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~ 第二章 賽は投げられた ~
始動⑧
久我が先に戻るのは打ち合わせ通りの決定事項なのだが、このタイミングだと避けられているのではと疑いたくなってしまう。
「今日はお忙しいのにありがとうございました。衣装決めの参考にウオーキング風景を記録すると聞いていたのですが、桐ケ谷さんが撮影してくださるのですか?」
トップ自ら? と、驚いたようなニュアンスで宮木から尋ねられ、玲旺は「はい」と返事をした。その間も表情が気になって仕方ない玲旺の視線は、久我に縫い留められている。
「氷雨にモデルの雰囲気を伝えるために、私はこのまま残って撮影を行います」
「承知しました、よろしくお願いいたします。生徒たちの準備も終わったようなので、私も指導に戻りますね。久我さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。では、お先に失礼いたします」
久我は一礼すると、大きな歩幅で出口に向かって歩き出す。
扉の向こうに消えていく背中を見ていたら居ても立っても居られなくなり、気付くと玲旺は駆けだしていた。
「すみません、すぐに戻ります」
走りながら宮木に告げ、急いで久我の後を追う。恋人の心配事ひとつ晴らせないようでは、業界の改善など夢のまた夢ではないか。
「久我さん!」
講堂から飛び出してきた玲旺に、久我が驚いたように目を見開いた。
「どうした。忘れ物か?」
「違うよ」
玲旺が久我の腕を掴んでしがみつく。
「何か悩みがあるなら、相談して欲しい」
単刀直入に切り出した玲旺の訴えに、久我は息をのんだ。しかしすぐに緩く首を振り、誤魔化すように中途半端な笑みを浮かべる。
「悩みなんてないよ、疲れが出てたのかも。心配かけてたならごめんな」
「嘘吐くなって。最近ずっとおかしいの、気付いてないとでも思ったかよ」
ピシャリと言い訳を跳ね除け、玲旺が久我に詰め寄った。久我は戸惑いながらも、玲旺の肩に手を置いて押し戻す。
「本当に大した問題じゃないんだ。ただ、お前を煩わせたくないし巻き込みたくない。もうじき解決するから、お前は気にせず目の前のことに集中してくれ」
「煩わせたくないって何だよ。こんな時こそ、俺は久我さんを支えたいのに。それとも、俺はそんなに頼りにならない?」
もどかしくてイライラする。大した問題でないのなら、さっさと知らせてくれればいいのに。まるで「お前に言ったって仕方ない」と拒絶されたような気分だ。
「頼りになるとかならないとか、そう言うことじゃないんだ。頼むから仕事に集中してくれ。今だって、撮影を放り出して俺を追いかけてる場合じゃないだろ。俺は大丈夫だから、自分のやるべきことを優先しろ」
早く戻れと言われても、玲旺はすぐには動けなかった。
久我の言う通り、今は仕事に集中しなければいけないのかもしれない。けれど、久我を後回しにしてしまうのも納得がいかない。
傷付いたような顔で立ち尽くす玲旺に、久我は「ごめんな」と改めて告げる。この話題はこれでおしまい、と言うことだろう。
玲旺はこれ以上の追及を諦め、久我を睨むように見上げた。
「……本当にもうすぐ解決する? 問題が片付いたら、ちゃんと報告して欲しい」
「ああ。必ず報告する」
玲旺の譲歩に、久我はホッとしたようにうなずいた。
「今日はお忙しいのにありがとうございました。衣装決めの参考にウオーキング風景を記録すると聞いていたのですが、桐ケ谷さんが撮影してくださるのですか?」
トップ自ら? と、驚いたようなニュアンスで宮木から尋ねられ、玲旺は「はい」と返事をした。その間も表情が気になって仕方ない玲旺の視線は、久我に縫い留められている。
「氷雨にモデルの雰囲気を伝えるために、私はこのまま残って撮影を行います」
「承知しました、よろしくお願いいたします。生徒たちの準備も終わったようなので、私も指導に戻りますね。久我さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様でした。では、お先に失礼いたします」
久我は一礼すると、大きな歩幅で出口に向かって歩き出す。
扉の向こうに消えていく背中を見ていたら居ても立っても居られなくなり、気付くと玲旺は駆けだしていた。
「すみません、すぐに戻ります」
走りながら宮木に告げ、急いで久我の後を追う。恋人の心配事ひとつ晴らせないようでは、業界の改善など夢のまた夢ではないか。
「久我さん!」
講堂から飛び出してきた玲旺に、久我が驚いたように目を見開いた。
「どうした。忘れ物か?」
「違うよ」
玲旺が久我の腕を掴んでしがみつく。
「何か悩みがあるなら、相談して欲しい」
単刀直入に切り出した玲旺の訴えに、久我は息をのんだ。しかしすぐに緩く首を振り、誤魔化すように中途半端な笑みを浮かべる。
「悩みなんてないよ、疲れが出てたのかも。心配かけてたならごめんな」
「嘘吐くなって。最近ずっとおかしいの、気付いてないとでも思ったかよ」
ピシャリと言い訳を跳ね除け、玲旺が久我に詰め寄った。久我は戸惑いながらも、玲旺の肩に手を置いて押し戻す。
「本当に大した問題じゃないんだ。ただ、お前を煩わせたくないし巻き込みたくない。もうじき解決するから、お前は気にせず目の前のことに集中してくれ」
「煩わせたくないって何だよ。こんな時こそ、俺は久我さんを支えたいのに。それとも、俺はそんなに頼りにならない?」
もどかしくてイライラする。大した問題でないのなら、さっさと知らせてくれればいいのに。まるで「お前に言ったって仕方ない」と拒絶されたような気分だ。
「頼りになるとかならないとか、そう言うことじゃないんだ。頼むから仕事に集中してくれ。今だって、撮影を放り出して俺を追いかけてる場合じゃないだろ。俺は大丈夫だから、自分のやるべきことを優先しろ」
早く戻れと言われても、玲旺はすぐには動けなかった。
久我の言う通り、今は仕事に集中しなければいけないのかもしれない。けれど、久我を後回しにしてしまうのも納得がいかない。
傷付いたような顔で立ち尽くす玲旺に、久我は「ごめんな」と改めて告げる。この話題はこれでおしまい、と言うことだろう。
玲旺はこれ以上の追及を諦め、久我を睨むように見上げた。
「……本当にもうすぐ解決する? 問題が片付いたら、ちゃんと報告して欲しい」
「ああ。必ず報告する」
玲旺の譲歩に、久我はホッとしたようにうなずいた。
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