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第三章 囚われの身から幸せへ
囚われの身から脱出して異世界転生クラス ヴァイレオットSide
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ソフィー妃に厩まで案内されて、彼女に言われて大急ぎで馬車が準備され、ソフィー妃と愛人ジゼルも一緒に乗り込んで、すぐに宮殿を出た。
「あなたの継母ルイーズはヴェジューランダ伯爵領地から採れた食糧しか使わないように料理人に命じていたでしょう?」
「ええ、なぜそれを?」
「悪い奴は食糧に仕込むのよ。今朝、やっとあなたの口にヴェジューランダ伯爵領地以外で取れた野菜が入ったのよ。昨日から継母ルイーズは寝込んでいなかったかしら?」
「そうだわっ!今朝、ルイーズは寝込んでいたわ。だから料理人ベスは、他の地のもの試しに使ったと言っていたわ」
「それが、あいつらの狙いよ。あなたの屋敷はずっと見張られているの。バリドン公爵邸は、一定時間を経つと力を失うように仕掛けられた食糧を売りつけられていて、今日たまたま継母のルイーズが寝込んでいたから料理人はいつもと違う食材を使ってみたのよ。他の人は何も感じないわ。スキルがある者にしか影響は出ないものらしいわ」
私は絶句した。継母ルイーズの奇妙なこだわりと我儘によって、私はずっと守られていたことになる。
「私がヒューを救えないようにあらかじめ仕組まれていたということなのね」
私の喉の奥から奇妙な音が漏れ出た。多分、嗚咽だ。
「まあ、そうね。あなたがヒュー王子と結婚すると困るのよ。あなたが力を持ったままだと、ヒュー王子を楽々と救えるわね。あなたがダメだった時の保険で聖女カトリーヌ、あなたも連れてこられたのよ。カトリーヌ聖女も最近、力が出なかったんじゃないのかしら?」
ソフィー妃の言葉にカトリーヌは驚いたようにうなずいた。
「食べ物に仕込まれていたのですね!私の母は誰か親切な人が食糧を安く分けてくれたと言っていましたが、そういうカラクリだったのね」
「そうなのよ。カール大帝は、つまり私の夫は、私と離婚して聖女と結婚するつもりよ。ヴァイオレットか、カトリーヌ。あなたたちのうちのどちらかとよ」
カトリーヌとソフィー妃のやり取りが、遠くに聞こえる。
――そんなことでヒューは死んだのか。
「許せないわ」
私の声は震えた。
「ね、それよりあなたの包みは何かしら?」
私は尋ねられて、ハッと自分の手をみた。料理人のベスがくれたチョコレートの包みを手にしばりつけていたのだ。コーヒーはカトリーヌ聖女が持っていてくれた。ワインを入れる革製の水筒に、ベスがコーヒーを入れてくれていた。コーヒーは水とコーヒー豆だから、妙な食材は使われていないだろう。コーヒー豆は海を渡ってきて貿易で入手したものだし、カカオも砂糖もそうだ。
私は包みをあげて、チョコレートを皆に少しずつ分けた。
「あら、これがバリドン公爵家のチョコレートというものね?」
「まあ、食べたかったのよ」
私たちはソフィー妃と一緒にコーヒーの水筒を回し飲みして、チョコレートと一緒に食べた。コーヒーは冷えていたが、興奮させる媚薬のような刺激を私に与えた。
口の中でとろけるチョコレートに、しばし皆呆然としていた。美味しすぎた。頭の中がショートしたような感覚に陥り、どういうわけか、私はショッピングモールのフードコートで目の前に魔導師ジーニンとヒューがいるような錯覚に陥った。
「ステータスオープン」
私は魔導師ジーニンにバイトのタスクとして催促されたような感覚に陥り、無意識に言葉を発していた。
「出たわ!」
私の頭上には数百ものスキルがずらずらと出現した。私はカトリーヌの方を見た。
『Lvl721の解毒術を使いますか?』
「使います」
頭の中で声がして、私は思わず即答していた。
『解毒しました』
「カトリーヌ、あなたの解毒が完了したわ」
私はカトリーヌに静かに告げて、カトリーヌは私に思わず抱きついてきた。
「ヴァイオレット!あなた凄いわ!ステータスオープン!」
カトリーヌの頭上にスキルが燦然と出現するのを私たちは見つめた。私たちは抱き合った。
「助けてくれたお礼に、あなた方二人に今すぐに身を守るバリアを授けます」
私はレキュール辺境伯エリオットにしたように、ソフィー妃と愛人ジゼルにバリアをはった。私はまもなくニホンに戻る。残るのは17歳のヴァイオレットだ。スキルさえ取り戻せば、ヴァイオレットは敵と戦えるはずだ。
ここが、カール大帝の宮殿だということは分かった。犯人は突き止めた、と思う。
「あなたの身近に本当の敵がいる……」
『擬魂追跡術の結果が出ました。レキュール辺境伯を狙ったのは……』
ソフィー妃の言葉と私の頭の中で、レキュール辺境伯を刺した時のジョセフに入っていた魂の追跡結果を伝える言葉が重なって聞こえた。
しかし、最後まで私には聞こえなかった。
◆◆◆
私はゆっくりと目を開けた。目の前に魔導師ジーニンが立っている。アパートのひまわりの花の前に彼は立っていて、横にサミュエルがいた。純斗も憔悴した表情で立っている。
「ヒューは?」
私は掠れ声で聞いた。周りを見渡すと、ヒューの姿は見えない。
「消えました。お嬢様。これはどういうことでしょう?」
魔導師ジーニンは人生1回目の延長上に生きていて、私が人生2回目で変えた結果をまだ知らないようだ。
「ヒュー王子が死んだ。私のせいよ」
私は肩を震わせて泣いた。私が救うべきところで救えなかったのだ。ダメな聖女だ。
「ヴァイオレット、お待たせ」
突然、爽やかな声がして、私は涙にかすんだ目で声の方を見つめた。いつも私を盗撮している中学生がスマホを掲げて立っている。
――嘘でしょう!?この子がヒューなの?
「違う違う、こっちだよ」
その盗撮小僧の中学生の隣に、爽やかなイケメンがスーツを着て立っていた。見たこともない人だ。後に停めてあるのはポルシェの車だ。ヒューのポルシェとは少し違うがとても似ていた。
一陣の風が私たちの間を吹き抜けた。
大家さんが育てているブルーリバーとピンクリバーのスーパートレニア カタリーナの涼やかで爽やかな花が風に吹かれて可憐に揺れた。
「あなたの継母ルイーズはヴェジューランダ伯爵領地から採れた食糧しか使わないように料理人に命じていたでしょう?」
「ええ、なぜそれを?」
「悪い奴は食糧に仕込むのよ。今朝、やっとあなたの口にヴェジューランダ伯爵領地以外で取れた野菜が入ったのよ。昨日から継母ルイーズは寝込んでいなかったかしら?」
「そうだわっ!今朝、ルイーズは寝込んでいたわ。だから料理人ベスは、他の地のもの試しに使ったと言っていたわ」
「それが、あいつらの狙いよ。あなたの屋敷はずっと見張られているの。バリドン公爵邸は、一定時間を経つと力を失うように仕掛けられた食糧を売りつけられていて、今日たまたま継母のルイーズが寝込んでいたから料理人はいつもと違う食材を使ってみたのよ。他の人は何も感じないわ。スキルがある者にしか影響は出ないものらしいわ」
私は絶句した。継母ルイーズの奇妙なこだわりと我儘によって、私はずっと守られていたことになる。
「私がヒューを救えないようにあらかじめ仕組まれていたということなのね」
私の喉の奥から奇妙な音が漏れ出た。多分、嗚咽だ。
「まあ、そうね。あなたがヒュー王子と結婚すると困るのよ。あなたが力を持ったままだと、ヒュー王子を楽々と救えるわね。あなたがダメだった時の保険で聖女カトリーヌ、あなたも連れてこられたのよ。カトリーヌ聖女も最近、力が出なかったんじゃないのかしら?」
ソフィー妃の言葉にカトリーヌは驚いたようにうなずいた。
「食べ物に仕込まれていたのですね!私の母は誰か親切な人が食糧を安く分けてくれたと言っていましたが、そういうカラクリだったのね」
「そうなのよ。カール大帝は、つまり私の夫は、私と離婚して聖女と結婚するつもりよ。ヴァイオレットか、カトリーヌ。あなたたちのうちのどちらかとよ」
カトリーヌとソフィー妃のやり取りが、遠くに聞こえる。
――そんなことでヒューは死んだのか。
「許せないわ」
私の声は震えた。
「ね、それよりあなたの包みは何かしら?」
私は尋ねられて、ハッと自分の手をみた。料理人のベスがくれたチョコレートの包みを手にしばりつけていたのだ。コーヒーはカトリーヌ聖女が持っていてくれた。ワインを入れる革製の水筒に、ベスがコーヒーを入れてくれていた。コーヒーは水とコーヒー豆だから、妙な食材は使われていないだろう。コーヒー豆は海を渡ってきて貿易で入手したものだし、カカオも砂糖もそうだ。
私は包みをあげて、チョコレートを皆に少しずつ分けた。
「あら、これがバリドン公爵家のチョコレートというものね?」
「まあ、食べたかったのよ」
私たちはソフィー妃と一緒にコーヒーの水筒を回し飲みして、チョコレートと一緒に食べた。コーヒーは冷えていたが、興奮させる媚薬のような刺激を私に与えた。
口の中でとろけるチョコレートに、しばし皆呆然としていた。美味しすぎた。頭の中がショートしたような感覚に陥り、どういうわけか、私はショッピングモールのフードコートで目の前に魔導師ジーニンとヒューがいるような錯覚に陥った。
「ステータスオープン」
私は魔導師ジーニンにバイトのタスクとして催促されたような感覚に陥り、無意識に言葉を発していた。
「出たわ!」
私の頭上には数百ものスキルがずらずらと出現した。私はカトリーヌの方を見た。
『Lvl721の解毒術を使いますか?』
「使います」
頭の中で声がして、私は思わず即答していた。
『解毒しました』
「カトリーヌ、あなたの解毒が完了したわ」
私はカトリーヌに静かに告げて、カトリーヌは私に思わず抱きついてきた。
「ヴァイオレット!あなた凄いわ!ステータスオープン!」
カトリーヌの頭上にスキルが燦然と出現するのを私たちは見つめた。私たちは抱き合った。
「助けてくれたお礼に、あなた方二人に今すぐに身を守るバリアを授けます」
私はレキュール辺境伯エリオットにしたように、ソフィー妃と愛人ジゼルにバリアをはった。私はまもなくニホンに戻る。残るのは17歳のヴァイオレットだ。スキルさえ取り戻せば、ヴァイオレットは敵と戦えるはずだ。
ここが、カール大帝の宮殿だということは分かった。犯人は突き止めた、と思う。
「あなたの身近に本当の敵がいる……」
『擬魂追跡術の結果が出ました。レキュール辺境伯を狙ったのは……』
ソフィー妃の言葉と私の頭の中で、レキュール辺境伯を刺した時のジョセフに入っていた魂の追跡結果を伝える言葉が重なって聞こえた。
しかし、最後まで私には聞こえなかった。
◆◆◆
私はゆっくりと目を開けた。目の前に魔導師ジーニンが立っている。アパートのひまわりの花の前に彼は立っていて、横にサミュエルがいた。純斗も憔悴した表情で立っている。
「ヒューは?」
私は掠れ声で聞いた。周りを見渡すと、ヒューの姿は見えない。
「消えました。お嬢様。これはどういうことでしょう?」
魔導師ジーニンは人生1回目の延長上に生きていて、私が人生2回目で変えた結果をまだ知らないようだ。
「ヒュー王子が死んだ。私のせいよ」
私は肩を震わせて泣いた。私が救うべきところで救えなかったのだ。ダメな聖女だ。
「ヴァイオレット、お待たせ」
突然、爽やかな声がして、私は涙にかすんだ目で声の方を見つめた。いつも私を盗撮している中学生がスマホを掲げて立っている。
――嘘でしょう!?この子がヒューなの?
「違う違う、こっちだよ」
その盗撮小僧の中学生の隣に、爽やかなイケメンがスーツを着て立っていた。見たこともない人だ。後に停めてあるのはポルシェの車だ。ヒューのポルシェとは少し違うがとても似ていた。
一陣の風が私たちの間を吹き抜けた。
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