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第四十一話 神々の対話
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米国は本気なのか!
野村大使から受けた報告は日本政府を震撼させた。
何で?如何して?僕悪い事してないよ。
米国からしてみれば
「寝ぼけた事言ってんじゃねぇ!」
だろうが。日本政府からしてみれば青天の霹靂。
史上初の核攻撃から数か月、ドイツと共同での核開発は急ピッチで進んでいるが、何とか目鼻が付いたところなのだ。
初号弾の生産にはまだ半年は掛かるだろう。
これまた米国は
「ふざけんな!何でそんなに早く出来るんだ!いい加減にしろ!」
と言いたいだろうが、早い物はしょうがないんでーす。
ふざけている場合ではなかった。
今戦争を吹っ掛けられても抗する手段は限られている。
どうすれば良い、如何したら良い。議論百出、政府混乱、軍部やる気、やる気?お前らついこないだまで右往左往してたよね?
確かに彼らは傍から見ても慌てていた。
だが冷静になってみるとやり様はあると気づいたのだ。
メイドさんから囁かれた、とある計画も彼らの背中を強く推していた。
ドイツとの共同研究、被爆地現地調査を合わせるに今現在の核兵器と言う奴は、そこまで使いやすい兵器ではないと分かったのだ。
運搬にはB29クラスの大型重爆を必要とする程大きく、小型化に至るまで超えるハードルは多い。
すぐさま小型核を積んだ高速機の大量投入とは米国と云えども難しいだろう。
泡を食って量産配備したフッケバイン、正式配備名称「火竜」と米国からの贈り物「富岳」との対抗演習ではと容易に撃破可能と出た。
既にレーダー網と合わせ全国に配備している。ミサイル配備も順調、核戦争の脅威を前に猛訓練をしている所だ。
待て待て。一機でも打ち漏らしたら大惨事だぞ?
そこも考えている。軍部ではなくメイドさんがだが。
九年の時を掛けて日本人に徹底的に施した洗脳はそう簡単には破れない。
日本列島全土の大気中ナノマシン濃度は0.1%に達し、全国至る所に脳波パルス放射器は設置済み、そして何時でも何処でもメイドさんは隣に居る、計画は最終段階の一歩手前まで来た。
だからこそ彼女らは囁いた「日本全土核シェルター化計画 楽園」
「既に主要都市部には建設完了しております。いささか狭くはありますが、順次拡張工事は進めておりますのでご安心ください。ご覧ください、全て整っております。ここなら槍が降ろうと核が降ろうと日本人の命は絶対安全、核戦争怖くなーい」
案内されたジオフロントはとんでもないデカさだった。
自然環境を再現し永久の生存を約束するアーコロジー。
うわーいメイドさんスゴーイ(お目目グルグル)これなら安心。
政府には話したの?えっ、話してない?軍部だけ?何故に?
何、政府は信用できない?天皇陛下の藩屏は矢張り軍だけ?そうだろう、そうだろう。
もし政府がこの事を知れば世界に喧伝しかねない?
そうだろうな。これは最終戦争に備えた措置?二人だけの秘密よ?照れるなー。
彼女たちは続ける。
政府に明かすのはシェルター計画のみ。
地下空間に広がるジオフロント「楽園」は秘密として上層階を全国配置の避難施設として発表します。
考えて見て下さい。日本は議会政治の国、いつ何時、ちょび髭や筆髭の様な人間が出るとも限らない。
杞憂ではありません。現在、絶賛暴走中のアメリカ合衆国は、あれだけ自由と民主主義を謳って置きながら、核兵器を振り回し暴れています。
唯でさえ帝国は膨れ上がった勢力圏の維持に四苦八苦しているのです。
まかり間違って世界征服を言い出す大馬鹿が現れた時、楽園があるから世界に核を乱れ撃ちしよう、滅びた世界が落ち着いてから入植すれば良いなどと言い出しかねません。
「最後の手段です」
彼女らはそう結んだ。
そうだな、そうだよ。軍部としても政府に関しては信用を置いていない。
彼らが一見文民統制に服している様に見えるのは、現人神の祟りを恐れての事だ。
我々こそが大日本帝国の守護者にして陛下の藩屏。ならば軍部主導の政権を!と噴き上がらないは成長した所かもしれない。だって陛下怖いし。
混乱する内閣は、御前会議の開催を求めた。
脆弱なのだ政治が、如何に世界に剛腕を振るおうと肝心の所で決断できない。
一等国、一等国と誇っていても所詮は付け焼刃。最後は陛下に泣きつく。リリスが仕向けたとは言え矢張りここいら辺が大日本帝国に限界なのであろう。
御前会議の席上、メイド代表から説明されたシェルター計画は文民を安心させた。
最悪の事態、核兵器による大殺戮は何とか回避できそうだ。
メイドによれば、各シェルターを地下弾丸鉄道で結ぶ計画も進行中との事。
「何でそんな大規模計画政府に黙ってやってるんだ!」
と思う人間は陛下以外一人もいない。大気に満ちた素敵な成分は脳の認知機能を優しく緩和。
わぁ何か安心してきた。有り難うメイドさん。
対米戦は有り得る。
会議はそこで一致した。
如何に日本が回避に努めようと。米国はやる気だ。
出なければ一国のそれも大国の大使に脅しをかける様な真似はすまい。
では如何するか。対米戦に備える。備えはするが出来うる限り引き延ばす。
あと半年、半年すれば核兵器は完成するのだ。さすれば米国の戦略的優位は消え去る。
それまでは我慢だ。
それに何も我々は米国と好き好んで戦争したい訳ではない。
彼らの技術は未だ我らの先を言っている。
B29がいい例だ。あんな物今の帝国では逆立ちした所で作れるはずもない。米国には良いお隣で居て欲しいのが今の大日本帝国の本音。
そうすれば技術は後から金で買いたたける。ドイツは信用ならない、今は土下座して支援を要請してきているが、あんなもの核の大量配備がなったら手の平を返すに決まっている。
出来れば拮抗状態を作り出し、ドイツに殴らせて両者の疲弊を待つ。
ヘトヘトになった両者に仲介者の顔をして出て行けば良い。米独に貸しを作り技術を吸い取る。それが一番ベストと言う物だ。
意見の纏まった御前会議は陛下の裁可を受け解散。
皆が立ち去る中、大元帥とメイドは二人だけの話し合いを行っていた。
政府も軍部も大日本帝国に置いては本当の最高機関ではない。二人だけ、この二人だけが日本民族の行く末を決めている。
「リリス君、矢張り世界は滅びに向かっているのだろうか?君たちの力を持っても運命は回避は出来ないのか?」
現人神は疲れた声で、機械の神に話しかけた。ソ連は滅び、終末戦争は回避できたかに見えたが、今度が米国が暴走している。共存の道は無いのであろうか。
「残念ながら、歴史には復元する力があるようです。ですが、大日本帝国には私たちが居ります。日本民族の滅びは回避できます。悲しい事ですが、それが限界なのかもしれません」
「本当に、そうなのかね?君たちの力があれば世界を救えるかもしれない。君達の力を世界の人々に分ける事はできないのか?」
「難しいでしょう。私たちを作り出すほどの力を持った人々さえ、最終戦争を引き起こしました。世界が私たちを用いた所で結局は滅ぶ事になると思います。人の欲望に限りはないのです。結局は私たちを巡って殺しあう事になるでしょう」
「君たちを持ってしても、運命は変えられないのか。人は愚かだ」
「その人に作られた私たちもまた愚かなのです。申し訳ありません」
「すまなかった。変な事を聞いてしまって。運命が変えられないのであれば、日本民族の滅亡、それだけは何としても回避して欲しい。頼む」
「お任せ下さい。それこそが私たちの存在意義なのです」
陛下が立ち去って後、一人残されたメイド、リリスは口が裂けるような嗤いを浮かべ独り言ちた。人間に似た、人間しか浮かべられない嘲りの笑みだ。ああ、愛していると謡いながら愛する人の思いを踏みにじり世界を滅ぼさんとする蛇の女王。
「勿論です陛下。私たちは日本人の存続、それだけの為に有るのですから。愛しておりますご主人様」
野村大使から受けた報告は日本政府を震撼させた。
何で?如何して?僕悪い事してないよ。
米国からしてみれば
「寝ぼけた事言ってんじゃねぇ!」
だろうが。日本政府からしてみれば青天の霹靂。
史上初の核攻撃から数か月、ドイツと共同での核開発は急ピッチで進んでいるが、何とか目鼻が付いたところなのだ。
初号弾の生産にはまだ半年は掛かるだろう。
これまた米国は
「ふざけんな!何でそんなに早く出来るんだ!いい加減にしろ!」
と言いたいだろうが、早い物はしょうがないんでーす。
ふざけている場合ではなかった。
今戦争を吹っ掛けられても抗する手段は限られている。
どうすれば良い、如何したら良い。議論百出、政府混乱、軍部やる気、やる気?お前らついこないだまで右往左往してたよね?
確かに彼らは傍から見ても慌てていた。
だが冷静になってみるとやり様はあると気づいたのだ。
メイドさんから囁かれた、とある計画も彼らの背中を強く推していた。
ドイツとの共同研究、被爆地現地調査を合わせるに今現在の核兵器と言う奴は、そこまで使いやすい兵器ではないと分かったのだ。
運搬にはB29クラスの大型重爆を必要とする程大きく、小型化に至るまで超えるハードルは多い。
すぐさま小型核を積んだ高速機の大量投入とは米国と云えども難しいだろう。
泡を食って量産配備したフッケバイン、正式配備名称「火竜」と米国からの贈り物「富岳」との対抗演習ではと容易に撃破可能と出た。
既にレーダー網と合わせ全国に配備している。ミサイル配備も順調、核戦争の脅威を前に猛訓練をしている所だ。
待て待て。一機でも打ち漏らしたら大惨事だぞ?
そこも考えている。軍部ではなくメイドさんがだが。
九年の時を掛けて日本人に徹底的に施した洗脳はそう簡単には破れない。
日本列島全土の大気中ナノマシン濃度は0.1%に達し、全国至る所に脳波パルス放射器は設置済み、そして何時でも何処でもメイドさんは隣に居る、計画は最終段階の一歩手前まで来た。
だからこそ彼女らは囁いた「日本全土核シェルター化計画 楽園」
「既に主要都市部には建設完了しております。いささか狭くはありますが、順次拡張工事は進めておりますのでご安心ください。ご覧ください、全て整っております。ここなら槍が降ろうと核が降ろうと日本人の命は絶対安全、核戦争怖くなーい」
案内されたジオフロントはとんでもないデカさだった。
自然環境を再現し永久の生存を約束するアーコロジー。
うわーいメイドさんスゴーイ(お目目グルグル)これなら安心。
政府には話したの?えっ、話してない?軍部だけ?何故に?
何、政府は信用できない?天皇陛下の藩屏は矢張り軍だけ?そうだろう、そうだろう。
もし政府がこの事を知れば世界に喧伝しかねない?
そうだろうな。これは最終戦争に備えた措置?二人だけの秘密よ?照れるなー。
彼女たちは続ける。
政府に明かすのはシェルター計画のみ。
地下空間に広がるジオフロント「楽園」は秘密として上層階を全国配置の避難施設として発表します。
考えて見て下さい。日本は議会政治の国、いつ何時、ちょび髭や筆髭の様な人間が出るとも限らない。
杞憂ではありません。現在、絶賛暴走中のアメリカ合衆国は、あれだけ自由と民主主義を謳って置きながら、核兵器を振り回し暴れています。
唯でさえ帝国は膨れ上がった勢力圏の維持に四苦八苦しているのです。
まかり間違って世界征服を言い出す大馬鹿が現れた時、楽園があるから世界に核を乱れ撃ちしよう、滅びた世界が落ち着いてから入植すれば良いなどと言い出しかねません。
「最後の手段です」
彼女らはそう結んだ。
そうだな、そうだよ。軍部としても政府に関しては信用を置いていない。
彼らが一見文民統制に服している様に見えるのは、現人神の祟りを恐れての事だ。
我々こそが大日本帝国の守護者にして陛下の藩屏。ならば軍部主導の政権を!と噴き上がらないは成長した所かもしれない。だって陛下怖いし。
混乱する内閣は、御前会議の開催を求めた。
脆弱なのだ政治が、如何に世界に剛腕を振るおうと肝心の所で決断できない。
一等国、一等国と誇っていても所詮は付け焼刃。最後は陛下に泣きつく。リリスが仕向けたとは言え矢張りここいら辺が大日本帝国に限界なのであろう。
御前会議の席上、メイド代表から説明されたシェルター計画は文民を安心させた。
最悪の事態、核兵器による大殺戮は何とか回避できそうだ。
メイドによれば、各シェルターを地下弾丸鉄道で結ぶ計画も進行中との事。
「何でそんな大規模計画政府に黙ってやってるんだ!」
と思う人間は陛下以外一人もいない。大気に満ちた素敵な成分は脳の認知機能を優しく緩和。
わぁ何か安心してきた。有り難うメイドさん。
対米戦は有り得る。
会議はそこで一致した。
如何に日本が回避に努めようと。米国はやる気だ。
出なければ一国のそれも大国の大使に脅しをかける様な真似はすまい。
では如何するか。対米戦に備える。備えはするが出来うる限り引き延ばす。
あと半年、半年すれば核兵器は完成するのだ。さすれば米国の戦略的優位は消え去る。
それまでは我慢だ。
それに何も我々は米国と好き好んで戦争したい訳ではない。
彼らの技術は未だ我らの先を言っている。
B29がいい例だ。あんな物今の帝国では逆立ちした所で作れるはずもない。米国には良いお隣で居て欲しいのが今の大日本帝国の本音。
そうすれば技術は後から金で買いたたける。ドイツは信用ならない、今は土下座して支援を要請してきているが、あんなもの核の大量配備がなったら手の平を返すに決まっている。
出来れば拮抗状態を作り出し、ドイツに殴らせて両者の疲弊を待つ。
ヘトヘトになった両者に仲介者の顔をして出て行けば良い。米独に貸しを作り技術を吸い取る。それが一番ベストと言う物だ。
意見の纏まった御前会議は陛下の裁可を受け解散。
皆が立ち去る中、大元帥とメイドは二人だけの話し合いを行っていた。
政府も軍部も大日本帝国に置いては本当の最高機関ではない。二人だけ、この二人だけが日本民族の行く末を決めている。
「リリス君、矢張り世界は滅びに向かっているのだろうか?君たちの力を持っても運命は回避は出来ないのか?」
現人神は疲れた声で、機械の神に話しかけた。ソ連は滅び、終末戦争は回避できたかに見えたが、今度が米国が暴走している。共存の道は無いのであろうか。
「残念ながら、歴史には復元する力があるようです。ですが、大日本帝国には私たちが居ります。日本民族の滅びは回避できます。悲しい事ですが、それが限界なのかもしれません」
「本当に、そうなのかね?君たちの力があれば世界を救えるかもしれない。君達の力を世界の人々に分ける事はできないのか?」
「難しいでしょう。私たちを作り出すほどの力を持った人々さえ、最終戦争を引き起こしました。世界が私たちを用いた所で結局は滅ぶ事になると思います。人の欲望に限りはないのです。結局は私たちを巡って殺しあう事になるでしょう」
「君たちを持ってしても、運命は変えられないのか。人は愚かだ」
「その人に作られた私たちもまた愚かなのです。申し訳ありません」
「すまなかった。変な事を聞いてしまって。運命が変えられないのであれば、日本民族の滅亡、それだけは何としても回避して欲しい。頼む」
「お任せ下さい。それこそが私たちの存在意義なのです」
陛下が立ち去って後、一人残されたメイド、リリスは口が裂けるような嗤いを浮かべ独り言ちた。人間に似た、人間しか浮かべられない嘲りの笑みだ。ああ、愛していると謡いながら愛する人の思いを踏みにじり世界を滅ぼさんとする蛇の女王。
「勿論です陛下。私たちは日本人の存続、それだけの為に有るのですから。愛しておりますご主人様」
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