御伽噺のその先へ

雪華

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第一章 あるいは運命だったのかもしれない

第6話  指折り数えてひたすら待とう

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 世の中に溢れるラブソングや少女漫画の主人公のように、一晩泣き明かしたり、食事も喉を通らなかったりするのが失恋かと思っていた。
 しかし実際は案外あっさりしたものだなと、翌朝いつも通りに目を覚ましたタフな自分に苦笑いした。
 よく眠れたし、お腹もすいている。

 さすがに一夜で傷は癒えないが、この感情は悲しみと言うより寂しさの方が強い気がする。それから、「なんで私じゃダメだったの」という、怒り。そのダメだった理由は良くわかっているのだが。

 自分の中の感情を探れば探るほど、あれは恋というよりも、独りよがりな片想いの延長線上の出来事だったのではないかと疑問がわいてくる。恋に恋していたかっただけで、目の前の黒木と言う実在の人物の心情はお構いなしだった。
 これでは黒木が離れていくのも当然なのだが、やっぱり腹が立つ。

 いつもの登校風景の中に自分も紛れて、紗良は大きく溜息をついた。学校まで続く一本道を歩きながら、もう余計な事は考えたくないと視線を足元に落とす。交互に出される自分のつま先を見つめ、右、左、右、左と、脳内でつぶやいた。

「紗良っ! おはよう」

 元気のよい挨拶と共に七海に背中を強く叩かれ、紗良は前につんのめりそうになる。

「お、おはよ、七海。びっくりしたぁ」
「下ばっかり見て歩いてるからだよ。ん、でも思ったより目が腫れてないね。良かった。赤い目を隠すために、伊達メガネ持ってきたけど必要なさそう」

 そう言って、七海はレンズの入っていない黒ぶち眼鏡を自分でかけておどけて見せる。

「あはは。わざわざ持ってきてくれたの? ありがとう」

 思わず吹き出した紗良は、あえて明るく振舞う七海の気持ちが嬉しくて、自分もそれに応えたいと背筋を伸ばした。

「百鬼夜行のシークレットライブ楽しみだね。めっちゃ可愛いカッコして行こ?」

 下駄箱の前で上履きを取り出しながら声を弾ませる七海に、紗良も笑顔でうなずく。

「ホントだね。新しい服買いに行こうかな。ユズに会えるんだし」
「いいね、今日の放課後行こうよ!」
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