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第一章 あるいは運命だったのかもしれない
指折り数えてひたすら待とう②
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ライブへの期待が膨らみはしゃいでいると、視線を感じて紗良は思わず振り返った。そこには黒いローファーを下駄箱にしまおうとする御堂が居て、なぜか驚いた表情のままこちらを見ている。
昨日の今日なのに、少々元気が良すぎると思われただろうかと首をすくめながら、紗良は御堂に声をかけた。
「おはよう、御堂くん。昨日は、その……ありがとう」
「え? ああ、いや。元気そうで、何より」
なぜか少しぎこちなく御堂は答えると、くるりと向きを変え足早に階段へ向かう。
「ちょっと紗良! 王子と話せるなんてスゴイね」
「思ったより良い人だったよ」
「昨日はありがとうって、何かあったの? 黒木関係?」
御堂と話したきっかけを喋れば、必然的に黒木の新しい彼女の事も話さなければいけない。紗良は七海に心の中でゴメンと言いつつ「消しゴム借りたんだ」と笑ってごまかした。
「えーっ、元気そうで何よりとか言ってたよ? 意味深なんですけど」
「考え過ぎだってば」
教室に辿り着くまで七海はあれこれと粘り強く質問してきたが、廊下で友人と話している黒木の姿を見つけると、ぎゅっと紗良の腕を掴んだ。
「大丈夫?」
小声で心配そうに尋ねる七海に、紗良は笑顔で頷く。黒木の方もこちらに気付いたようで、一瞬だけ動きを止めたがすぐにいつもと同じように「おはよう」と声をかけてきた。
喉の奥がぎゅっとなって苦しい。
「おはよう」
自分もいつも通りの挨拶が出来ただろうか。
そんな事を考えながら、七海に手を振り席につく。前の席の美菜が、待ち構えていたように振り返った。
「おはよ、紗良。今日の数学当てられそうなの。お願い! 見せてぇ」
拝むように両手を合わせる美菜に苦笑いしながら、紗良は「はいはい」と予習済みのノートを渡す。平伏しながらノートを受け取り顔を上げた美菜が、「わっ」と声を上げ頬を赤らめた。
「ね、ね。今、王子がこっち見てた! 目が合っちゃった。ラッキー!」
小声でそう告げると、足をバタバタさせる。紗良が視線を向けると、御堂はもう既に手元のスマホを操作していて、こちらを見てはいなかった。
もしかして、心配して様子を伺ってくれたのだろうか。
そう考えた後、流石に自惚れ過ぎだなと自嘲気味に笑って首を振る。
朝に緊張しながら黒木と挨拶したことを除けば、いつもと変わらない一日だった。
よく考えれば、ここ最近は寝る前に「おやすみ」のスタンプを送り合うだけで、一緒に下校するどころか言葉を交わすことすらなかったのだ。急激な喪失感など沸くはずもない。
別れを告げるのにトークアプリで済まされなかっただけマシだなと、紗良は長く静かに息を吐き出す。
いずれにせよ、もう終わったのだ。
今、どれだけ考えたって何も変わらない。
ライブまでの日数を、指折り数えてひたすら待とう。
思考を停止した紗良は、机に突っ伏して目を閉じた。
昨日の今日なのに、少々元気が良すぎると思われただろうかと首をすくめながら、紗良は御堂に声をかけた。
「おはよう、御堂くん。昨日は、その……ありがとう」
「え? ああ、いや。元気そうで、何より」
なぜか少しぎこちなく御堂は答えると、くるりと向きを変え足早に階段へ向かう。
「ちょっと紗良! 王子と話せるなんてスゴイね」
「思ったより良い人だったよ」
「昨日はありがとうって、何かあったの? 黒木関係?」
御堂と話したきっかけを喋れば、必然的に黒木の新しい彼女の事も話さなければいけない。紗良は七海に心の中でゴメンと言いつつ「消しゴム借りたんだ」と笑ってごまかした。
「えーっ、元気そうで何よりとか言ってたよ? 意味深なんですけど」
「考え過ぎだってば」
教室に辿り着くまで七海はあれこれと粘り強く質問してきたが、廊下で友人と話している黒木の姿を見つけると、ぎゅっと紗良の腕を掴んだ。
「大丈夫?」
小声で心配そうに尋ねる七海に、紗良は笑顔で頷く。黒木の方もこちらに気付いたようで、一瞬だけ動きを止めたがすぐにいつもと同じように「おはよう」と声をかけてきた。
喉の奥がぎゅっとなって苦しい。
「おはよう」
自分もいつも通りの挨拶が出来ただろうか。
そんな事を考えながら、七海に手を振り席につく。前の席の美菜が、待ち構えていたように振り返った。
「おはよ、紗良。今日の数学当てられそうなの。お願い! 見せてぇ」
拝むように両手を合わせる美菜に苦笑いしながら、紗良は「はいはい」と予習済みのノートを渡す。平伏しながらノートを受け取り顔を上げた美菜が、「わっ」と声を上げ頬を赤らめた。
「ね、ね。今、王子がこっち見てた! 目が合っちゃった。ラッキー!」
小声でそう告げると、足をバタバタさせる。紗良が視線を向けると、御堂はもう既に手元のスマホを操作していて、こちらを見てはいなかった。
もしかして、心配して様子を伺ってくれたのだろうか。
そう考えた後、流石に自惚れ過ぎだなと自嘲気味に笑って首を振る。
朝に緊張しながら黒木と挨拶したことを除けば、いつもと変わらない一日だった。
よく考えれば、ここ最近は寝る前に「おやすみ」のスタンプを送り合うだけで、一緒に下校するどころか言葉を交わすことすらなかったのだ。急激な喪失感など沸くはずもない。
別れを告げるのにトークアプリで済まされなかっただけマシだなと、紗良は長く静かに息を吐き出す。
いずれにせよ、もう終わったのだ。
今、どれだけ考えたって何も変わらない。
ライブまでの日数を、指折り数えてひたすら待とう。
思考を停止した紗良は、机に突っ伏して目を閉じた。
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