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1. 標的の選別 時は数億年先の地球
第15話 敵か味方か(沙織)
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「叫ぶと命はない。」
氷のように冷たい声で、牡丹がそう言うのが私の耳に聞こえる。
男たちの全身から悪意を感じて、私はゾワリとした底知れぬ恐怖を感じてふるえが止まらなくなる。
その間も恐車はどこかへ走りつづけている。
「いいわ。」
無言の男たちに牡丹がそう言うのが聞こえる。
「こんな何の取り柄もない者が帝のお妃候補なんて、ふざけすぎているわ。」
牡丹がそうはっきり言うのが聞こえて、私は悲しくて泣きたくなった。
私は何とかしなければとあせった。どうしようもなく涙が出てくる。相手は忍びの中でも強烈な力を持った相手で、私と五右衛門さんのような奉行所勤めがかなう相手ではない。
しばらくして恐車は走りつづけているのに、扉が開く音がして、男たちの気配|が消えた。外に飛びだしたのか?
私は五右衛門さんに念じつづける。
「何とかせねば!」
みじろぎせずに密かに自分の両手を縛っている縄に集中する。脱出方法を考えなければ。
けれども、驚くことが起きた。
男たちの気配が消えてしばらくすると、足元で固く結ばれた布を縛る紐が解かれたのだ。牡丹からする柔らかい香りが私の鼻をかすめる。
袋が取られて手足を縛っていた紐がスルスルと解かれる。
貴和豪牡丹は素早く私の耳元に口を近づける。
「いい?トラビコンよ。あなた持っているでしょう?」
袋が取られて、急に明るくなった視界に目を細める私に、グッと貴和豪牡丹は顔を近づけて言った。
牡丹の漆黒の髪は、さらに乱れていた。かなりの速さで私たちの拘束を解いたからであろう。
あまりのことに目を見張る私と五右衛門さんは、お互いに顔を見合わせる。
「トラビコン。早く!」
それだけ言うと、金茶色の振袖姿の貴和豪牡丹はあっと言う間に外に飛びだした。
私も慌てて続いて飛びだそうとすると、恐車を引いていたはずのレエリナサウナが一匹だけになってしまったのに気づいてはっとする。男たちと牡丹はそれに乗って逃げたと気づいた。
私はそこから早かった。
忍び服の袂から、ゲームで手に入れたトラビコンの粉を取りだし、五右衛門さんの舌にすりつけ、自分の舌にすりつける。
「飲みこんで!」
私が五右衛門さんにそう言った瞬間、猛烈なスピードで走っていた恐車は傾き、橋から真っさかさまに落下した。
ゆっくりと、周囲の世界が傾いて落ちていくのが分かる。
私と五右衛門さんはお互いの顔を見あわせると互いに同時に叫んだ。
「飛び降りましょう!」
「飛び降りるんだ!」
私と五右衛門さんは真っさかさまに川に飛びこんだ。車の端を足で蹴って勢いつけて外に飛びだし、数回転し、そのまま川に飛びこんだ。
奉行所勤めの忍びでも、寺子屋時代から鍛えられた俊敏さはそこなわれていない。
川の水は冷たかった。
あの高さから落ちたならば、本当に袋詰めにされたままならば、簡単には浮かびあがることはできないであろう。
私と五右衛門さんは身振りで合図をして水中に身をひそめた。
トラビコンの粉のおかげで水中でエラ呼吸できる。
命が狙われるとは、このことか。
私は水中で目をあけて、様子をうかがいながら帝の言葉を思い出した。
氷のように冷たい声で、牡丹がそう言うのが私の耳に聞こえる。
男たちの全身から悪意を感じて、私はゾワリとした底知れぬ恐怖を感じてふるえが止まらなくなる。
その間も恐車はどこかへ走りつづけている。
「いいわ。」
無言の男たちに牡丹がそう言うのが聞こえる。
「こんな何の取り柄もない者が帝のお妃候補なんて、ふざけすぎているわ。」
牡丹がそうはっきり言うのが聞こえて、私は悲しくて泣きたくなった。
私は何とかしなければとあせった。どうしようもなく涙が出てくる。相手は忍びの中でも強烈な力を持った相手で、私と五右衛門さんのような奉行所勤めがかなう相手ではない。
しばらくして恐車は走りつづけているのに、扉が開く音がして、男たちの気配|が消えた。外に飛びだしたのか?
私は五右衛門さんに念じつづける。
「何とかせねば!」
みじろぎせずに密かに自分の両手を縛っている縄に集中する。脱出方法を考えなければ。
けれども、驚くことが起きた。
男たちの気配が消えてしばらくすると、足元で固く結ばれた布を縛る紐が解かれたのだ。牡丹からする柔らかい香りが私の鼻をかすめる。
袋が取られて手足を縛っていた紐がスルスルと解かれる。
貴和豪牡丹は素早く私の耳元に口を近づける。
「いい?トラビコンよ。あなた持っているでしょう?」
袋が取られて、急に明るくなった視界に目を細める私に、グッと貴和豪牡丹は顔を近づけて言った。
牡丹の漆黒の髪は、さらに乱れていた。かなりの速さで私たちの拘束を解いたからであろう。
あまりのことに目を見張る私と五右衛門さんは、お互いに顔を見合わせる。
「トラビコン。早く!」
それだけ言うと、金茶色の振袖姿の貴和豪牡丹はあっと言う間に外に飛びだした。
私も慌てて続いて飛びだそうとすると、恐車を引いていたはずのレエリナサウナが一匹だけになってしまったのに気づいてはっとする。男たちと牡丹はそれに乗って逃げたと気づいた。
私はそこから早かった。
忍び服の袂から、ゲームで手に入れたトラビコンの粉を取りだし、五右衛門さんの舌にすりつけ、自分の舌にすりつける。
「飲みこんで!」
私が五右衛門さんにそう言った瞬間、猛烈なスピードで走っていた恐車は傾き、橋から真っさかさまに落下した。
ゆっくりと、周囲の世界が傾いて落ちていくのが分かる。
私と五右衛門さんはお互いの顔を見あわせると互いに同時に叫んだ。
「飛び降りましょう!」
「飛び降りるんだ!」
私と五右衛門さんは真っさかさまに川に飛びこんだ。車の端を足で蹴って勢いつけて外に飛びだし、数回転し、そのまま川に飛びこんだ。
奉行所勤めの忍びでも、寺子屋時代から鍛えられた俊敏さはそこなわれていない。
川の水は冷たかった。
あの高さから落ちたならば、本当に袋詰めにされたままならば、簡単には浮かびあがることはできないであろう。
私と五右衛門さんは身振りで合図をして水中に身をひそめた。
トラビコンの粉のおかげで水中でエラ呼吸できる。
命が狙われるとは、このことか。
私は水中で目をあけて、様子をうかがいながら帝の言葉を思い出した。
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