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11.カメラアプリ(颯介)

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連れて行かれた星は、未来の地球だった。

 確かに大気圏に突入したなーとは思った、思った。一瞬、あれ、地球じゃない?とブワーッとした感動が広がるのを感じてしまった。これぞ帰還と言うやつかーと思ってぬか喜びしてしまった。キムタクが主演した映画はなかったか?さらば宇宙戦艦大和的な?ちょっと違うか。。

 なのに、外を見るとがっくりだった。
 何じゃそりゃ。だって、どう見ても、奇妙なロボットがわざわざブラックホールを抜けて連れて行った星とやらは、外を見ると恐竜だらけじゃん。どう見ても数億年前の地球じゃないのかな・・・違うの?

 これが未来って地球はまた恐竜に支配されると言うありがちなホラーなのか?猿の世界的な、大どんでん返し的な?人類よ・・聞いていますか。俺たちの星はまた数億年前に戻るらしい・・・

 中世ヨーロッパの平民らしき3人の子供たちは、恐竜という言葉が理解出来ないらしい。怪物と言って怯えている。恐竜でも怯えることには間違いないけれどもね。

 夏休みに、憧れの田中さんに偶然会いにニューヨークに行こうという発想から初海外旅行一人旅を計画して、行動に移した俺への罰なのか?そんなに罰当たりなこと?王子役のキラッキラの子は(いや、もうハリウッド映画という設定はあり得ないんだが)、平然と宇宙船の外から窓を見ている。というか、この子は本物の未来の王だ、きっと。貫禄が半端ない。

 そして、俺たちは、奇妙なロボットによって外に放り出された。首の長い翼竜がウヨウヨうろついていた。こいつらは草食なのか?肉食なのか?もう分かんない・・・

 とにかく3人の平民の子が怯える様子に、昔とったきねづか的な、バイト店長的な根性が俺の中でふつふつと湧き上がった。
 よう、古代か未来か知らないんだが、そこの翼竜どもよ、ケンタッキーフライドチキンで4年鍛えたバイトリーダーを舐めてくれんなよ、あん?と言う感じだ。ちょっとヤクザ風に心の中でいきがってみた。らしくもなく。

 そして、エンジン全開になった俺は、頭のバングルにつけられたカメラのボタンを押しまくった。カシャカシャ音がして、連写しまくった。

 要するに、木の実を撮って、「龍者の実」とやらをカメラアプリに認識させればミッション成功なんでしょう?はい、わかりました。やってやりましょう。この俺が。

「違うかー!」
「これでもないかー!」

 俺はとにかく必死でその辺りの木の実にカメラを向けまくった。そして、気付けば子供たちの世話を甲斐甲斐しく焼きながら、非常に的確な指示を出して、カメラアプリの使い方をレクチャーしていた。

 ああ!

 俺って飛べるんだね!と思ったのは、木に少し登って木の実の写真を撮って飛び降りたとき、下に寝そべっていたらしい翼竜の首に飛び乗ってしまった瞬間だ。翼竜はびっくりして起き上がったが、俺は気づいたら翼竜の首に守備よくまたがっていた。そして文字通り、大空を羽ばたいた。翼竜の首に必死の形相でまたがって。

「飛べるんかーい!」
 
 嬉しくて叫んだ。3人の子供たちにもすすめた。めっちゃ楽しい。完全にこの瞬間は憧れの田中さんのことは頭から消えた。もう、地球のことは思い出せない。楽しすぎる、この龍者の木の実探し!

 でも、3人の中世ヨーロッパの平民の子供たちも一緒になって、翼竜に乗って楽しく木の実撮影会をやっていたとき、フッと頭に浮かんだ文字があった。「龍と忍者の国」という文字だ。龍は分かる。目の前にいる翼竜じゃない?そうだよね?でも、忍者は、あれって忍者がいるっていう意味じゃない?この星に。。

 俺はそのことを思い当たって、はっとして辺りを見渡した。
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