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3ー愛の着地
74 ええ!?いつの間に?(王子視点)
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「マブリマギアルナアブロッシュは、正式に王子と沙織の婚姻を祝福いたします」
1512年の冬。
壮麗な城の暖かい応接室で、俺と沙織はガッシュクロース侯爵夫人にそう言われて宝石が多数埋め込まれた美しいペンダントを贈り物として捧げられた。中世に巨大な力を持つ黒の秘密結社は、これで正式に沙織を許したということになる。
「ありがとうございます」
「ありがとう!」
沙織の因縁の相手だったはずのガッシュクロース侯爵夫人はすっかり沙織と打ち解けて仲良くなっていた。沙織は侯爵夫人に抱きついてお礼を言っていた。俺は二人が打ち解けた経緯をまったく知らない。侯爵夫人から城に招かれて、警戒して行ってみれば、至れりつくせりの歓迎っぷりで驚いた。
「お祝いのお食事をご用意していますのよ」
侯爵夫人は俺と沙織のために、美味しい料理とお酒を用意していた。
ワインを飲み、料理を食べ、窓からの雪が積もる中世の景色を堪能して夜も更けた頃、俺はついに侯爵夫人に聞いた。
「今晩はここに泊めていただいてもよろしいでしょうか?」
窓の外は雪に覆われている中で暖炉には煌々と火が暖かく燃え盛って部屋を心地よく暖めている。そういう雰囲気の中で中世の城に愛してやまない新妻と泊まる!
それは実現が信じられないほど追い求めてやまないロマン。俺は夢を追いかけたくなった。拍子抜けするほど侯爵夫人と沙織が打ち解けていたので、つい油断して侯爵夫人に聞いてしまった。
ビーズと刺繍がふんだんにあしらってあるゴージャスなドレスを着た夫人の片眉が、ぴくりと釣り上がった。
俺は横目でチラッと沙織のドレス姿を眺めた。この時代のドレスは胸元が深く空いているスタイルだ。普段は忍びの着物と袴姿なのでこれほど沙織が胸元の空いた服を着ることはなく、俺自身が戸惑うドレス姿だ。
沙織は普段の見慣れないお酒を飲んだので、頬を赤らめて目が潤んできており………………。
「良いでしょう。客間を準備させましょう」
ガッシュクロース侯爵夫人はそう言った。
顔が真っ赤になった沙織が夫人の言葉を遮ろうとしたが、侯爵夫人に止められた。
しばらくして、夫人のメイドに通された客間は暖かく暖炉で温められており、大きな寝具が置かれてあった。
天蓋付きのベッドだった。
「いつの間にガッシュクロース侯爵夫人と仲良くなったの?」
俺は顔を赤らめて、お酒に酔った様子で暖炉の前で両肩を抱いて立ち尽くしている沙織に聞いた。
「秘密よ」
「いつか説明してくれる?」
「いつかね」
「沙織、こっちに来て」
俺はベッドの淵に腰をかけて、ポンポンとベッドを叩いた。
「いえ、王子がこっちに来て」
沙織は警戒したような雰囲気だ。
俺はため息をついて、沙織のそばに歩いて近づいた。
「目のやり場に困る」
それだけそう言って、ドレス姿の沙織を抱きしめた。そのまま口付けを―
あんっ
「カメラアプリミッション、クリアしました」
爽やかな機械音がして、俺は世界が暗転するのを感じた。
「王子、わたしは母上の幸子さんと仲が良いのよ?」
勝ち誇ったようなガッシュクロース侯爵夫人の声が俺の耳に聞こえた。
――ええ!?
「王子、挙式までは待てと言ったでしょうっ!」
母上の説教が魔暦で俺を待ち構えていた。何がどうなっているのかさっぱり俺には分からない。ガッシュクロース侯爵夫人と母上がそんなに仲が良いとは、聞いていなかった。
ともかくはっきりしたのは、もはや沙織は命を狙われていないということだ。
俺と沙織の婚姻に向けて、一点の曇りもなく、澄み渡った未来が待ち受けているだろう。そう信じる!
1512年の冬。
壮麗な城の暖かい応接室で、俺と沙織はガッシュクロース侯爵夫人にそう言われて宝石が多数埋め込まれた美しいペンダントを贈り物として捧げられた。中世に巨大な力を持つ黒の秘密結社は、これで正式に沙織を許したということになる。
「ありがとうございます」
「ありがとう!」
沙織の因縁の相手だったはずのガッシュクロース侯爵夫人はすっかり沙織と打ち解けて仲良くなっていた。沙織は侯爵夫人に抱きついてお礼を言っていた。俺は二人が打ち解けた経緯をまったく知らない。侯爵夫人から城に招かれて、警戒して行ってみれば、至れりつくせりの歓迎っぷりで驚いた。
「お祝いのお食事をご用意していますのよ」
侯爵夫人は俺と沙織のために、美味しい料理とお酒を用意していた。
ワインを飲み、料理を食べ、窓からの雪が積もる中世の景色を堪能して夜も更けた頃、俺はついに侯爵夫人に聞いた。
「今晩はここに泊めていただいてもよろしいでしょうか?」
窓の外は雪に覆われている中で暖炉には煌々と火が暖かく燃え盛って部屋を心地よく暖めている。そういう雰囲気の中で中世の城に愛してやまない新妻と泊まる!
それは実現が信じられないほど追い求めてやまないロマン。俺は夢を追いかけたくなった。拍子抜けするほど侯爵夫人と沙織が打ち解けていたので、つい油断して侯爵夫人に聞いてしまった。
ビーズと刺繍がふんだんにあしらってあるゴージャスなドレスを着た夫人の片眉が、ぴくりと釣り上がった。
俺は横目でチラッと沙織のドレス姿を眺めた。この時代のドレスは胸元が深く空いているスタイルだ。普段は忍びの着物と袴姿なのでこれほど沙織が胸元の空いた服を着ることはなく、俺自身が戸惑うドレス姿だ。
沙織は普段の見慣れないお酒を飲んだので、頬を赤らめて目が潤んできており………………。
「良いでしょう。客間を準備させましょう」
ガッシュクロース侯爵夫人はそう言った。
顔が真っ赤になった沙織が夫人の言葉を遮ろうとしたが、侯爵夫人に止められた。
しばらくして、夫人のメイドに通された客間は暖かく暖炉で温められており、大きな寝具が置かれてあった。
天蓋付きのベッドだった。
「いつの間にガッシュクロース侯爵夫人と仲良くなったの?」
俺は顔を赤らめて、お酒に酔った様子で暖炉の前で両肩を抱いて立ち尽くしている沙織に聞いた。
「秘密よ」
「いつか説明してくれる?」
「いつかね」
「沙織、こっちに来て」
俺はベッドの淵に腰をかけて、ポンポンとベッドを叩いた。
「いえ、王子がこっちに来て」
沙織は警戒したような雰囲気だ。
俺はため息をついて、沙織のそばに歩いて近づいた。
「目のやり場に困る」
それだけそう言って、ドレス姿の沙織を抱きしめた。そのまま口付けを―
あんっ
「カメラアプリミッション、クリアしました」
爽やかな機械音がして、俺は世界が暗転するのを感じた。
「王子、わたしは母上の幸子さんと仲が良いのよ?」
勝ち誇ったようなガッシュクロース侯爵夫人の声が俺の耳に聞こえた。
――ええ!?
「王子、挙式までは待てと言ったでしょうっ!」
母上の説教が魔暦で俺を待ち構えていた。何がどうなっているのかさっぱり俺には分からない。ガッシュクロース侯爵夫人と母上がそんなに仲が良いとは、聞いていなかった。
ともかくはっきりしたのは、もはや沙織は命を狙われていないということだ。
俺と沙織の婚姻に向けて、一点の曇りもなく、澄み渡った未来が待ち受けているだろう。そう信じる!
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