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身の危険⑥
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「いやーうっかりうっかり!これは分析に時間もかかるし、忘れたら面倒だったよ。アルコール消毒でかぶれたこととかない?大丈夫?」
「…む。」
「む?」
「無理ー!!」
「あっ逃げた!?健人!」
「了解!」
手際よく採血の準備を始めたナインを振り切るように、全力で部屋の出口へとダッシュ。案の定というべきか、そばに立っていた郡司さんが追ってくる。私の伸ばした手がドアの取っ手に届くことはなかった…。
「確保!」
「でかした!」
「うぅー-!!」
「おいおいおい…。アンタ会社員だったんだろ?職場で健康診断とかなかったのか?」
「あったわよ!血液検査だって何回もやった!でも、それとこれとは別でしょうよ!苦手なものは苦手なの!!」
「お、おう…。」
「健康診断の時は前もって日程とか検査内容とか分かるから、前日から入念に精神を整えて臨んでいるっていうのに…!直前に言われて平静を保ってなんかいられるかぁ!責任者出せぇ!!」
「…なんか、ごめんね?」
そうよ!もっと真剣に謝って!大人になって注射が怖いなんて、って言う人がいるけれど、私からしてみれば異物を体に突き刺すなんて正気の沙汰じゃないのよ!そんでもってそれで血液を抜きとんのよ!?それを何も思わず受け入れる方がどうかしてんのよ!とどのつまり、怖いものは怖いのよほっといて!!
「だが…やらないわけにはいかないんだろ?」
「うーん…。」
「…。」
「こんな細い針でも、折れたりしたら危険だからね…。じっとしておいてもらわないと。そうだ、健人、ユキさんを支えてあげてよ。」
「は!?支えるって…。」
「腕は僕の方に出してもらうから、後ろからこう…がばっと。」
「…別の意味で危なくねぇか?」
「血液採取の間だけだよ。ね、ユキさんいいでしょ?一瞬だよ、一瞬。」
「…分かった、一瞬だからね!?本当に一瞬で終わらせてね!?」
「はいはい。」
「…。」
必要な検査と言われれば断るわけにもいかない。しかしそうは言っても注射は怖い。そこで提案されたのは、郡司さんによる拘束だ。…字面はかなりまずいが、単に私が咄嗟に動かないように体を支えるというだけの話だ。自分でも恥ずかしいし申し訳ないとは思うが、体が逃げを打つのは分かりきっているので受け入れるしかない。もうどうにでもなれ。とにかく早く終わってくれ。
「はいユキさん、腕出して。…ちょっと、そんなに離れてたら届かないでしょ!」
「うっ…!」
「まだ何もしてないでしょー?…うんうん、血管見えやすくていいね!アルコールで消毒するから、冷たくなるよー。」
「うー!」
「先が思いやられるなぁ…。健人、何してんの。ちゃんとユキさん抑えてなきゃ。」
「…本当にやるのか?」
「このままだったら採血できないよ、ケガしちゃいそうだし!」
「はぁ…。…こうか?」
腕をまくって差し出す時点ですでに腰が引けてしまっている。さすがにナインも苦笑いだ。自分でも恥ずかしいとは思うのだが、どうしようもない。そう思っていると、背中が温かくなる。そして両肩に何かが乗せられる。思わず視線を向けると、そこにあったのは郡司さんの手。…ということは、背中に触れているのは、郡司さんのお腹?その考えに到達したとたん、体が固まってしまった。
「えーそんなんで大丈夫?ユキさん動かない?」
「さすがにもう逃げ出したりとかはしないだろ。…だよな?」
「…はぃ。」
「んじゃ、気が変わらないうちに済ませちゃいますか。はい、痛いですよー。」
「うぅぅいいぃぃぃ~~!」
「どっから出てんだその声。見なきゃいいだろ、そんなに苦手なんだったら。」
「見てないといつ刺さるか分からなくて余計に怖いでしょ!」
「そーですか…。」
針が刺さり始めると、自分の意思とは関係なく体が仰け反って、郡司さんに体を押し付けるような体勢になってしまう。なかなか力が入ってしまっていると思うのだが、郡司さんの姿勢がブレないのはさすがだと思う。郡司さんの手が添えられている両肩が温かい。
「…はい、終了ー!ユキさん結構早いタイプだね、もう十分な量採血できたよ。」
「…終わり?本当に終わり!?ぃやったぁー!!」
「うわぁすごい喜びよう。」
「よかったな。」
ほどなくして、私の腕からゆっくりと注射針が抜かれ、ぺたりと小さな絆創膏が張り付けられた。恐怖の時間が終わった解放感で、両腕を天高くつき上げる。いやここ屋内なんだけども。
「…む。」
「む?」
「無理ー!!」
「あっ逃げた!?健人!」
「了解!」
手際よく採血の準備を始めたナインを振り切るように、全力で部屋の出口へとダッシュ。案の定というべきか、そばに立っていた郡司さんが追ってくる。私の伸ばした手がドアの取っ手に届くことはなかった…。
「確保!」
「でかした!」
「うぅー-!!」
「おいおいおい…。アンタ会社員だったんだろ?職場で健康診断とかなかったのか?」
「あったわよ!血液検査だって何回もやった!でも、それとこれとは別でしょうよ!苦手なものは苦手なの!!」
「お、おう…。」
「健康診断の時は前もって日程とか検査内容とか分かるから、前日から入念に精神を整えて臨んでいるっていうのに…!直前に言われて平静を保ってなんかいられるかぁ!責任者出せぇ!!」
「…なんか、ごめんね?」
そうよ!もっと真剣に謝って!大人になって注射が怖いなんて、って言う人がいるけれど、私からしてみれば異物を体に突き刺すなんて正気の沙汰じゃないのよ!そんでもってそれで血液を抜きとんのよ!?それを何も思わず受け入れる方がどうかしてんのよ!とどのつまり、怖いものは怖いのよほっといて!!
「だが…やらないわけにはいかないんだろ?」
「うーん…。」
「…。」
「こんな細い針でも、折れたりしたら危険だからね…。じっとしておいてもらわないと。そうだ、健人、ユキさんを支えてあげてよ。」
「は!?支えるって…。」
「腕は僕の方に出してもらうから、後ろからこう…がばっと。」
「…別の意味で危なくねぇか?」
「血液採取の間だけだよ。ね、ユキさんいいでしょ?一瞬だよ、一瞬。」
「…分かった、一瞬だからね!?本当に一瞬で終わらせてね!?」
「はいはい。」
「…。」
必要な検査と言われれば断るわけにもいかない。しかしそうは言っても注射は怖い。そこで提案されたのは、郡司さんによる拘束だ。…字面はかなりまずいが、単に私が咄嗟に動かないように体を支えるというだけの話だ。自分でも恥ずかしいし申し訳ないとは思うが、体が逃げを打つのは分かりきっているので受け入れるしかない。もうどうにでもなれ。とにかく早く終わってくれ。
「はいユキさん、腕出して。…ちょっと、そんなに離れてたら届かないでしょ!」
「うっ…!」
「まだ何もしてないでしょー?…うんうん、血管見えやすくていいね!アルコールで消毒するから、冷たくなるよー。」
「うー!」
「先が思いやられるなぁ…。健人、何してんの。ちゃんとユキさん抑えてなきゃ。」
「…本当にやるのか?」
「このままだったら採血できないよ、ケガしちゃいそうだし!」
「はぁ…。…こうか?」
腕をまくって差し出す時点ですでに腰が引けてしまっている。さすがにナインも苦笑いだ。自分でも恥ずかしいとは思うのだが、どうしようもない。そう思っていると、背中が温かくなる。そして両肩に何かが乗せられる。思わず視線を向けると、そこにあったのは郡司さんの手。…ということは、背中に触れているのは、郡司さんのお腹?その考えに到達したとたん、体が固まってしまった。
「えーそんなんで大丈夫?ユキさん動かない?」
「さすがにもう逃げ出したりとかはしないだろ。…だよな?」
「…はぃ。」
「んじゃ、気が変わらないうちに済ませちゃいますか。はい、痛いですよー。」
「うぅぅいいぃぃぃ~~!」
「どっから出てんだその声。見なきゃいいだろ、そんなに苦手なんだったら。」
「見てないといつ刺さるか分からなくて余計に怖いでしょ!」
「そーですか…。」
針が刺さり始めると、自分の意思とは関係なく体が仰け反って、郡司さんに体を押し付けるような体勢になってしまう。なかなか力が入ってしまっていると思うのだが、郡司さんの姿勢がブレないのはさすがだと思う。郡司さんの手が添えられている両肩が温かい。
「…はい、終了ー!ユキさん結構早いタイプだね、もう十分な量採血できたよ。」
「…終わり?本当に終わり!?ぃやったぁー!!」
「うわぁすごい喜びよう。」
「よかったな。」
ほどなくして、私の腕からゆっくりと注射針が抜かれ、ぺたりと小さな絆創膏が張り付けられた。恐怖の時間が終わった解放感で、両腕を天高くつき上げる。いやここ屋内なんだけども。
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