18 / 51
1 あなた裏切ったわね
新たな恋 アルベルト王太子Side(2)
しおりを挟む
春が近づき、いざザックリードハルトに出発する日になった。ウォーターミー駅に行った俺は、突然目の前に現れた息を切らして急いでいる女性に目を奪われた。
ピンクブロンドの髪、くるくるとよく動く茶色い瞳、誠実そうな唇。
最初は何とも思わなかったが、彼女が浮気男から逃げていると分かると、少しだけ彼女の顔をよく見つめてみたのだ。そして、なぜか俺の心が動いた。
なぜ、助けてあげたいと思ったのか分からないが、俺は彼女を助けてあげたいと思った。
「追われているんだな?」
「はい……」
「そうか。ここまで追ってきたなら、彼はきっと君を諦めないな」
「そ……そうですか」
「私も経験からわかる」
俺は彼女の置かれた苦境が理解できた。浮気がバレた時、俺は最愛の人を追いかけて行ったから。だが、その女性は誰も触れなかったことに平気で触れた。
「経験から分かるとは、ブランドン公爵令嬢のことでしょうか」
「はっ!?」
「君は……」
「大変申し訳ございませんっ!失礼なことを……」
「あぁ、君は本当に……」
浮気男から逃げているフローラと名乗る伯爵令嬢は、いとも簡単に俺の心の垣根を破った。
「乗るぞっ!」
「おいで!」
王家が貸切にした車両がある列車に、俺はフローラを誘導した。
食堂車で彼女と話している時、久しぶりに心がウキウキしてきて、目の前にいる彼女に何もかもさらけ出して話せる自分に気づいた。破局する前のディアーナにもこんなことはなかったと思う。
俺はどこかディアーナには格好つけていたところがあり、裏で隠れて最低なことをしていた。
だが、目の前に突然現れたフローラ・ガトバン伯爵令嬢には誠実でいたいと心の底から願った。彼女には変なことでも考えたことや思ったことを、正直に何もかも話せる気がした。
華やかな食堂車で周囲の目線は強烈な興味を持って、フローラを観察していた。
俺はそれを良いと思ったのだ。
――みんな、俺が彼女とデートしていると思っていいから!
――俺がそんなことを思うなんて、信じられない!
クリス・オズボーンと婚約破棄したいならば、自分が一役買うと伝えたが、本心だった。
「君が婚約解消したいなら、一役買う。ディアーナと別れてから、大勢の人に注目を浴びながら、私がレディと食事をしたのは君が初めてなんだ。多分1年ぶりぐらいだ」
その後、彼女が古物商からもらったという時計を腕にはめた直後、列車は脱線事故を起こした。
たくさんの人たちが亡くなり、目が覚めた時には621人もの人たちが亡くなったと聞かされた。フローラは車椅子に乗っていた。
途方もない結果に、俺は打ちのめされた。
結論から言うと、俺の頭の中からディアーナが消えている時間が多かった。特に時間を事故の前に巻き戻して戻ってこれた後は、ディアーナはずっと消えていると言っても良かった。
――嘘だろう?
突然周りに光が届き始めて、世界が色鮮やかに輝いて見えた。クリス・オズボーンが婚約破棄されて、俺は心底嬉しかった。
オズボーンとメイドの修羅場は、トラウマになりそうなほど最悪な修羅場だった。
修羅場の後、フローラはぐったりとしていて、俺は事件の余波が怖かったから、王宮に彼女を馬車で運んだ。
この行動が意味するところは一つだ。
ブランドン公爵令嬢ディアーナですら、王宮に運ばれて泊まる部屋を用意されたことはなかった。
――待てよ?
――俺はどうやらフローラ・ガトバン伯爵令嬢に本気のようだ。
――絶対に彼女を守りたい。守ってみせる。
――俺の方を振り向いてもらえないかもしれないが、とにかく傷ついた彼女を守り抜こう。
修羅場の後、フローラがクリスと別れることは決定的になった。俺がフローラに抱く気持ちも決定的になった。
「ディアーナのことより、君が気になるんだ」
うとうととし始めたフローラはとても愛らしかった。俺はフローラにそっと囁いた。
「氷の貴公子の異名を返上してでも、君を守り抜くよ」
思わずフローラの額にキスをした。
俺の胸によりかかってぐっすりと眠っているフローラは、心に何とも言えない温かい気持ちを与えてくれた。生き返ったような気持ちだった。
ピンクブロンドの髪、くるくるとよく動く茶色い瞳、誠実そうな唇。
最初は何とも思わなかったが、彼女が浮気男から逃げていると分かると、少しだけ彼女の顔をよく見つめてみたのだ。そして、なぜか俺の心が動いた。
なぜ、助けてあげたいと思ったのか分からないが、俺は彼女を助けてあげたいと思った。
「追われているんだな?」
「はい……」
「そうか。ここまで追ってきたなら、彼はきっと君を諦めないな」
「そ……そうですか」
「私も経験からわかる」
俺は彼女の置かれた苦境が理解できた。浮気がバレた時、俺は最愛の人を追いかけて行ったから。だが、その女性は誰も触れなかったことに平気で触れた。
「経験から分かるとは、ブランドン公爵令嬢のことでしょうか」
「はっ!?」
「君は……」
「大変申し訳ございませんっ!失礼なことを……」
「あぁ、君は本当に……」
浮気男から逃げているフローラと名乗る伯爵令嬢は、いとも簡単に俺の心の垣根を破った。
「乗るぞっ!」
「おいで!」
王家が貸切にした車両がある列車に、俺はフローラを誘導した。
食堂車で彼女と話している時、久しぶりに心がウキウキしてきて、目の前にいる彼女に何もかもさらけ出して話せる自分に気づいた。破局する前のディアーナにもこんなことはなかったと思う。
俺はどこかディアーナには格好つけていたところがあり、裏で隠れて最低なことをしていた。
だが、目の前に突然現れたフローラ・ガトバン伯爵令嬢には誠実でいたいと心の底から願った。彼女には変なことでも考えたことや思ったことを、正直に何もかも話せる気がした。
華やかな食堂車で周囲の目線は強烈な興味を持って、フローラを観察していた。
俺はそれを良いと思ったのだ。
――みんな、俺が彼女とデートしていると思っていいから!
――俺がそんなことを思うなんて、信じられない!
クリス・オズボーンと婚約破棄したいならば、自分が一役買うと伝えたが、本心だった。
「君が婚約解消したいなら、一役買う。ディアーナと別れてから、大勢の人に注目を浴びながら、私がレディと食事をしたのは君が初めてなんだ。多分1年ぶりぐらいだ」
その後、彼女が古物商からもらったという時計を腕にはめた直後、列車は脱線事故を起こした。
たくさんの人たちが亡くなり、目が覚めた時には621人もの人たちが亡くなったと聞かされた。フローラは車椅子に乗っていた。
途方もない結果に、俺は打ちのめされた。
結論から言うと、俺の頭の中からディアーナが消えている時間が多かった。特に時間を事故の前に巻き戻して戻ってこれた後は、ディアーナはずっと消えていると言っても良かった。
――嘘だろう?
突然周りに光が届き始めて、世界が色鮮やかに輝いて見えた。クリス・オズボーンが婚約破棄されて、俺は心底嬉しかった。
オズボーンとメイドの修羅場は、トラウマになりそうなほど最悪な修羅場だった。
修羅場の後、フローラはぐったりとしていて、俺は事件の余波が怖かったから、王宮に彼女を馬車で運んだ。
この行動が意味するところは一つだ。
ブランドン公爵令嬢ディアーナですら、王宮に運ばれて泊まる部屋を用意されたことはなかった。
――待てよ?
――俺はどうやらフローラ・ガトバン伯爵令嬢に本気のようだ。
――絶対に彼女を守りたい。守ってみせる。
――俺の方を振り向いてもらえないかもしれないが、とにかく傷ついた彼女を守り抜こう。
修羅場の後、フローラがクリスと別れることは決定的になった。俺がフローラに抱く気持ちも決定的になった。
「ディアーナのことより、君が気になるんだ」
うとうととし始めたフローラはとても愛らしかった。俺はフローラにそっと囁いた。
「氷の貴公子の異名を返上してでも、君を守り抜くよ」
思わずフローラの額にキスをした。
俺の胸によりかかってぐっすりと眠っているフローラは、心に何とも言えない温かい気持ちを与えてくれた。生き返ったような気持ちだった。
677
あなたにおすすめの小説
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
売られた先は潔癖侯爵とその弟でした
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。
潔癖で有名な25歳の侯爵である。
多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。
お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
犬猿の仲の政略結婚なのに、旦那様が別れてくれません。
屋月 トム伽
恋愛
没落寸前のせいで、次の爵位を継ぐ者が次から次へと放棄していき、縁談すらもない没落寸前のウォールヘイト伯爵家の最後の一人になったティアナ。仕方なく殿下に縁談をお願いすると、犬猿の仲のセルシスフィート伯爵家の次期伯爵ウォルト様との結婚が決ってしまった。
しかし、、ウォルト様の父であるセルシスフィート伯爵がティアナに提案してきたのは、三年だけの結婚。結婚相手の次期セルシスフィート伯爵であるウォルト様は、隣国に旅立ってしまい、不在のままでの一人結婚生活が始まった。
それから、一年以上過ぎると、急遽隣国から帰還したウォルト様。彼は、結婚生活を続けてほしいと提案してきて……。
※カクヨム様では完結済み
【完結】王子から婚約解消されましたが、次期公爵様と婚約して、みんなから溺愛されています
金峯蓮華
恋愛
ヴィオレッタは幼い頃から婚約していた第2王子から真実の愛を見つけたと言って、婚約を解消された。
大嫌いな第2王子と結婚しなくていいとバンザイ三唱していたら、今度は年の離れた。筆頭公爵家の嫡男と婚約させられた。
のんびり過ごしたかったけど、公爵夫妻と両親は仲良しだし、ヴィオレッタのことも可愛がってくれている。まぁいいかと婚約者生活を過ごしていた。
ヴィオレッタは婚約者がプチヤンデレなことには全く気がついてなかった。
そんな天然気味のヴィオレッタとヴィオレッタ命のプチヤンデレユリウスの緩い恋の物語です。
ゆるふわな設定です。
暢気な主人公がハイスペプチヤンデレ男子に溺愛されます。
R15は保険です。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】
日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。
偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。
待鳥園子
恋愛
同じ集合住宅で同じ階に住んでいた美形魔法使い。たまに帰り道が一緒になるだけなんだけど、絶対あの人私を熱烈な迷惑ファンだと勘違いしてる!
誤解を解きたくても、嫌がられて避けられている気もするし……と思っていたら、彼の部屋に連れ込まれて良くわからない事態になった話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる