく頭を下げながら部屋に入ると、そこには見たこともないような大きな機械が所狭しと鎮座していた。私が想像する、いわゆる「研究所」といった一室の様子につい足を止めてしまう。

「えへへー、最新機器がそろってるんだ!びっくりした?」
「そりゃここまでゴミ屋敷と変わりなかった場所を通ってきたんだから、驚きもするだろ。」
「ゴミじゃないよ!人が大事にしているものをそんな風に言うなんて、どうかと思うよ!?」
「…悪かったよ。」
「ならばよし!」
「大事にしているものを雑多に山積みにしたり床に直置きしたりするようなメンタルを持ち合わせていないもんだから。」
「…はぃ…。」
「これ…全部ナイン君の?」
「ん?うーん、そう、なのかな…?」
「え?」
「借りているわけではないから、そうなんじゃないか?」
「そっか。」
「えぇ?」
「あぁ、大丈夫大丈夫、こっちの話だから。それじゃあさっそく検査といこうか!」
「はぁ…。」

どこか引っかかるやり取りをする二人を見るも、特に細かい説明はなく部屋の中へと腕を引かれる。必然的に機械たちに近づくことになるが、改めてその大きさを確認して少し腰が引ける。この機械って、いったいどうやって使って何を調べるものなのだろうか。少なくとも職場の健康診断では目にしたことがない。できることなら検査前の説明は入念に行ってほしい。

「一通り調べさせてほしいから、まずは服脱いで。」
「は?」

何だこの急展開は。
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