【完結】世界転生バイトですが、裏切られて捨てられた公爵令嬢の聖女と私を煽てるあなたは恋愛詐欺師ですか?知りませんが、幸せな花嫁になるので!

西野歌夏

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第三章 囚われの身から幸せへ

巻き戻し ヴァイオレットSide(2)

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「アルフレッドと私は各地を巡ったのよ。あなたが忙しくて各地を回れなくなったと聞かされて」
「それは本当なんだ。本当に忙しかったんだよ」

「アルフレッドだけど、本当に信頼できるのね?」
「ああ、僕は彼を信じている。彼は王族である身分を隠して海軍にいた時がある。隣国の大学に通う前だよ。アルフレッドも大のビール好きだった。一部の修道院だけで作られたビール、つまり、貴族や富裕層がだけが小麦のビールの販売を独占することになっている我が国の状況と、質の良い北部から仕入れる割高のビール、それらを買えない貧しい人たちがいかがわしい毒草から作られたビールで命を落とす現状を嘆いていた。そういう男だ」

「海軍?」

 純斗がハッとした様子で爽やか美青年のヒューに確認した。

「俺も海軍にいた時代があるんだ。チャールズ・ハワー卿という仲の良い友人がいた。彼は貴族じゃないのに、なぜか振る舞いが貴族っぽくて仲間の皆にそう呼ばれていたんだ」

 純斗が懐かしそうに言った。爽やか美青年はポカンとして純斗を見つめた。

「もしかして……君が海軍のあの出来過ぎエリオットか!?」
「え……なぜそのニックネームを?」

 今度は純斗がポカンとして爽やか美青年のヒューを見つめた。

「海軍のチャールズ・ハワー卿はアルフレッドの別名だ。彼は王族であることを隠して軍務についたんだ。アルフレッドから、出来過ぎ男エリオットの話は何度か聞いたことがある。レキュール辺境伯が海軍の出来過ぎ男エリオットということか!君はラントナス家の最後の王位継承者ということをずっと隠していたよな。その噂を僕が耳にしたのは、聖女ヴァイオレットがレキュール辺境伯と恋仲にあるという噂を聞いたときだった。君はカール大帝とその弟のルノーの、あのハンリヒ兄弟にとっては完璧な政敵になる。君はすごい人気者だから。その事実をずっと隠して生きてきていただろ?」

 爽やか美青年のヒューは参ったというように髪をかきあげた。

「ヴァイオレット、君は見る目がある。このエリオットは本物だ。彼なら間違いない」

 爽やか美青年のヒューは頭を振ってそうつぶやいた。そばでじっと聞いていた魔導師ジーニンがため息をついたかと思うと、パンっ!と両手を叩いた。

「皆様、盛り上がっているところ申し訳ございませんが、善は急げでございます。やり直しは、モートン伯爵領地の山小屋にヴァイオレットお嬢様とレキュール辺境伯が到着するところからスタートで良いですか?」

「いいわ。私は料理人ベスに持たされたチョコレートとコーヒーを持っていたわ。私の力を発揮するのに必要なものは、既に私は持っていたのよ。それを使って今度こそスキルを発動するわ!」

 私は力強く魔導師ジーニンに断言した。

 黒いワゴン車はコンビニの駐車場に停まっていた。

「皆さん互いに手を握り合ってください」

 魔導師ジーニンの言葉で私たち3人は手を握り合った。純斗の手も爽やか美青年になったヒューの手も温かかった。私たちは目を瞑った。


◆◆◆

 目を開けると、あのモートン伯爵領の山小屋が見えたところだった。私は自分の手にチョコレートの包みを持っていて、コーヒーが入った革製の水筒を持っていた。その場でコーヒーをごくごく飲み、チョコレートを一気に食べた。媚薬のような甘さが体み染み渡り、私はフラッと来た。

 心を落ち着かせる。
 ――大丈夫だ。大丈夫だ。私ならできるはずだ。

 深呼吸して目をつぶった。

 ――私は絶対にできる!

「ステータスオープン」

 力強く断言すると、数百というスキルが頭上に出現した。

 私はそばに一緒にいたレキュール辺境伯エリオットの手を思わず握った。

「やったわ!できたわ!」

 エリオットは私の手を引いて、山小屋まで走り始めた。魔導師ジーニンがモートン伯爵家の美しい令嬢二人を押し留めているところだ。

 私たち二人は息を弾ませて一緒に走った。ヒューが山小屋の中で待っているはずだ。


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