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第二章 恋(もうあなたに騙されません)
過去へ ディアーナSide(1)
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1867年6月25日、砂漠のアリス・スペンサー邸宅。
*********
アリス・スペンサー邸宅の書斎で、執事のレイトンは青ざめていた。何と言ってこの場を切り抜けるべきか、頭に何も浮かばないといった表情だ。私の元恋人である自国のアルベルト王太子と、私の現婚約者であるザックリードハルトのルイ皇太子が並びたって現れたのだから、無理もない。
「あなた達がディアーナについてここまで一緒に来てくれたんだな。本当にありがとう。俺がディアーナに婚約を断られた。怒った母上がディアーナにゴビンタン砂漠への追放を命じた。母上は、まさかディアーナがゴビンタン砂漠の方を選ぶとは思わなかったんだ。どうか許して欲しい。母に代わってあなた方に謝りたい。そもそも俺が至らぬせいですまない」
アルベルト王太子は、真っ青になって自分に応対するレイトンたちに、氷の貴公子に相応しい態度で謝罪していた。
「しかし、この館はなんなんだ。あの朝、君がブランドン公爵家の敷地内で動かした家だろう?外に出てみてもいいか?」
アルベルト王太子は書斎から玄関ホールへと向かい、玄関のドアを開けて外に出た。ジャックがすかさずついて行った。そこに、ダニエルも驚愕した表情でついて行った。執事のレイトンは慌てて3人の後を追った。
「これが噂のゴビンタン砂漠の邸宅ですか。皇帝陛下が絶賛していましたが、どういう仕組みなのでしょうか」
ダニエルもキョロキョロしながら外に行った。
「なんて素晴らしいんだっ!ほらみろ、満点の星空で、どこまでも砂漠だぞ」
「すごいですねっ!」
「うわー、本当に砂漠の真ん中にあるんだ」
3人の歓声が聞こえてくるのを聞きながら、私たちは目配せをした。
「行くなら今よ」
ロミィは私にささやいた。
「でも、砂漠に置いておけないわ。昨晩みたいにザックリードハルトに送り返すわ。いえ、エイトレンスの宮殿の方がいいかしら?」
私が唇を噛み締めて、どうすべきか考え込んだ時、テレサが首を振った。
「お嬢様、ここまでお嬢様を追ってこられた王太子様を勝手に飛ばしましたら、旦那様がお叱りを受けるのではないでしょうか。先ほど礼儀正しく王太子様は私たちに謝罪してくださいましたわ」
「そうなのかしら」
「いや、俺は大丈夫だと思うよ。昨晩も急に送り返しただろう?でも、彼に怒った様子はないよ」
「ブランドン公爵家は恨まれたりはしませんでしょうか。仮にもエイトレンスの王太子様ですよ」
私たちがこそこそ話し合っているうちに、アルベルト王太子とジャックとダニエルはすっかり意気投合して戻ってきた。
「素晴らしいな」
「いやあ、砂漠でこれほど快適に過ごせるのは世界でもここ以外にないでしょうな」
「こちらで休暇を取ったら、一生忘れられない日々になりそうです」
「お嬢様の魔力と知識で、このアリス・スペンサー邸宅はお湯も出ますし、最新式の水洗トイレもございます。食料だけはザックリードハルトで調達してきておりまして、快適にこちらで過ごさせていただいております」
執事のレイトンが得意げに説明している声がする。
「で、ロミィ、ここで君は一体何をするつもりだ?」
アルベルト王太子がロミィに聞いた。長い髪を三つ編みにしたロティとアダムは黙って目配せをしている。
「ははーん、言えないような秘密のことか。じゃあ、君と俺の秘密を……「連れてってあげるから、黙って!」よし、いいぞ。どこに行く?」
アルベルト王太子は腕組みをしてロミィを見下ろしていた。どうやら、バレたくない秘密をアルベルト王太子に知られているらしいロミィは仕方ないと肩をすくめた。
「命の保証ないわよ」
「わかった。でも、君たち全員で行くんだな?俺も行くよ。最愛のディアーナが心配だから」
私はため息をついた。
「アルベルトさま。本当に上手く行くのかわからないのです。私も初めてやることでして」
「でも、ルイは……そこの君の未来の夫となると主張している若造は一緒に行くんだろ?」
アルベルト王太子は食い下がった。
「ロティとアダムだけ行かせるわけには行かないから。これは父にも内緒なんだ」
ルイが言うと、ダニエルが不服そうな顔をした。
「そんな危険なことを3人で試されて、もしものことがったら私は皇帝陛下に顔向けできませんっ!私も行きます」
アルベルト王太子は私の方を見つめた。
「ディアーナ、君の魔力を信じている。こんな素晴らしい邸宅を実現するぐらいだ。一瞬でこの邸宅が俺の目の前で消えた時を俺は見ている。だから頼む。君と一緒に行かせて欲しい」
私はため息をついた。
「危険なことに巻き込むわけには行かないのです」
「なぜ?俺のことが好きだから?ルイは危険なことに巻き込んでもよくて、俺はより大切なお方だから、危険な目に合わせたくないということか?」
アルベルト王太子は腕組みしてまた色っぽい目線で私を見ている。
「めんどくさっ!」
私がつぶやくのと、ジャックが瞬時につぶやくのが、内容もタイミングもかぶった。
「あなたのことなんて知りません。私にはルイの方が数千倍大事なのですから」
私は猛然と2階の客間に向かった。走るように階段を駆け上がった。ロミィとアダムは長椅子に乗ったままで廊下を追って飛んできた。ルイも長椅子で飛んでこようとしたが、叫び声がした。
パッと振り返ると、ルイの長椅子にアルベルト王太子とジャックとダニエルがしがみついて、引きずるように廊下を飛んできていた。
私は護符を握りしめて八芒星の中に飛び込んだ。すぐにロミィとアダムの長椅子が飛び込んできて、その後にルイの長椅子が飛び込んできた。私はアルベルト王太子とジャックとダニエルを魔力で振り落とそうとしたが、八芒星の周りですでに空気が渦を巻き始めていて危険だと判断した。
「レディア、プレテリタ!」
――しまった!明確な呪文にはもう一つパーツが足りなかったわ!
失敗に気づいたが、そのまま渦巻きの中に巻き込まれて、私たちは時間軸を移動した。私はロミィとアダムの長椅子に飛び乗った。ルイの長椅子にはアルベルト王太子とジャックとダニエルが乗っていた。
「うわっ!逃げろっ!」
次に気づいた時はルイの叫び声だった。
目の前はジャングルのようで、叫び声に振り返った私たちは皆悲鳴をあげた。そこには絶滅した巨大な爬虫類がいた。遥か昔から巨人の卵や象の骨と思われていたものが、絶滅した巨大な爬虫類が過去地球上にいた痕跡だと知られたのは1822年だ。バイエルン州で翼竜のような鳥類が発見されたのは1860年だ。今の時代、それを見ただけで恐竜だと分かるのは、前世の記憶がある私だけだ。
「トリケラトプス!?」
私は叫びながら、完全に失敗したと悟った。
「ロミィ、まっすぐにだけど高く長椅子を飛ばしてっ!」
ロミィが操作している長椅子は矢のようにジャングルの上を飛んだ。ルイの長椅子も同じように矢のように飛んだ。
「見てっ!空にも怪物がいる!」
アダムが叫び、私たちは頭上に飛ぶ翼竜を見た。
「あれは翼竜よ。昔に戻りすぎたの、ごめんなさい!」
1億年前ぐらいだろうか。
「バケモノだ……」
アルベルト王太子がつぶやく声が聞こえて、私はハッと身震いした。
――やっぱり私はバケモノなんだわ……。
私はずんと気持ちが沈んだ。泣きたくなる。自分が情けなく恥ずかしい存在だと思って、いたたまれない気持ちだ。
「ディアーナのことじゃないっ!あの生物のことだっ!」
ルイの声がして私は振り返った。ルイが煌めく碧い瞳で私をまっすぐに見つめていた。私はアルベルト王太子の顔を見た。彼は口を開けて驚いた表情で、恐竜たちを眺めている。真っ青な顔をして、大人しくしっかりとルイにしがみついていた。
「若造、頼むぞ」
彼は真剣な表情で、長椅子を飛行させているルイに言った。
なんだ、恐竜のことをバケモノと呼んだのか。
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アリス・スペンサー邸宅の書斎で、執事のレイトンは青ざめていた。何と言ってこの場を切り抜けるべきか、頭に何も浮かばないといった表情だ。私の元恋人である自国のアルベルト王太子と、私の現婚約者であるザックリードハルトのルイ皇太子が並びたって現れたのだから、無理もない。
「あなた達がディアーナについてここまで一緒に来てくれたんだな。本当にありがとう。俺がディアーナに婚約を断られた。怒った母上がディアーナにゴビンタン砂漠への追放を命じた。母上は、まさかディアーナがゴビンタン砂漠の方を選ぶとは思わなかったんだ。どうか許して欲しい。母に代わってあなた方に謝りたい。そもそも俺が至らぬせいですまない」
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「しかし、この館はなんなんだ。あの朝、君がブランドン公爵家の敷地内で動かした家だろう?外に出てみてもいいか?」
アルベルト王太子は書斎から玄関ホールへと向かい、玄関のドアを開けて外に出た。ジャックがすかさずついて行った。そこに、ダニエルも驚愕した表情でついて行った。執事のレイトンは慌てて3人の後を追った。
「これが噂のゴビンタン砂漠の邸宅ですか。皇帝陛下が絶賛していましたが、どういう仕組みなのでしょうか」
ダニエルもキョロキョロしながら外に行った。
「なんて素晴らしいんだっ!ほらみろ、満点の星空で、どこまでも砂漠だぞ」
「すごいですねっ!」
「うわー、本当に砂漠の真ん中にあるんだ」
3人の歓声が聞こえてくるのを聞きながら、私たちは目配せをした。
「行くなら今よ」
ロミィは私にささやいた。
「でも、砂漠に置いておけないわ。昨晩みたいにザックリードハルトに送り返すわ。いえ、エイトレンスの宮殿の方がいいかしら?」
私が唇を噛み締めて、どうすべきか考え込んだ時、テレサが首を振った。
「お嬢様、ここまでお嬢様を追ってこられた王太子様を勝手に飛ばしましたら、旦那様がお叱りを受けるのではないでしょうか。先ほど礼儀正しく王太子様は私たちに謝罪してくださいましたわ」
「そうなのかしら」
「いや、俺は大丈夫だと思うよ。昨晩も急に送り返しただろう?でも、彼に怒った様子はないよ」
「ブランドン公爵家は恨まれたりはしませんでしょうか。仮にもエイトレンスの王太子様ですよ」
私たちがこそこそ話し合っているうちに、アルベルト王太子とジャックとダニエルはすっかり意気投合して戻ってきた。
「素晴らしいな」
「いやあ、砂漠でこれほど快適に過ごせるのは世界でもここ以外にないでしょうな」
「こちらで休暇を取ったら、一生忘れられない日々になりそうです」
「お嬢様の魔力と知識で、このアリス・スペンサー邸宅はお湯も出ますし、最新式の水洗トイレもございます。食料だけはザックリードハルトで調達してきておりまして、快適にこちらで過ごさせていただいております」
執事のレイトンが得意げに説明している声がする。
「で、ロミィ、ここで君は一体何をするつもりだ?」
アルベルト王太子がロミィに聞いた。長い髪を三つ編みにしたロティとアダムは黙って目配せをしている。
「ははーん、言えないような秘密のことか。じゃあ、君と俺の秘密を……「連れてってあげるから、黙って!」よし、いいぞ。どこに行く?」
アルベルト王太子は腕組みをしてロミィを見下ろしていた。どうやら、バレたくない秘密をアルベルト王太子に知られているらしいロミィは仕方ないと肩をすくめた。
「命の保証ないわよ」
「わかった。でも、君たち全員で行くんだな?俺も行くよ。最愛のディアーナが心配だから」
私はため息をついた。
「アルベルトさま。本当に上手く行くのかわからないのです。私も初めてやることでして」
「でも、ルイは……そこの君の未来の夫となると主張している若造は一緒に行くんだろ?」
アルベルト王太子は食い下がった。
「ロティとアダムだけ行かせるわけには行かないから。これは父にも内緒なんだ」
ルイが言うと、ダニエルが不服そうな顔をした。
「そんな危険なことを3人で試されて、もしものことがったら私は皇帝陛下に顔向けできませんっ!私も行きます」
アルベルト王太子は私の方を見つめた。
「ディアーナ、君の魔力を信じている。こんな素晴らしい邸宅を実現するぐらいだ。一瞬でこの邸宅が俺の目の前で消えた時を俺は見ている。だから頼む。君と一緒に行かせて欲しい」
私はため息をついた。
「危険なことに巻き込むわけには行かないのです」
「なぜ?俺のことが好きだから?ルイは危険なことに巻き込んでもよくて、俺はより大切なお方だから、危険な目に合わせたくないということか?」
アルベルト王太子は腕組みしてまた色っぽい目線で私を見ている。
「めんどくさっ!」
私がつぶやくのと、ジャックが瞬時につぶやくのが、内容もタイミングもかぶった。
「あなたのことなんて知りません。私にはルイの方が数千倍大事なのですから」
私は猛然と2階の客間に向かった。走るように階段を駆け上がった。ロミィとアダムは長椅子に乗ったままで廊下を追って飛んできた。ルイも長椅子で飛んでこようとしたが、叫び声がした。
パッと振り返ると、ルイの長椅子にアルベルト王太子とジャックとダニエルがしがみついて、引きずるように廊下を飛んできていた。
私は護符を握りしめて八芒星の中に飛び込んだ。すぐにロミィとアダムの長椅子が飛び込んできて、その後にルイの長椅子が飛び込んできた。私はアルベルト王太子とジャックとダニエルを魔力で振り落とそうとしたが、八芒星の周りですでに空気が渦を巻き始めていて危険だと判断した。
「レディア、プレテリタ!」
――しまった!明確な呪文にはもう一つパーツが足りなかったわ!
失敗に気づいたが、そのまま渦巻きの中に巻き込まれて、私たちは時間軸を移動した。私はロミィとアダムの長椅子に飛び乗った。ルイの長椅子にはアルベルト王太子とジャックとダニエルが乗っていた。
「うわっ!逃げろっ!」
次に気づいた時はルイの叫び声だった。
目の前はジャングルのようで、叫び声に振り返った私たちは皆悲鳴をあげた。そこには絶滅した巨大な爬虫類がいた。遥か昔から巨人の卵や象の骨と思われていたものが、絶滅した巨大な爬虫類が過去地球上にいた痕跡だと知られたのは1822年だ。バイエルン州で翼竜のような鳥類が発見されたのは1860年だ。今の時代、それを見ただけで恐竜だと分かるのは、前世の記憶がある私だけだ。
「トリケラトプス!?」
私は叫びながら、完全に失敗したと悟った。
「ロミィ、まっすぐにだけど高く長椅子を飛ばしてっ!」
ロミィが操作している長椅子は矢のようにジャングルの上を飛んだ。ルイの長椅子も同じように矢のように飛んだ。
「見てっ!空にも怪物がいる!」
アダムが叫び、私たちは頭上に飛ぶ翼竜を見た。
「あれは翼竜よ。昔に戻りすぎたの、ごめんなさい!」
1億年前ぐらいだろうか。
「バケモノだ……」
アルベルト王太子がつぶやく声が聞こえて、私はハッと身震いした。
――やっぱり私はバケモノなんだわ……。
私はずんと気持ちが沈んだ。泣きたくなる。自分が情けなく恥ずかしい存在だと思って、いたたまれない気持ちだ。
「ディアーナのことじゃないっ!あの生物のことだっ!」
ルイの声がして私は振り返った。ルイが煌めく碧い瞳で私をまっすぐに見つめていた。私はアルベルト王太子の顔を見た。彼は口を開けて驚いた表情で、恐竜たちを眺めている。真っ青な顔をして、大人しくしっかりとルイにしがみついていた。
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