ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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第三十話 グダグダ戦線と終わりの始まり

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 1940年6月15日 西方電撃戦はフランスの降伏で幕を閉じた。ダイナモ作戦の失敗により弱気になったイギリスにこれ以上の抗戦は不可能であろう。



 世界の誰もがそう思った。



 そうは美味く話は進まない。



 1940年6月22日 独ソ不可侵条約を蹴飛ばし、ソ連軍は欧州になだれ込んできのだ。



 理由は簡単、ソ連は存亡の危機を感じていたからだ。

 

 刻一刻と増すシベリアからの圧力、確実に勝てるはずのフィンランド侵攻に現れた日本製兵器の山、フランス戦に投入される海賊版戦車、座していては日独に殺される。



 不可侵を結んだのは時間を稼ぐためなのだ、これほど早くカエルと三枚舌が引き潰されたら、そんなもの意味がない。

 

 (後顧の憂いの無くなったドイツは必ず日本と一緒に攻めてくる。あの三流絵描きはそう言う奴だ。断言できる)



 「ならばヤラレルマエニヤル!」

 

 シェリーフェンの怨霊に取りつかれたスターリンは攻撃命令を下した。



 かくて独ソ戦争はグダグダに始まったのである。

 

 鉄の男の号令一下、赤き津波は怒涛の様になだれ込む!



 ベルリン五年早く陥落す!とはいかなかった。



 何故かと言えば大日本帝国のせい。



 日本はノモンハン事件で本来であれば赤軍を大粛清から立ち直らせた男、ゲオルギー・ジューコフ氏をイルクーツクの土に変えてしまっている。



 彼だけではない、一緒に居た優秀な幕僚達も四〇糎加農砲で栄養豊富な土に強制ジョブチェンジされている。



 残された赤軍幹部たちは必死に立て直しを図るがそこに冬戦争であるから、回復する暇がない。



 赤軍上層部とて無能ではない。



 そも無能は鉄の男の治世で生き残れない。



 彼らに時間が有れば立て直しも可能であったろう、だが時間と筆髭は待ってくれなかった。

 

 「何が何でもベルリンに突入せよ!社会主義の興廃この一戦にあり同志各員奮励努力せよ」



 遮二無二突進する赤軍であったがワルシャワ突入目前で停止する。



 泡を食ったドイツ軍がイタリアに大幅譲歩して戻ってきたのだ。



 「速報。イタリア独り勝ち!」



 対して戦わずヴィシーフランスを手に入れる。



 可哀そうなペタン元帥。恨むならソ連を恨んで。



 後ろから殴られたドイツ軍の士気は高い。



 「侵略者から祖国を守れ、赤い熊を叩き潰せ」



 今の今までフランスを解剖していた連続殺国鬼とは思えないセリフだが彼らは本気だ。



 この様な顛末で降伏寸前だったイギリスは救われる。



 欧州では予想だにしない波乱が巻き起こっている。ではアジアはどうであろうか。大日本帝国さんそこんとこどうよ。



 



 馬鹿殿は呆然としていた。



 ガハハッ勝ったな、メイドさんといちゃついて来る



 と目を離したらドイツが後ろから熊に噛みつかれ振り回されている。



 何が起った?ブリッツクリークとか無停止戦法とかそんなチャチなもんじゃあない。



 国の存亡をかけた総攻撃、目を血走らせ泡を吹く狂熊のスタンピート。



 如何しよう?いや迷っている暇など無い!待ってろドイツ今行くぞ



 死ぬな頼むぞ死ぬならソ連と一緒に死んでくれ。遺産は統領と仲良く分けるから。



 宣戦布告だ死にかけ熊今度こそ剥製にしてやる!



 大日本帝国の宣戦布告に合わせて、大東亜連合各国もソ連に宣戦。



 復興に始まったイルクーツクに再び砲弾の雨が降り全てを台無しにしていく。



 投入される戦力は完全機械化15個師団、何とか間に合った空軍20飛行集団の大戦力。まさに現代のゴールデン・ホルド。



 後ろからは宗主国からの



 「頚いてよし」



 に喜びの声を上げるモンゴル軍、金で叩いて参戦させた満州が続く、中華民国はお留守番、阿片でラリパッパに期待できない。



 どうにか真面な蒋介石の親衛軍がウルムチ方面からの浸透を防御する。



 併せてカザフスタン方面に離間工作を仕掛ける。

 

 細かい事は良い弾だ弾撒け、死んだ熊だけが良い熊だ!



 ジュネーブ条約?馬鹿めそいつは死んだわ!



 ここはシベリア1丁目、ここに英米は居ないんだ俺達のしたいほうだいだぜ。あっ降伏するならメイドさんがご奉仕してくれるから降伏をお勧めするよ。

 



 



 すんでの所で命を拾った大英帝国。



 チャーチル首相必死の音頭取りで何とか継戦に持って行く。



 もうプライドだ何だと言っていられない。



 英連邦諸国より援軍を呼び込み、元植民地に下げたくない頭を下げる。



 ルーズベルト大統領亡き後、後を継いだのは副大統領だったジョン・N・ガーナー氏。



 彼から告げられた、アメリカの返事は冷たい。



 正確には国民の声が冷たい。景気は悪くない。



 気に食わないが太平洋の向こうのジャップは格安の資源を貢いでくるし東アジアは購買欲旺盛。

 

 「そんなことより人権が」



 「女性解放」



 「黒人どもを黙らせろ



 「労働者の権利」



 アメリカ政府としては参戦したい。



 だが国民の声はこの様な物なのだ。



 好き放題させるにはナチスは大きくなり過ぎた。



 ユダヤ人迫害も徐々にではあるが識者の耳には入ってきている。



 であるが、ここは民主主義の国なのである。



 すまないが参戦は出来ない



 だが横暴極まる巨人であっても合衆国には理想がある。



 何より自由を守る義務がある。何かないか、享楽を謳歌する出っ歯と強盗国家集団を止めるすべは。



 あった。



 

 「いい子ですね、誰に言われずともちゃんと気づけました。花丸をあげましょう坊やたち。そうでしょうとも、こうなったら一発逆転ですよね。私、皆様の努力を精一杯応援しております」

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