ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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第二十八話 ウーマンハリケーン

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 「女性に力を!女性を解放せよ!戦争反対!人種差別反対!」

 

 (小うるさい女どもだいい加減にしろ!)



 アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトはホワイトハウスへ移動する送迎車の中、穏やかならざる本音を心中で叫んだ。



 合衆国の景気は、あの暗黒の日より何とか持ち直してきた。



 ニューディール政策は一応の成功を上げ、雇用統計も回復しつつある。



 そこまでは良い、自分の政策は間違ってなどいなかったのだ。



 (共和党の馬鹿どもざまあ見ろ)



 だが、こいつはいけない。

 

 金銀財宝を乗せた日本の艦隊が、親善訪問と言う名の砲艦外交を行って来てから、偉大なるステイツの人権問題は火を噴いている。



 煌びやかな軍装に身を包んだ女性軍人がカリフォルニアとニューヨークでパレードを行ってからと言うもの、延焼は広がるばかりだ。



 自分は他国の人権を蹂躙しながら、大日本帝国は金と人権と言う文句を付けるのが難しい問題で攻勢を仕掛けている。



 全米各地で親日プロパガンダを打ちまくり、各地の女性人権団体や教会、黒人擁護団体に金を撒く、おかげでキャリーネイションの群れが大暴れしている。



 (何が強い女だ!禁酒法よもう一度だと?馬鹿抜かせ!)



 元よりアメリカには労働問題が永らく燻っていた。



 機関銃を持ってなかったら経営など出来ないと嘯く資本家は山ほどいるのだ。



 労働争議にマフィアを動員されトミーガンがぶっ放される事態になったのは一度や二度の事ではない。



 あわや銃撃戦となる所だったボーナスアーミー事件からだとて10年たっていない。

 

 アメリカは自存自衛の国、言い換えれば弱肉強食の論理がまかり通ってのだ。



 それを何とか理想と信仰で抑え込んでいる。



 一歩間違えばこの国は南北戦争の様な共食いを始めかねない。だからこそ、その凶暴性を外に向ける必要が有る。



 際限なく肥大化する欲望を世界経済に向けさせるのだ。



 欧州ではお誂え向きに第三帝国と名乗るジャガイモの群れが、気に食わない紳士面の元宗主国に挑戦状を叩きつけている。



 ソ連はソ連で日本にこれでもかと殴られて太平洋への出口を失った。

 

 疲弊した欧州は必ずや、我が合衆国に泣きついて来る。その時こそ世界経済の主役はアメリカ合衆国が運営する事になるであろう。

 

 そう思っていた。



 (何なんだあの国は!フロンティアたる中国市場を、援助と言う名の阿片で漬けて使い物にならなくするは、馬鹿みたいに安い資源を世界市場に流れ込ませるは、しまいには人権運動だと!お前が一番蹂躙してはずだろ中国と満州で!)

 

 腹立たしいがアメリカの経済人たちは格安の労働力と資源にメロメロだ。



 今まで資源がなくてピーピー泣いていた事が嘘のように日本は資源外交を行っている。



 アメリカ市場には安かろう悪かろうであるがメイドインジャパンが流れ込みつつあるのだ、早く何とかしなければならない。



 「それにはまず、ここで騒ぎまわっている馬鹿女どもを何とかしなければならないな。次の炉辺談話では人権問題について踏み込む必要がある。何で私が黒人どもの人権なんぞ、、、」



 そんな事をブツブツ呟やいていた、フランクリン・ルーズベルト大統領が目を上げると、歩道一杯に広がった女性人権活動家たちが道路に飛び出して来るではないか。



 「馬鹿!前を見ろ前を!危ない!」



 それが彼の最後の言葉となった。



 飛び出してきた女性を避けようと急ハンドルを切った大統領専用車はその場で一回転。



 運悪くシートベルトをしていなかった大統領は天井に叩きつけられる。



 ポッキリと首の折れた大統領が死亡を宣告されのは30分ほど後の事である。



 なお飛び出した女性は行方が分かっていない事を報告しておきたい。





「ああ。なんて可哀そうに、でも女性をのけ者にしようとするからですよ大統領」



 量産型キャリーネイションの一人がそんな感想を漏らした事を気づいた者はいなかった。
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