私は結婚前から邪魔者だったのね!?お金以外は必要とされなかった妻でしたが、貧乏男爵家の再興が私の運命でした——そして嫁ぎ先は王家になりました

西野歌夏

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番外編

グレイSide 番外編——初恋と、僕の妻を抱きたいんだ

グレイSide

パレードは大成功だった。
私の隣でティアラをしたキャロラインは、幸せそうな笑顔をロンドンの人々に振り撒いていた。

あぁ、14歳の時にリッチモンド・ロッジで開催された母の誕生日パーティで出会って以来の私の初恋は、ようやく実ったのだ。

王妃の誕生日パーティは、プリンス・エドワードとしては必ず出席しなければならないものだ。母の誕生日はもちろん嬉しい。私はその頃から、大好きな母のためなら、何でもしようと思っていた。

だが、プリンス・エドワードの肩書きは、重圧を伴う。未来の国王としての重責を担うに足りる人物かを、常に周囲から見張られているような気分になっていて、その頃は鬱々とした日々を送っていた。


「ねぇ、そこのあなた、そんな所に隠れて何をしているの?」

私は目を上げた。愛くるしい顔をして、ブロンドの髪をめちゃくちゃにした女の子が立っていた。12歳ぐらいだろうか?

「お嬢様?」

遠くで彼女を呼んでいるらしいメイドらしき者の声がした。


「しぃー。ここ、広いでしょう?この庭でネルとかくれんぼしているの」
「君、誰?」

「キャロライン・シーブルックよ」

シーブルック家?
はて……そんな名前の貴族は聞いたこともない。

「なんで隠れているの?あなたもかくれんぼしている?」
「あぁ、まあ、そんなとこ。従者から隠れている」
「うわっ、一緒だね!」

「……ちょっと違うけど」
「本当の理由は何?」

その時、なぜか、母にも言えない心のうちを素直に言葉にできた。

「僕の未来は決まっていて、重圧を感じる」

女の子はにっこり笑って、両手を日にかざした。
「ほら、お日様が眩しすぎる時は、こうして手をかざすでしょう?」

ね!と私を見る少女。

「未来も同じよ。眩しすぎるなら、自分で形を変えればいいの」

何が言いたいのか分からない。

「未来は自分の手で描き変えればいいわ。眩しすぎる未来があるなら、ちょっと手をかざして、自分の好きな明るさに変えられるわ。それに……」

秘密のことを打ち上げるように、キャロラインは私の耳元に囁いた。

「目に見えるできる事と、本当にできる可能性があることはいつも違うのよ」

――え?

「……ちょっとだけ教えてあげる。貴族でなくても、私が王妃様のパーティーに招待されるなんて、先祖の誰も想像しなかったと思うのよ!」


「キャロライン様!」

またメイドらしき者がキャロラインを呼ぶ声がした。

ふふっと少女は笑うと、私にウィンクをした。

「見つかっちゃうわ。そろそろ行くわね。あなたも従者に見つかってあげなさいっ!あなたの好きなことができる方法は、目に見えているところじゃない所に必ずある!」

キャロラインはブロンドの髪を靡かせて走って去って行った。

「まぁ、お嬢様、一体どこにいらしたんですか?私はもう、肝を冷やしましたよ……」

「ネルったら……心配性ね」

キャロラインとメイドの会話が聞こえてきた。



少女は私の心を打ち抜いたのを知らない。

キャロライン・シーブルックは、こうして私の人生に登場したのだ。

母が陥れられて病んでしまった時、私の心には、いつもキャロラインの言葉が蘇った。

目に見えるできる事と、本当にできる可能性があることはいつも違うのよ。

ハロウゲイトが母を陥れたはずだが、ハロウゲイトの尻尾は表からはつかめなかった。私はハロウゲイトがブライトン港での密輸事業に乗り出そうと虎視眈々と狙っている噂をきき、彼との接触を見据えてブライトンの街に身分を変えて潜入した。


だが、セント・ニコラス協会で、成長したキャロライン・シーブルックを偶然見た時、私の初恋は本物の恋に変わった。


今、ようやく、その彼女が私の妻になった。

私は微笑むキャロラインの手をとり、パレードから凱旋して、プリンス・エドワードのロンドン住まいの宮殿としているカーリントン・ハウスの廊下を歩いていた。

「プリンス・エドワードの妻になった気分はどう?」

「まさかあなたが王子殿下だとは思わなかったから……でも、シンデレラの気分のままよ。泥だらけでびしょ濡れの私をメイウェアの薬舗の前で、あの朝見つけてくれた時も、その前の仕立て屋の前で大泣きする私を見つけた時から、あなたは最高の王子様さまだわ」

「私たちは手をつなぐ以外のこともできるようになったって気づいている?」

「……もちろん、あなた。法的にも夫になった。この国で一番の男性かもしれないけれど、唯一私の心も体も捧げる男性になったのよ」

固く結んだクラバットを緩めた。

「キャロライン、もう待ちきれないんだ。僕の妻をだきたいんだ」

私は甘く囁くと、花嫁姿のキャロラインを横抱きにした。

「君も待ちきれない?」

「……もちろん……そうよ……ずっとずっとこの3年間ずっと……」

頬を上気させたキャロラインは最高に愛らしく、艶っぽかった。

それだけで十分だった。

私は合図をして、従者もメイドも全て下がらせた。世継ぎを作ることは王家の義務だ。つまり今夜、誰にも私を止める権利はない。私のやりたいことは、国家の利益として最優先される位置にやっときたのだ。

――あぁ!
――最高の気分だ……。
――信じられない……。
 
寝室に続く廊下を私の妻を抱いて進んだ。

ティアラをそっと外す。
彼女の髪を振りほどく。
花嫁衣装をそっと脱がせる。

クラバットを外し、シャツを脱ぎ捨てた。

私たちは、ようやく、一つになれる。

真っ赤になったキャロラインは愛らしかった。初めて見るキャロラインの姿は信じられないほどの輝きを放っていた。

私は彼女を抱き上げ、「一緒に入ろう」そうささやくと、贅沢な湯殿にいざなった。

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