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第五章 酷い夢
御堂が王子なら尾崎は②
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「なんであんなヤツに送ってもらうかなぁ」
「ライブの日は……ごめんね」
尾崎に送ってもらった経緯は当日のうちに話してあった。その時も不機嫌ではあったが、一人で帰るよりは良かったと納得していたように思えたのだが。
ムスッとしたままそっぽを向いている御堂の横顔を「まだ怒ってるのかな」と観察するように眺める。それでも、まるで無関心でいられるよりは、何倍も良いと紗良は思った。
「あ、そうだ。朝コンビニに寄った時に、予約してた雑誌受け取ったんだ。この前言ってた撮影って、この時の?」
紗良が取り出した雑誌を一目見て、御堂はサッと表情を変え、珍しくあたふたしながら立ち上がる。
「は? あ、えっと。俺、ゴミ捨ててくるわ」
「ほら、このページ。レンガの建物を背景に、花魁と白い狐のツーショットだなんて神秘的だね」
逃げ出すタイミングを失った御堂は、紗良の次の言葉を不安そうに待った。
紗良の開いたページには、宵闇の中いつもの狐の半面を付けたユズと、美しい花魁が寄り添って写っていた。隣のページでは、白いうなじを露わにした花魁がユズの首に両腕を回している。濡れたような唇を半開きにしたユズは、花魁に負けないほど艶めかしい。
それはそれはとても妖しく儚げで、刹那的なフォトアートだった。
「凄く綺麗」
「……怒らないんだ」
気まずそうに目を泳がす御堂を見上げて、紗良は笑う。
「だってユズだもん、怒れないよ。お仕事なんだし」
御堂は脱力しながらベンチに腰を落とすと、背もたれに寄り掛かってのけ反るように空を仰いだ。
「言い訳させてもらうと、その花魁は女形だから」
「全然気にしてないってば」
「何か、そう言われるのも複雑だな。ちょっとは妬いてよ」
手を伸ばして紗良の髪を一房掴むと「俺だけバカみたいじゃん」と呟きながら、スルスルと何度も指で梳いた。まるで猫がじゃれている様に見え、警戒心を解いた御堂は案外子供っぽいのかもしれないなと、愛おしくなる。
「御堂くん。もしかして尾崎先輩と、前から知り合いだった?」
「……なんで?」
髪に触れていた手をスッと引くと、浅く座っていた体を起こして御堂は紗良に向き直る。その一瞬で、無防備だった御堂の周りに薄い幕が張られたような、少しの距離が出来てしまった。それを寂しいと感じたが、お互い様かもしれないとも思った。
自分だって、一番聞きたいことが聞けずにいる。
「ライブの日は……ごめんね」
尾崎に送ってもらった経緯は当日のうちに話してあった。その時も不機嫌ではあったが、一人で帰るよりは良かったと納得していたように思えたのだが。
ムスッとしたままそっぽを向いている御堂の横顔を「まだ怒ってるのかな」と観察するように眺める。それでも、まるで無関心でいられるよりは、何倍も良いと紗良は思った。
「あ、そうだ。朝コンビニに寄った時に、予約してた雑誌受け取ったんだ。この前言ってた撮影って、この時の?」
紗良が取り出した雑誌を一目見て、御堂はサッと表情を変え、珍しくあたふたしながら立ち上がる。
「は? あ、えっと。俺、ゴミ捨ててくるわ」
「ほら、このページ。レンガの建物を背景に、花魁と白い狐のツーショットだなんて神秘的だね」
逃げ出すタイミングを失った御堂は、紗良の次の言葉を不安そうに待った。
紗良の開いたページには、宵闇の中いつもの狐の半面を付けたユズと、美しい花魁が寄り添って写っていた。隣のページでは、白いうなじを露わにした花魁がユズの首に両腕を回している。濡れたような唇を半開きにしたユズは、花魁に負けないほど艶めかしい。
それはそれはとても妖しく儚げで、刹那的なフォトアートだった。
「凄く綺麗」
「……怒らないんだ」
気まずそうに目を泳がす御堂を見上げて、紗良は笑う。
「だってユズだもん、怒れないよ。お仕事なんだし」
御堂は脱力しながらベンチに腰を落とすと、背もたれに寄り掛かってのけ反るように空を仰いだ。
「言い訳させてもらうと、その花魁は女形だから」
「全然気にしてないってば」
「何か、そう言われるのも複雑だな。ちょっとは妬いてよ」
手を伸ばして紗良の髪を一房掴むと「俺だけバカみたいじゃん」と呟きながら、スルスルと何度も指で梳いた。まるで猫がじゃれている様に見え、警戒心を解いた御堂は案外子供っぽいのかもしれないなと、愛おしくなる。
「御堂くん。もしかして尾崎先輩と、前から知り合いだった?」
「……なんで?」
髪に触れていた手をスッと引くと、浅く座っていた体を起こして御堂は紗良に向き直る。その一瞬で、無防備だった御堂の周りに薄い幕が張られたような、少しの距離が出来てしまった。それを寂しいと感じたが、お互い様かもしれないとも思った。
自分だって、一番聞きたいことが聞けずにいる。
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