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第四章 百鬼夜行
月がやけに大きく見えた②
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最寄り駅に到着すると、尾崎も一緒にホームに降り立った。思い切り伸びをしてから手首をブラブラと振る。
「先輩、大丈夫ですか? 腕痛めてませんか」
「まぁ、普段から鍛えてるからね。余裕、余裕。家どっち? 俺は古民家カフェの近くなんだけど」
「あ、うちと近いかもしれません」
「じゃあ、ついでに送るよ」
歩き出した尾崎の背中を追いながら、御堂に嘘をついてしまった上に、結果的に尾崎と二人で帰っている状況を後ろめたく思った。口数の減った紗良を振り返りながら、尾崎がニヤリと笑う。
「何? 彼氏に悪いなーとか思ってんの?」
言い当てられた紗良は、言葉に詰まってバツが悪そうに目を逸らした。
「別に取って喰いやしねぇよ。偶然会って、たまたま帰る方向が一緒だっただけだろ。でもまあ、あの王子がヤキモチ妬くとこ見てみたい気もするけどね」
「妬くかな……」
御堂が自分に対してヤキモチを妬くなど想像ができずに、紗良は首をひねった。尾崎は面白そうに、紗良のペンダントに手を伸ばす。
「案外嫉妬深いんじゃないの? じゃなきゃ、こんな鎖で繋がねーよ」
ペンダントヘッドを指で摘まみ上げた尾崎が、意地悪く笑う。目の奥で炎のような光が揺れた。
一瞬怯んだものの、紗良は尾崎の手からペンダントを奪い返すと速足で歩きだす。ケラケラと背後で尾崎が笑って、何を考えているのだろうと思いながら紗良は呆れたようにため息をついた。
「あ、家ここです。ありがとうございました」
しばらく無言で歩き続けた後、自宅マンションの前で足を止める。
何だかんだ言いながらも律義に送り届けてくれた尾崎に向かって、紗良は深々とお辞儀をした。
「いや、どうせ通り道だからね。お礼言われる程でも。んじゃ、また」
ひらひらと手を振って立ち去る尾崎に会釈をして、紗良もマンションのエントランスに入ろうと背を向けた。
「ねえ」
急に呼び止められ、紗良が慌てて振り返る。
暗がりにいて表情は読めなかったが、月明かりに照らされた尾崎のシルエットが夜の中に浮かび上がっていた。
「……御堂に気を付けなよ」
それだけ言うと再び歩き出し、足音が遠ざかっていく。まだ声は届くのだから、「それはどういう意味」と問えばいいのに、紗良は聞けなかった。
なぜか狐の話を思い出してしまい、誤魔化すように空を見上げる。
月がやけに大きく見えた。
「先輩、大丈夫ですか? 腕痛めてませんか」
「まぁ、普段から鍛えてるからね。余裕、余裕。家どっち? 俺は古民家カフェの近くなんだけど」
「あ、うちと近いかもしれません」
「じゃあ、ついでに送るよ」
歩き出した尾崎の背中を追いながら、御堂に嘘をついてしまった上に、結果的に尾崎と二人で帰っている状況を後ろめたく思った。口数の減った紗良を振り返りながら、尾崎がニヤリと笑う。
「何? 彼氏に悪いなーとか思ってんの?」
言い当てられた紗良は、言葉に詰まってバツが悪そうに目を逸らした。
「別に取って喰いやしねぇよ。偶然会って、たまたま帰る方向が一緒だっただけだろ。でもまあ、あの王子がヤキモチ妬くとこ見てみたい気もするけどね」
「妬くかな……」
御堂が自分に対してヤキモチを妬くなど想像ができずに、紗良は首をひねった。尾崎は面白そうに、紗良のペンダントに手を伸ばす。
「案外嫉妬深いんじゃないの? じゃなきゃ、こんな鎖で繋がねーよ」
ペンダントヘッドを指で摘まみ上げた尾崎が、意地悪く笑う。目の奥で炎のような光が揺れた。
一瞬怯んだものの、紗良は尾崎の手からペンダントを奪い返すと速足で歩きだす。ケラケラと背後で尾崎が笑って、何を考えているのだろうと思いながら紗良は呆れたようにため息をついた。
「あ、家ここです。ありがとうございました」
しばらく無言で歩き続けた後、自宅マンションの前で足を止める。
何だかんだ言いながらも律義に送り届けてくれた尾崎に向かって、紗良は深々とお辞儀をした。
「いや、どうせ通り道だからね。お礼言われる程でも。んじゃ、また」
ひらひらと手を振って立ち去る尾崎に会釈をして、紗良もマンションのエントランスに入ろうと背を向けた。
「ねえ」
急に呼び止められ、紗良が慌てて振り返る。
暗がりにいて表情は読めなかったが、月明かりに照らされた尾崎のシルエットが夜の中に浮かび上がっていた。
「……御堂に気を付けなよ」
それだけ言うと再び歩き出し、足音が遠ざかっていく。まだ声は届くのだから、「それはどういう意味」と問えばいいのに、紗良は聞けなかった。
なぜか狐の話を思い出してしまい、誤魔化すように空を見上げる。
月がやけに大きく見えた。
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