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1.求婚 ダメ。王子の魅力は破壊力があり過ぎ。抵抗は難易度高な模様。
05 かみさま!
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「ヒメ!頼んだぞっ!」
「分かった。」
「では、失礼っ!」
ガラッと音がして、馬車の扉が開いたと分かった。男たちが入り口の踏み台を蹴って外に飛び出す気配がしばらく続いた。やがてヒメ一人になったようだ。
貴和豪一門はただの金持ちではなく、軍部の歴代トップを輩出している文武に優れた家柄だ。
振袖姿のヒメの声が急にした。
「腹へっているところごめんっ!沙織はナディアからもらったトラビコンの粉を今も持っているなあっ!?」
ヒメは頭の袋を取り払ってくれた。
わたしは明るさに目をしばたく。ヒメは後ろに縛られていた手の縄もほどいてくれ、足元の縄もほどいてくれた。横を見るとジョンの真っ青な顔も見えた。ジョンも縄を解いてもらっている。
ヒメは髪を振り乱して一心不乱に縄を解いてくれて、ヒメの金茶色の紋様の振袖はもう崩れている。
ヒメの顔色は真っ青だ。わたしは呆然とヒメを見ていた。ヒメの唇は固く一文字に結ばれていたが、唐突に大きく開かれ、きっとした目でわたしをにらんで大声で叫んだ。
「沙織!トラビコンよ!返事してよ。ほーら、頭上にランフォリンクスの大群がやってきている!聞こえるでしょ!?猶予はないのっ!!」
確かに上空に音が聞こえた。
――そうか。口ばしと尻尾の長いランフォリンクスが集まってきているんだ。敵も本気だ。
「沙織、返事してっ!!」
わたしがまだぼーっとしていたので、ヒッピー姫は怒鳴った。昔から知っている同級生の声だ。訓練を共にした同級生の懐かしい声だ。
おっといけない。わたしは慌てて返事をした。
「トラビコンは持っているよ!この前ナディアにもらったから。」
持っている、持っている。この前のゲーム召喚された時にナディアにもらった。水中でいつまでも息ができるようになる粉だ。
そこにジョンが口を開いて話そうとした。
「狙われているからだね。敵はー」
「うっさいっ!!今敵の話はいいの!」
敵の話をしようとしたジョンにヒメは噛みついた。
ヒッピー姫は髪を振り乱して馬車の外をのぞき、一瞬で私に顔をグッと近づけてわたしの目を見つめた。
「それを今すぐに飲んで。橋から川に突き落とすから。馬車ごと落ちるよ!沙織?聞いている?理解した?貴和豪は馬車ごとあんたを沈める気なの!私はあんたに死なれたら嫌なのっ!!」
わたしもヒッピー姫の真剣さに押されて、思わず首を縦に振った。
――了解。多分やることは分かった。トラビコンを飲む。橋から車を突き落とされるから、脱出して水中を潜って逃げろとわたしに言っているんだな。
わたしがうなずくと、ヒッピー姫は一瞬で外に飛び出した。特殊な訓練を受けた魔女忍の動きで、風のように動く。
わたしとジョンが慌てて外をのぞくと、車には御者もいなくなっていた。レエリナサウラにまたがったヒメが髪を風に大きくなびかせて、車と並走していた。
――レエリナサウラがほとんど残っていない!あの男たちも乗って逃げたのね。橋が見える。この赤い欄干は知っている!!
――河童も溺れる、水流の激しさでめちゃくちゃ有名な萌激川の橋だ。
わたしは無我夢中で、袂からトラビコンの粉を入れた瓶を取り出し、粉を自分の舌になすりつけて、ジョンの舌にもなすりつけた。ジョンもわたしも粉を飲み込んだ。
――血流に混ざれ、混ざれ!わたしとジョンがエラ呼吸できるようになるには、トラビコンの粉が血中に入ってくれないとダメだ。
橋に差し掛かると、疾走していた車の手綱がヒメによって外された。慣れた手つきだ。そして「いくよっ!」とヒメが叫んだ。
車と並走しているレエリナサウラ疾走しているヒメが、たくしあげた金茶色の振袖の下から左足を大きく振りかざした。
わたしはヒメと目があった。
二人で目を合わせてすばやく小さくうなずいた。
準備オーケーよ。
この同級生とわたしは息を合わせることができる。わたしたちは厳しい訓練を共にした仲間だ。わたしとジョンの視界に入ったのは、ブーツを脱ぎ捨てて白いたびだけにななったヒメの真っ白い左足裏だった。
わたしたちの乗った馬車は、強烈なキックでヒメから蹴飛ばされた。
ぐらっと視界が揺れた。馬車が傾いたのだ。
「落ちるーっ!」
「沙織、つかまってっ!」
欄干を乗り越えて、馬車が川の方に飛び出した。最後の一押しで急襲してきたラフォリンクスが長い口ばしで車を激しく突き飛ばした。
わたしの視界には、そのまま青い空が見えた。空に小さな白い雲が少しあった。車がひっくり返って、わたしとジョンは互いにしがみついた。
車ごと橋からまっさかさまに転がり落ちていった。
――かみさま、どうかわたしたちを助けて!
――まだ死にたくないの!
「分かった。」
「では、失礼っ!」
ガラッと音がして、馬車の扉が開いたと分かった。男たちが入り口の踏み台を蹴って外に飛び出す気配がしばらく続いた。やがてヒメ一人になったようだ。
貴和豪一門はただの金持ちではなく、軍部の歴代トップを輩出している文武に優れた家柄だ。
振袖姿のヒメの声が急にした。
「腹へっているところごめんっ!沙織はナディアからもらったトラビコンの粉を今も持っているなあっ!?」
ヒメは頭の袋を取り払ってくれた。
わたしは明るさに目をしばたく。ヒメは後ろに縛られていた手の縄もほどいてくれ、足元の縄もほどいてくれた。横を見るとジョンの真っ青な顔も見えた。ジョンも縄を解いてもらっている。
ヒメは髪を振り乱して一心不乱に縄を解いてくれて、ヒメの金茶色の紋様の振袖はもう崩れている。
ヒメの顔色は真っ青だ。わたしは呆然とヒメを見ていた。ヒメの唇は固く一文字に結ばれていたが、唐突に大きく開かれ、きっとした目でわたしをにらんで大声で叫んだ。
「沙織!トラビコンよ!返事してよ。ほーら、頭上にランフォリンクスの大群がやってきている!聞こえるでしょ!?猶予はないのっ!!」
確かに上空に音が聞こえた。
――そうか。口ばしと尻尾の長いランフォリンクスが集まってきているんだ。敵も本気だ。
「沙織、返事してっ!!」
わたしがまだぼーっとしていたので、ヒッピー姫は怒鳴った。昔から知っている同級生の声だ。訓練を共にした同級生の懐かしい声だ。
おっといけない。わたしは慌てて返事をした。
「トラビコンは持っているよ!この前ナディアにもらったから。」
持っている、持っている。この前のゲーム召喚された時にナディアにもらった。水中でいつまでも息ができるようになる粉だ。
そこにジョンが口を開いて話そうとした。
「狙われているからだね。敵はー」
「うっさいっ!!今敵の話はいいの!」
敵の話をしようとしたジョンにヒメは噛みついた。
ヒッピー姫は髪を振り乱して馬車の外をのぞき、一瞬で私に顔をグッと近づけてわたしの目を見つめた。
「それを今すぐに飲んで。橋から川に突き落とすから。馬車ごと落ちるよ!沙織?聞いている?理解した?貴和豪は馬車ごとあんたを沈める気なの!私はあんたに死なれたら嫌なのっ!!」
わたしもヒッピー姫の真剣さに押されて、思わず首を縦に振った。
――了解。多分やることは分かった。トラビコンを飲む。橋から車を突き落とされるから、脱出して水中を潜って逃げろとわたしに言っているんだな。
わたしがうなずくと、ヒッピー姫は一瞬で外に飛び出した。特殊な訓練を受けた魔女忍の動きで、風のように動く。
わたしとジョンが慌てて外をのぞくと、車には御者もいなくなっていた。レエリナサウラにまたがったヒメが髪を風に大きくなびかせて、車と並走していた。
――レエリナサウラがほとんど残っていない!あの男たちも乗って逃げたのね。橋が見える。この赤い欄干は知っている!!
――河童も溺れる、水流の激しさでめちゃくちゃ有名な萌激川の橋だ。
わたしは無我夢中で、袂からトラビコンの粉を入れた瓶を取り出し、粉を自分の舌になすりつけて、ジョンの舌にもなすりつけた。ジョンもわたしも粉を飲み込んだ。
――血流に混ざれ、混ざれ!わたしとジョンがエラ呼吸できるようになるには、トラビコンの粉が血中に入ってくれないとダメだ。
橋に差し掛かると、疾走していた車の手綱がヒメによって外された。慣れた手つきだ。そして「いくよっ!」とヒメが叫んだ。
車と並走しているレエリナサウラ疾走しているヒメが、たくしあげた金茶色の振袖の下から左足を大きく振りかざした。
わたしはヒメと目があった。
二人で目を合わせてすばやく小さくうなずいた。
準備オーケーよ。
この同級生とわたしは息を合わせることができる。わたしたちは厳しい訓練を共にした仲間だ。わたしとジョンの視界に入ったのは、ブーツを脱ぎ捨てて白いたびだけにななったヒメの真っ白い左足裏だった。
わたしたちの乗った馬車は、強烈なキックでヒメから蹴飛ばされた。
ぐらっと視界が揺れた。馬車が傾いたのだ。
「落ちるーっ!」
「沙織、つかまってっ!」
欄干を乗り越えて、馬車が川の方に飛び出した。最後の一押しで急襲してきたラフォリンクスが長い口ばしで車を激しく突き飛ばした。
わたしの視界には、そのまま青い空が見えた。空に小さな白い雲が少しあった。車がひっくり返って、わたしとジョンは互いにしがみついた。
車ごと橋からまっさかさまに転がり落ちていった。
――かみさま、どうかわたしたちを助けて!
――まだ死にたくないの!
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