夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

ジョージ・ブルーデネル目線（４）

　王太子妃は様子を見て、めまいがしたような仕草を一瞬して、座席に背を沈めたと思った。

　しかし、その瞬間、馬車の扉を開けて外に飛び出して行った。私も慌てて王太子妃を追って外に飛び出した。

「危のうございます！」

　私も騎士団も王太子妃を止めた。ここで王太子妃の呼び名を出すわけにはいかないので、名前を呼んで引き留めた。

「キャロラインっ！戻ってくださいっ！」

「なんだこの女？金を出せよ」

　私が止める声も虚しくキャロラインは落馬した騎士の元に駆け寄った。気づけば数十人の荒くれ男どもが馬車の周りを取り囲んでいた。荒くれ集団の頭のような男が、落馬した騎士に短剣をちらつかせて金を要求していた。
　キャロラインは、落馬した騎士の短剣を拾い上げて、荒くれ集団の頭の首筋につきつけた。

「離しな」

　一言短く、キャロラインが命令するように言った。
　
　――声音が変わっている！？
　
　私はキャロラインの口調と声音がゾクゾクするような調子に変わったことに気づいた。

「なんだと、この女！」