されど御曹司は愛を知る

雪華

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◇第3章 付かず離れず◇

★俺の役割って、何①

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 久我は廊下の壁に寄り掛かりながら、ゆっくり顔を上げた。焦点の定まらない目がやけに艶っぽい。

「ボトルのキャップも開けて」
「甘えんなよ」

 言いながらも仕方なくキャップを開けて、ボトルだけを久我に手渡した。ゴクゴク喉がなるほど一気に飲み、あふれた水が首筋を伝う。その光景は何だか目が離せなくて、玲旺は久我の隣に座ってじっと眺めていた。

「なに? 桐ケ谷も飲みたいの?」

 視線に気づいた久我がニッと笑う。そのままにじり寄ると、耳元で囁いた。

「口移しで飲ませてやろうか?」

 玲旺の顔が一瞬で熱くなる。からかいやがってと思いながら久我を睨んだ。目の前にある余裕ぶった久我の顔が、どんどん近づいてくる。チキンレースなら望むところだと睨み続けたら、そのまま覆い被るように唇を塞がれた。

「んん!」

 突き飛ばそうとしたが、びくともしない。久我の大きな手が玲旺の耳の後ろに添えられて、顔を背けることも出来ずに一方的に貪られる。
 ただただ、口の中を這う舌に翻弄された。息が出来ず、久我の襟元に縋り付く。
 だけど苦しいのは肺じゃない。もっと奥の奥。

「も、ホント……なんなの。急にさぁ」

 久我の力が少し緩んだ隙に、玲旺は身をひねるようにして上半身だけ逃げた。見れば余程強く握りしめていたようで、久我のスーツの襟元がしわになっている。
 久我は荒い息のまま、片手で目を覆った。

「あーヤバイ。飲みすぎた」
「そうだよ、何やってんだよ。酔った勢いで」

 玲旺は久我が酔いに任せた悪ふざけを悔いているのかと思い、呆れながら抗議する。今起きた出来事を思い返し、心臓を押さえた。ドクドクと脈打って痛い。けれど久我は首を横に振り、「違うよ」と、廊下に座り込んでいる玲旺を壁際に追い詰めた。

「飲みすぎちゃって、全然勃ない」

 真顔の久我が何を言ってるのか一瞬理解できず、玲旺は一拍遅れて「は?」と聞き返した。

「何言ってんの? まだ冗談言うつもり?」
「冗談なんかじゃないよ。切実じゃん。だって」

 こんなに興奮してるのに。
 玲旺の耳元で熱い息を吐く。久我の手が玲旺の心臓の上に置かれた。鼓動の速さを知られるのが嫌で身をよじったが、久我の手はゆっくりと下へ移動する。へその下、玲旺の勃ち上がった部分を久我が撫でた。
 既に充血しているそこは、久我からの刺激を受けて更に硬さを増す。

「ホラ、お前のはこんなになってんのに」
「こっ、これは生理現象!」

 指摘されて初めて気づいた。動揺し過ぎて全身が熱くなっているので、どこがどうなっているのかもう自分でも把握しきれない。

「生理現象か。じゃあ、スッキリしたいよね」

 え? と言う玲旺の疑問は、再び唇を重ねられたことで声にならなかった。
 歯の隙間から舌を捻じ込まれ、それに気を取られているうちにベルトが外される。

「んー!」

 じたばたともがいたら、まるでスラックスを脱ぐのを手伝うような形になってしまった。呆気なく剥ぎ取られ下着姿になると、布越しにでも玲旺の雄の形がはっきりわかってしまう。久我がそれを摩りながら、もう片方の手をワイシャツの下へ滑り込ませた。胸の突起に触れられて、ぞわっと毛が逆立つ。
 どうしていいか解らず久我の唇から逃れて顔を背けると、今度は耳を吸われた。

「離せってば!」

 キスしたいと思ったことはあった。
 その腕に抱きしめられたいとも思った。
 だけどそれは、こんな風に酒の力を借りてのものじゃない。そう拒絶しながらも、恋焦がれた男からの愛撫に体はどんどん反応していく。

 それがひたすら恐ろしかった。今まで自分が優位に立てなかった恋愛は経験が無い。
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