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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第22話 二度目のデートもゲームで(沙織)

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「父上、母上、兄上、姉上、昨日帝にお会いいたしました。」
 私は朝食の席で家族にそう告げた。朝食の空気が一瞬でこおりついた。

「いつ?」
「昨日です。」
「どうやって?」
奉行所ぶぎょうしょの上司のところに、帝から連絡をいただきました。同僚の五右衛門さんと帝に会いに行きました。」

 父が、ちょうどお箸で持っていた薄黄色のふわふの卵焼きを驚きのあまりに落とした。
「いや、失礼。あまりに驚いたもので。」
「あなたったら。」
「で、帝はどんなお方だったの?」
「姉上、意外と良いかたでございました。」
「どういうふうに?」

 それは言えない。おそわれて殺されそうになって、運よく逃げびたところで帝が助けに空から舞いりてきて、二人でゲームに参加して、などとは決して言えない。

「たいへんお優しく良いお方にお見受けいたしました。とても優しくしていただきました。」
 私はなんとか誤魔化ごまかした。

 姉の琴乃の視線しせんいたい。
「何かいいことあった?」
「いいえ、そんなことは。まだ。」
「まだ?」

 私は「初めてのデートみたいなものだ」と言われたことを思い出して、頬がゆるむのを抑えられなかった。

 雪の中世ヨーロッパで城の上空を、プテラノドンとシノマクロプス・ボンディのコンビで仲良く飛んで初デートしたのです。私が心の中で姉上に言いたかったのはこの言葉だ。

 五右衛門さんのような読唇術どくしんじゅつを私の家族は使えない。心の中で言うのは問題ないはずだ。
「なーに、ニヤニヤしちゃって。沙織、頬が赤いですよ。」
 姉の琴乃はうたがぶかそうな目を私に向けて、言った。

 気づくと、父も母も兄も権太も、私の顔を不思議そうな表情で眺めていた。

 まずい。対面した初日が初デートになるのはまるでではないか。かっとんだ初デートだった。親に言える内容のデートではない。いろんな意味で。キスもしていないし抱きあってすらない。でもある意味それよりすごいことをしてしまった気がする。

 私は咳払せきばらいして、素早く朝食をとりおえた。そして、セグウェイでいつものように奉行所ぶぎょうしょに向かった。

 

 仕事を終えた私は、帝の城にやってきていた。
 
 帝との約束通り、またやって来たのだ。五右衛門ごえもんさんもやってきた。私たち二人とも、大きな城門をくぐる時にはもう、緊張などしていなかった。昨日とは大違いである。

 涼しい風がほんのり吹き、辺りになんとも言えぬかんばしい花の香がただよっていた。

 私たちは、立派な日本庭園の木立こだち木立こだちに囲まれた、少し影になった芝にたたずむしていた。

 帝にお会いして半刻はんときが過ぎる頃には、うつわしい庭の一画は、熱い熱血指導がくりひろげられる教場きょうじょうとなっていた。コスプレマニアは、コスプレ指導のためには、非常に厳しく熱くなれる心を持っているのだ。

「五右衛門さんの姿を見てごらんなさい!わか!」
 私は、帝の隣で完璧なプテラノドンにコスプレした五右衛門さんを指さして言う。

「五右衛門さんのプテラの足の色を見てごらんんなさい!違う!若!もっとく!」私は厳しい指導を帝に繰り返して差し上げた。

 帝のことは、「わか」とお呼びすることになった。帝がご自身もゲームに本格的に参加したいというので、完璧なプテラノドンに変身できるように私たちは帝を指導しどうすることを頼まれた。

「沙織さん!今度はおぬしがお手本やってみて!若、!」
 五右衛門さんも、なかなかスパルタでのように帝をした。

 なにせ、

 帝のゲームになんとか参加したいという心意気こころいきも相当なものだ。秀麗しゅうれいな顔立ちを凛々りりしくゆがゆがめながらも、私たちの厳しい指導に根を上げずについてきた。私は、密かに、なんだかそのお姿がとても可愛らしく思えた。

「二度目のデートも、ゲームで。」
 城をして帰る時に、小さな声でそう言われた。

 そう言われて天にものぼる心地だった。私は驚きのあまり、こしを抜かしそうになり、その場に倒れ込みかけた。帝に腕をとられて支えてもらった。

「大丈夫か。」

 なんでしょう、この胸の奥がこうと、と何か暖かいものに包まれたような気持ちになるのは。

 私は今までこの感情を知らなかった。

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