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第二章 二度目の人生 リベンジスタート
お嬢様行方不明 アデルSide ※
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私はアデル。
快感の波に襲われて溺れそうだ。愛なのか恋なのか幸せは初めての経験を私に与えてくれる。
春だ。季節と共に私の人生にも心の弾む春が来たようだ。
大好きな人に激しく突かれて胸を揉まれている。甘い声が漏れ出てしまう。何度も何度も高みに達して体を震わせてしまう。
私たち愛を誓った恋人たちしか知らない秘密のデートだ。
あぁんっあんっあんっあぁんっあっあっあんっ
はぁっん……ダメっ………イっちゃう……
私は四つん這いになってノエルに後ろから激しく突かれている状態で、興奮状態のノエルのそれはとても硬くなって私に快感を与え続けていた。
ノエルに私は腰をしっかりとホールドされて身動きが取れない状態なのに、ノエルの腰の動きがどんどん早くなっていく。甘い獣のような嬌声が私から出てしまう。私の体は大きく揺れ、私の豊かな胸も激しく揺れ動き、ノエルの手が後ろから伸びてきて胸を時々揉んだ。ピンク色に染まった胸の先を刺激されてあそこがぎゅっと締まる。そのたびにノエルが快感を感じて悶えるのが分かる。
気持ちも体も絶頂の心地で、大人になるとはなんて凄いことなんだと錯覚してしまう。
あぁっんあぁっ!
大好きなノエルに愛されて、私は気持ち良すぎて快感に喘ぎ、思わずシーツを握りしめた。また体が震えてくるのを抑えようとした。
「大好きだ、アデル」
彼はうめくように言って、一気に高みに達して果てた。最高に幸せだった。二人でベットに崩れ落ちるようにして抱き合った。
私は心地よい快感に包まれて思わず眠ってしまった。
◆◆◆
――あ!お嬢様っ?
私は隣のバリドン公爵邸が騒がしいのに気づいて、ハッとして体を起こした。いつの間にかうつらうつらしていたようだ。
「ノエル、私はもう帰らなければならないわ」
隣で寝入っていたノエルを起こしてささやいた。彼も素早く服を着て、二人で一緒にバリドン公爵邸の様子を窓からのぞいた。
やはり何かがおかしい。そう思った時、ノエルは突然ぎゅっと私を抱き締めた。
「愛しているよ、アデル」
私は貧しい家の出で、バリドン公爵邸の働き口はとてもありがたいものだった。幼い頃からお嬢様はとても優しく、私たちはとても仲が良かった。私はお嬢様のことを崇拝しているが、同時に自分の妹のような存在でもあった。私がお慕い申し上げるお嬢様は私が守るべき存在だ。
――早く様子を見に行かねば……!
私に貴族と結婚や貴族の恋人ができるなんて夢のようなことだった。ノエルは私に訪れた最大の幸運だ。
お嬢様に何かあったかと一瞬不安がよぎった心が彼に抱きすくめられて、たちまち温かい気持ちで満たされるのを感じた。彼の胸に顔を埋める。とても嬉しい。
「私もよ、ノエル。でも行かなきゃ。お嬢様に何かあったのかもしれないから」
私はそうノエルにささやいてキスをかわした。服を来て、私は急いでそっとノエルの屋敷を抜けた。誰も周囲にいないか見計らって勝手口から出た。そして、そっとバリドン公爵邸に戻った。
屋敷に戻ると大騒ぎだった。非常に憔悴した様子のレキュール辺境伯がバリドン公爵邸の居間にいて、ジョセフと共に旦那様に何かを説明していた。
ルイーズ夫人はよろよろと椅子に腰を下ろし、3歳のアンヌを抱きしめている。彼女はヴァイオレットには冷たいところがあったが、ヴァイオレットを毛嫌いしているわけではない。特に聖女に選ばれてからは、ありがちな継母設定のそれではなく、ヴァイオレットの行動を褒めることも多かった。それは皆が知っていることだ。
「そんなことがっ……そんなことがなぜ起こる!?」
旦那様はレキュール辺境伯に詰め寄っていた。
「ヒュー王子が亡くなり、うちの娘の姿が跡形もなく消えただと?王宮の魔導師ジーニンもそこにいたのだろう?なぜだ?なぜそんなことが起きる?」
旦那様は最後の言葉は涙を流しながら言っていて、言葉を発した後は崩れ落ちるようにして泣いた。
「うちの娘は聖女だ。そんなことにはならないはずなんだ」
旦那様が泣いて、ルイーズ夫人が旦那様の肩に手を回して慰めた。
「ジョセフ、お前はどこにいた!?」
「旦那様、私はモートン伯爵邸の厩でお嬢様の帰りを待っていたのです。お嬢様はレキュール辺境伯と一緒に馬で狩猟用山小屋に向かいました」
旦那様は泣きながらジョセフに確認し、ジョセフの言葉を受けて、今度は青ざめて憔悴しきった様子のレキュール辺境伯に聞いた。
「娘の最後の言葉は何だったんだ?」
「そのっ……魔導師ジーニンに何かを頼んでいました。詳しくはわかりません。その後姿がすっと消えたのです」
「娘は自分で消えたのか?」
「そうではないように見えましたが、正確には分かりません」
旦那様は髪の毛をかきむしるようにして、ウロウロと居間の床を歩き回り始めた。
「なぜだ?大変なことになる。この国の世継ぎのヒュー王子が死んだ。アルフレッド殿下が国王陛下に何かあった場合は国王になるはずだ」
私はお嬢様が行方不明だという事態を悟り、ワナワナと震えが止まらなくなった。ヒュー王子様も亡くなったということは、何かの陰謀だろうか。
その後、旦那様は倒れるようにして自室にこもられた。ルイーズ夫人が旦那様の後を追いかけていき、旦那様を気遣っている様子だ。使用人たちも皆あまりの事態に震えが止まらない程の衝撃を受けていた。青ざめて口々に不安を漏らしている。
お嬢様が心配だ。陰謀なら、どこかに連れて行かれたのだと思う。聖女としてのお嬢様のスキルを欲しがる国はたくさんあると聞いたことがあるから。
私はお嬢様の身を案じて泣いた。
ただ、1年も前から人が変わったようになり、お嬢様はご自身で自分の身を守れるように常に鍛錬を積んでいたはずなのだ。
一体なぜ、こんな事態が起きるのか。
皆が不安を抱えて過ごしている中で、その日、私は夜更けまでレキュール辺境伯が屋敷に留まっていることに気づいた。偶然にも、ジョセフと彼が中庭で言い争っているのを見たのだ。
「私が見たことを言えば、お嬢様の名誉を汚すことになりますから、私は黙っております」
ジョセフは毅然とした態度でレキュール辺境伯に言っていた。彼の顔は険しく、口調も鋭かった。
「ジョセフ、ありがとう。君には感謝している。頼むから抱きしめさせてくれ」
「え!今ここでですか?」
「そうだ。君の聖女への忠誠心にハグで応えたい」
「いや、いいです。正直わたくしはあなたを許せない思いでいます。ヒュー王子が亡くなった今、どうしてあなたはお嬢様をかどわかしたのですかという、あなたを責める気持ちがぬぐいきれないのです」
「それはすまない。謝罪の意味でハグをさせて欲しい」
「いえ、あなたのハグはどちらにしても結構です」
どうしてもハグで感謝か謝罪をしたいレキュール辺境伯の顔は月明かりで見ても目の下のクマが色濃く残っていて、いつもの輝くようなハンサムな美貌に翳りがあり、悲しみをたたえていた。
私は「お嬢様をかどわかした」というジョセフの言葉にドキッとして、二人の様子を目をこらして見つめた。風がふわっと吹いて、春の夜にミモザの花の甘い香りが漂った。
「ごめん、ジョセフ」
レキュール辺境伯がジョセフにいきなり突進するようにして近づき、抱きしめた。その後に奇妙なことが起きた。
抱きしめられたジョセフはどこかほっとした笑みを浮かべたのだ。代わりにレキュール辺境伯は「うわっ!」とジョセフから飛び退ったのだ。
「な……何?すまない。君に抱きつくつもりはなかった」
レキュール辺境伯は辺りを見渡しながら、ジョセフに謝った。
突然、ジョセフが饒舌に話し始めた。月明かりの下、彼は少し自信に満ちていた。さっきとはまるで様子が違う。
「あなたはショックで忘れてしまったようですね。ヒュー王子がモートン伯爵の森で狩猟中に落馬して、その後山小屋で亡くなりました。治癒のために駆けつけたお嬢様と一緒にあなたも山小屋に行き、ヒュー王子が亡くなるのを見届けました。そして、ヴァイオレットお嬢様の姿があとかたもなく魔法のように消えたのを目撃した。驚いたあなたはバリドン公爵邸に事のあらましを伝えにやってきた。皆、動揺していますが、あなたも非常に悲しんでいるのは知っています」
ジョセフの言葉にレキュール辺境伯は力なく庭の地面に崩れ落ちた。
「ヒュー王子が亡くなった!?ヴァイオレットが消えた?なぜそんなことが……嘘だろう?」
ジョセフは地面に崩れ落ちたレキュール辺境伯をゆっくりと助け起こした。
「ショックのあまり、あなたは一時的に記憶喪失のようです。今晩はバリドン公爵邸に泊まりましょう。執事のハリーに私からもお願いしますから、部屋を用意してもらいましょう。さあ、行きましょう」
ジョセフに導かれるように、力無い足取りでレキュール辺境伯が屋敷の方に戻るのを私は見た。
ミモザの黄色い花は夜の月明かりでは真っ黒で恐ろしく見えた。
――今の一瞬でレキュール辺境伯は記憶喪失になったのかしら?
その様子をノエルが隣の屋敷の窓からじっと見下ろしていることに私は全く気づかなかった。
恋どころではない事態が起きてしまった。私はお嬢様の身を案じて涙が出て止まらなくなった。
快感の波に襲われて溺れそうだ。愛なのか恋なのか幸せは初めての経験を私に与えてくれる。
春だ。季節と共に私の人生にも心の弾む春が来たようだ。
大好きな人に激しく突かれて胸を揉まれている。甘い声が漏れ出てしまう。何度も何度も高みに達して体を震わせてしまう。
私たち愛を誓った恋人たちしか知らない秘密のデートだ。
あぁんっあんっあんっあぁんっあっあっあんっ
はぁっん……ダメっ………イっちゃう……
私は四つん這いになってノエルに後ろから激しく突かれている状態で、興奮状態のノエルのそれはとても硬くなって私に快感を与え続けていた。
ノエルに私は腰をしっかりとホールドされて身動きが取れない状態なのに、ノエルの腰の動きがどんどん早くなっていく。甘い獣のような嬌声が私から出てしまう。私の体は大きく揺れ、私の豊かな胸も激しく揺れ動き、ノエルの手が後ろから伸びてきて胸を時々揉んだ。ピンク色に染まった胸の先を刺激されてあそこがぎゅっと締まる。そのたびにノエルが快感を感じて悶えるのが分かる。
気持ちも体も絶頂の心地で、大人になるとはなんて凄いことなんだと錯覚してしまう。
あぁっんあぁっ!
大好きなノエルに愛されて、私は気持ち良すぎて快感に喘ぎ、思わずシーツを握りしめた。また体が震えてくるのを抑えようとした。
「大好きだ、アデル」
彼はうめくように言って、一気に高みに達して果てた。最高に幸せだった。二人でベットに崩れ落ちるようにして抱き合った。
私は心地よい快感に包まれて思わず眠ってしまった。
◆◆◆
――あ!お嬢様っ?
私は隣のバリドン公爵邸が騒がしいのに気づいて、ハッとして体を起こした。いつの間にかうつらうつらしていたようだ。
「ノエル、私はもう帰らなければならないわ」
隣で寝入っていたノエルを起こしてささやいた。彼も素早く服を着て、二人で一緒にバリドン公爵邸の様子を窓からのぞいた。
やはり何かがおかしい。そう思った時、ノエルは突然ぎゅっと私を抱き締めた。
「愛しているよ、アデル」
私は貧しい家の出で、バリドン公爵邸の働き口はとてもありがたいものだった。幼い頃からお嬢様はとても優しく、私たちはとても仲が良かった。私はお嬢様のことを崇拝しているが、同時に自分の妹のような存在でもあった。私がお慕い申し上げるお嬢様は私が守るべき存在だ。
――早く様子を見に行かねば……!
私に貴族と結婚や貴族の恋人ができるなんて夢のようなことだった。ノエルは私に訪れた最大の幸運だ。
お嬢様に何かあったかと一瞬不安がよぎった心が彼に抱きすくめられて、たちまち温かい気持ちで満たされるのを感じた。彼の胸に顔を埋める。とても嬉しい。
「私もよ、ノエル。でも行かなきゃ。お嬢様に何かあったのかもしれないから」
私はそうノエルにささやいてキスをかわした。服を来て、私は急いでそっとノエルの屋敷を抜けた。誰も周囲にいないか見計らって勝手口から出た。そして、そっとバリドン公爵邸に戻った。
屋敷に戻ると大騒ぎだった。非常に憔悴した様子のレキュール辺境伯がバリドン公爵邸の居間にいて、ジョセフと共に旦那様に何かを説明していた。
ルイーズ夫人はよろよろと椅子に腰を下ろし、3歳のアンヌを抱きしめている。彼女はヴァイオレットには冷たいところがあったが、ヴァイオレットを毛嫌いしているわけではない。特に聖女に選ばれてからは、ありがちな継母設定のそれではなく、ヴァイオレットの行動を褒めることも多かった。それは皆が知っていることだ。
「そんなことがっ……そんなことがなぜ起こる!?」
旦那様はレキュール辺境伯に詰め寄っていた。
「ヒュー王子が亡くなり、うちの娘の姿が跡形もなく消えただと?王宮の魔導師ジーニンもそこにいたのだろう?なぜだ?なぜそんなことが起きる?」
旦那様は最後の言葉は涙を流しながら言っていて、言葉を発した後は崩れ落ちるようにして泣いた。
「うちの娘は聖女だ。そんなことにはならないはずなんだ」
旦那様が泣いて、ルイーズ夫人が旦那様の肩に手を回して慰めた。
「ジョセフ、お前はどこにいた!?」
「旦那様、私はモートン伯爵邸の厩でお嬢様の帰りを待っていたのです。お嬢様はレキュール辺境伯と一緒に馬で狩猟用山小屋に向かいました」
旦那様は泣きながらジョセフに確認し、ジョセフの言葉を受けて、今度は青ざめて憔悴しきった様子のレキュール辺境伯に聞いた。
「娘の最後の言葉は何だったんだ?」
「そのっ……魔導師ジーニンに何かを頼んでいました。詳しくはわかりません。その後姿がすっと消えたのです」
「娘は自分で消えたのか?」
「そうではないように見えましたが、正確には分かりません」
旦那様は髪の毛をかきむしるようにして、ウロウロと居間の床を歩き回り始めた。
「なぜだ?大変なことになる。この国の世継ぎのヒュー王子が死んだ。アルフレッド殿下が国王陛下に何かあった場合は国王になるはずだ」
私はお嬢様が行方不明だという事態を悟り、ワナワナと震えが止まらなくなった。ヒュー王子様も亡くなったということは、何かの陰謀だろうか。
その後、旦那様は倒れるようにして自室にこもられた。ルイーズ夫人が旦那様の後を追いかけていき、旦那様を気遣っている様子だ。使用人たちも皆あまりの事態に震えが止まらない程の衝撃を受けていた。青ざめて口々に不安を漏らしている。
お嬢様が心配だ。陰謀なら、どこかに連れて行かれたのだと思う。聖女としてのお嬢様のスキルを欲しがる国はたくさんあると聞いたことがあるから。
私はお嬢様の身を案じて泣いた。
ただ、1年も前から人が変わったようになり、お嬢様はご自身で自分の身を守れるように常に鍛錬を積んでいたはずなのだ。
一体なぜ、こんな事態が起きるのか。
皆が不安を抱えて過ごしている中で、その日、私は夜更けまでレキュール辺境伯が屋敷に留まっていることに気づいた。偶然にも、ジョセフと彼が中庭で言い争っているのを見たのだ。
「私が見たことを言えば、お嬢様の名誉を汚すことになりますから、私は黙っております」
ジョセフは毅然とした態度でレキュール辺境伯に言っていた。彼の顔は険しく、口調も鋭かった。
「ジョセフ、ありがとう。君には感謝している。頼むから抱きしめさせてくれ」
「え!今ここでですか?」
「そうだ。君の聖女への忠誠心にハグで応えたい」
「いや、いいです。正直わたくしはあなたを許せない思いでいます。ヒュー王子が亡くなった今、どうしてあなたはお嬢様をかどわかしたのですかという、あなたを責める気持ちがぬぐいきれないのです」
「それはすまない。謝罪の意味でハグをさせて欲しい」
「いえ、あなたのハグはどちらにしても結構です」
どうしてもハグで感謝か謝罪をしたいレキュール辺境伯の顔は月明かりで見ても目の下のクマが色濃く残っていて、いつもの輝くようなハンサムな美貌に翳りがあり、悲しみをたたえていた。
私は「お嬢様をかどわかした」というジョセフの言葉にドキッとして、二人の様子を目をこらして見つめた。風がふわっと吹いて、春の夜にミモザの花の甘い香りが漂った。
「ごめん、ジョセフ」
レキュール辺境伯がジョセフにいきなり突進するようにして近づき、抱きしめた。その後に奇妙なことが起きた。
抱きしめられたジョセフはどこかほっとした笑みを浮かべたのだ。代わりにレキュール辺境伯は「うわっ!」とジョセフから飛び退ったのだ。
「な……何?すまない。君に抱きつくつもりはなかった」
レキュール辺境伯は辺りを見渡しながら、ジョセフに謝った。
突然、ジョセフが饒舌に話し始めた。月明かりの下、彼は少し自信に満ちていた。さっきとはまるで様子が違う。
「あなたはショックで忘れてしまったようですね。ヒュー王子がモートン伯爵の森で狩猟中に落馬して、その後山小屋で亡くなりました。治癒のために駆けつけたお嬢様と一緒にあなたも山小屋に行き、ヒュー王子が亡くなるのを見届けました。そして、ヴァイオレットお嬢様の姿があとかたもなく魔法のように消えたのを目撃した。驚いたあなたはバリドン公爵邸に事のあらましを伝えにやってきた。皆、動揺していますが、あなたも非常に悲しんでいるのは知っています」
ジョセフの言葉にレキュール辺境伯は力なく庭の地面に崩れ落ちた。
「ヒュー王子が亡くなった!?ヴァイオレットが消えた?なぜそんなことが……嘘だろう?」
ジョセフは地面に崩れ落ちたレキュール辺境伯をゆっくりと助け起こした。
「ショックのあまり、あなたは一時的に記憶喪失のようです。今晩はバリドン公爵邸に泊まりましょう。執事のハリーに私からもお願いしますから、部屋を用意してもらいましょう。さあ、行きましょう」
ジョセフに導かれるように、力無い足取りでレキュール辺境伯が屋敷の方に戻るのを私は見た。
ミモザの黄色い花は夜の月明かりでは真っ黒で恐ろしく見えた。
――今の一瞬でレキュール辺境伯は記憶喪失になったのかしら?
その様子をノエルが隣の屋敷の窓からじっと見下ろしていることに私は全く気づかなかった。
恋どころではない事態が起きてしまった。私はお嬢様の身を案じて涙が出て止まらなくなった。
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