飽食戦線

ボンジャー

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イングリッシュブレックファースト

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 マシンガンで武装した米国出身の猟師たちの手により、絶滅の危機に瀕している海の狼の一匹は、その日総統直々の命令を受け北の海から浮上した。



 いかな極秘任務で有ろうか?



 エルドラド探索?スパイ回収任務?それとも日本遠征?



 突拍子もないことから、有り得そうな物まで、乗員たちは噂しあっていた。



 出港前に親衛隊の連中が持ち込んできた荷物の存在もその噂を嫌が応にも高めている。



 「現地に付き次第開封の事」



 そう言い残して彼らは去った。もしや細菌兵器?ガス?



 狭い艦内で噂は高まり、不安と期待は高まってくる。やたらと豪勢な食事を配給されている事からも、この任務が、ただ事で無い事を伺えるのだ。



 だが、震える手で命令書を開いた若い艦長は目に見えて肩を落とした。



 「如何しました艦長?なにが?」



 「ん!」



 心配した親子ほども年の離れた副長に艦長が差し出した命令書。



 そこに有ったのは唯一文。



 「所定の場所に付き次第、荷物を散布の事」



 それだけで有った。



 急いで期待の荷物を開ければあったのはガスボンベが五本。ただそれだけ。



 乗員一同が拍子抜けし、肩を落とす物、総統の髭に対して批評する者、安堵する者色々であった。



 しかし、そこは職務に忠実と言うより杓子定規なドイツ軍人である。件のガスボンベは、無事大気中に放出される。



 「「こんな事の為に、態々無線封鎖してまで此処まで来たのか。」」



 落胆の一同であったが、彼らが帰還したのち全員に鉄十字章が授与され、艦長等は色んな事を飛び越えて、騎士鉄十字章を授与されて、腰を抜かしそうに成るとは、この時は思いも依らぬ事であった。



 彼らはそれだけの事をしたのだ。



 具体的に言うと英国人を、そしてグレートロンドンを地獄に叩き込むお手伝いである。





 



 1944年6月6日 オマハビーチ



 地上最大の作戦は喜劇へと変貌していた。臓物飛び散り、悲鳴響き渡る、悪趣味で醜悪なナチスドイツを体現する様な喜劇であるが。



 「上陸三十秒前!」



 地獄の底に飛び込もうとする猛者たちは神に祈り、故郷を思い、己の勇気を総動員して揚陸艇にしがみ付いいていた。



 ドコン!音を立てて揚陸艇が砂浜に乗り上げる!ハッチが開く!ああ神様!



 「突撃!」「進め!」「合衆国の男と言う者を見せろ!」「ハレルヤ!」



 カラ元気と雄叫びが響き渡り、男たちは死神の待つビーチへと走りだし、、、、、



 「甘!」「うわっぷ!「冷てぇ!」「助け!沈む、、、、」「足が!足が!」



 ソーダ―ファウンテンで供される冷たいクリームソーダにお出迎えされた。



 





 「酷いなこれは」



 ヴァルター・オームゼン中尉は眼前で展開される喜劇をそう評した。



 決死の覚悟を決めた男たちが、バニラアイスとソーダ水と塩水の混交物に塗れ倒れていく、辺りには甘いバニラの匂いが漂い、MGの掃射により、男たちはストロベリートッピングをあたりに撒き散らす。



 「だが、任務だ。すまんなヤンキー」



 中尉は手にしたタブレットを更に操作し、生命の塗れるクリームソーダにチョコを加える事を決断した。



 







 同年翌日、狼の巣



 「総統!大勝利です!上陸軍は大損害をだして英国へ撤退を始めました」



 「そうか。うん、良いなそれは、良いニュースだ」



 寝入り鼻を叩き起こされた総統であるが、その機嫌は存外悪くない。敵の壊滅を知った今は更に良い。





 「操作を限定した、あの板の大量配布効きましたな総統」



 「そうでなければいけない。吾輩が苦労して見つけたんだぞ」



 苦労したかいがあった。シャンパン洪水だなんて馬鹿らしい目に会う思いまでしたのだ。大戦果を挙げてくれなけば困る。



 総統は、へべれけだらけになった少し前を思い出して心中で独り言ちる。



 「で、次はどうします総統?」



 隣にいたゲーリングは、ニヤニヤとした笑みを浮かべ総統に話掛ける。



 (ダイエット食とか言うのを食べ出してから此奴痩せたな、しかし食品なら何でも出せるなこの板)



 ゲーリングの質問に、そんな益体もない事をふと思った後、総統は答える。



 「勿論お返しさ。だがどうするかね諸君?どの様な返礼をドイツは大英帝国にするべきだと思う?」



 ゲーリングの質問に明確に答えた彼は、周りにいる側近たちの逆に質問を返す。その言いようは、「今日の昼めしは如何する」位の軽さだ。



 「紅茶をご馳走してあげるのはどうですかな総統?熱々の物を」



 と宣伝大臣。



 「いや、フィッシュアンドチップスが良い。彼らの好物だろう?」



 と親衛隊長官。



 「小官はスパムですな。何でも米国からの支援物資で向こうでは人気と聞いて居ります」



 これはカイテル元帥。



 「ふむ。良いな実に良い。彼らにはお誂え向きの最後と言える。では、全てご馳走してやるとしよう。それで良いかな?」



 「勿論です総統!」



 「ケチは行けなせんからな。」



 「後かたずけは占領してからやらせましょう」



 「スパム。美味しスパム、大満足でしょうな」



 腰巾着たちの追従を受け。総統は大事に抱えていたタブレットを起動した。



 「ほれ、丸を書いてチョンだ!グッドモーニングイングランド!これは吾輩の奢りだ。心幾まで食べてくれた前!貧相な食事で腹をすかしているんだろ!」



 







 「本当に悪趣味な奴らだ」



 この場にいながら、始終黙っていた、デーニッツ提督のボソリと呟かれた言葉は、幸いにも誰にも聞かれなかった。
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