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飢餓戦線
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1946年2月 大日本帝国はハワイ諸島を征服した。
ハワイ諸島ばかりではない。太平洋の取り残された島々も大日本帝国の手に落ちたのである。
抵抗は少なかった。
当たり前だ。太平洋の諸島は最早補給の見込みなど無く、残された道は飢え死にか玉砕かなのだ。
そして、大日本帝国は玉砕等と言う贅沢な真似をさせる積りは毛頭なかった。
降伏するなら良し、しないなら放っておく。
食い物が無限に湧き出る魔法の板を投下してである。
板に映しだされるのは、先に飽食を楽しむ日本本土の捕虜たちの姿。
瘦せ細り飢えに苦しむ者は之を見てどう思うだろう?
やってられないだろう。
そして映像の最後を締めくくるのは一言である。
「裏切れ、頑として降伏を拒む連中を自分たちで始末しろ」
オアフ島に上陸した日本軍が目にしたのは、内部から崩れ落ちた米海軍の牙城であった。
そうだろう。一人で何千人でも相手に出来る兵器が手元にあるのだ、切羽詰まった誰かが誘惑に負けてもしょうがない。
オアフ島要塞には穴と言う穴からトロピカルジュースを噴出した死体が溢れ、疑心暗鬼と後悔の念に駆られた少数の生き残りが、下手な万歳三唱を上げていた。
「なにがあったかは考えたくないし、記したくもない。」
米国通と言う事で、急遽上陸軍司令に抜擢された栗林中将は日記にそう記している。
「人は所詮獣だ。それは日本人だろうとアメリカ人だろうと変わらない、追い詰められ、クモの糸を垂らされれば人を蹴落としても掴もうとする」
栗林中将はこの世の地獄を見た。
燃えあと残るホノルル市街では、最後まで米国への忠誠を忘れない兵たちが、始末しようとした地元日系人の手で返り討ちに会いヤシの実に埋もれ、ヒッカム飛行場は騒乱の爪痕として血とココナッツオイルに塗れていた。
軍は市民に銃を向け、市民は軍の頭にココナッツをご馳走する。誰が敵で誰が味方だ?
飢餓の地獄でのた打ち回った人々は誰を信用して良いのだろうか?
米国は無理だ。生き残った軍民の人々は星条旗に唾を吐く事で命を長らえてたのだから。
一つしかない。悪魔で有ろうと鬼畜で有ろうと一つしかない。
大日本帝国。新たな主人に首を垂れてその支配を受け入れる他は無いのだ。
そしてこの光景は拡大した形で合衆国全土で行われる事になる。
タブレットから愉快で不快な放送が流れていた。
「ドイツ国民ラジオのお時間です!米国の皆さんお元気ですか?ゲッペルス宣伝大臣です!今日は時間を拡大して放送いたします!米国では今回で七回目になる本放送ですが、真に喜ばしい事に、次々と戦果を挙げている名誉国民の皆さまの情報が届いております!」
ドイツ国民ラジオ。合衆国東海岸ではこの放送を心待ちにしている者さえ出始めている。
「御手許のタブレットを良ーく確認してください!では始めますよ!今週のMVPは!何とご婦人!戦車一五両を撃破!何々、流石は主婦ですね!戦車のバター煮とは恐れ入る!聞いてますか?フランダース婦人!貴方が一等!大統領!名誉アーリア人入りです!ご家族共々ようこそ我が第三帝国へ!」
合衆国の人間に共食いさせようとしているのは、何も大日本帝国だけではない。ナチスドイツも効果的に共食いを煽っている。
「次は、、、良くやった少年!歩兵2個小隊を始末!君は実に優秀だ!我が国が東海岸に上陸した暁には是非、親衛隊の門を叩いてくれ給え!もう少しだぞバート少年!君と家族の名誉市民権獲得は近い!」
合衆国は東西に分割される。1945年の終わりに世界に発表された宣言は、勿論米国全体にもタブレットを通して伝わっている。
ドイツはその宣言に少し補足説明を加えた。
「戦果を上げよ名誉市民!そして名誉アーリア人!ドイツは君達を求めている!敵を撃て!君達こそが新たな支配者だ!」
市民権を餌に殺し合わせるのだ。
情け無用の悪鬼たるナチスドイツが米国の東半分を持っていく事は、ドイツ自身が盛大に宣伝している。宣伝相自らがこうしてラジオDJをしながら。
「名誉市民だ!君は自分を足蹴にして来た奴が落ちぶれているのを眺めながら、グリューワインを飲む立場に成れる!一緒にフリカッセを作ろう!」
自由と民主主義を愛する米国国民は、当然ながらナチスドイツが今まで何をやって来たか知っている。米国には報道の自由が有るのだ。
その恐怖が迫っている。軍はボロボロ、自分たちは腹ペコでだ。
貴方ならどうする?
逃げるか?
戦うか?
それは困難な道だ。
国内流通は麻痺しつつあり、降りしきる氷菓で移動もままならない、郊外に逃げようと食い物はない。
西に逃げる?ナチスよりジャップの方がまし?
塩の大地をどうやって抜けて行くというのだ?
そこは選ばれた裏切者だけが進める道だ。苦難のレベルは茨とアザミどころでは無い。水も食もガソリンすら塩に汚染されているのだから。
なら取るべきは一つだろう?
「さあ今からでも遅くはない!国民タブレットを手にするのだ!戦え!嵐だ!君は嵐になるのだ!もっと戦果を!更なる嵐を!」
宣伝相の言葉は魅力に溢れていると思わないか?
国家は君を守らない。
ライフルは君を助けてくれない。
「所で、、リスナーの皆さんから、配点について要望が届いているのでお知らせしよう!歩兵一人十点!政府役人同じく十点!政府・軍高官は百点!目指せ千点!それが名誉市民への道だ!ああそうだ、、大統領は大ボーナスで一万点!彼を討ち取ったらベルリンにお引越し!君も総統と握手しよう!」
戦線だ。敵も味方も分からない戦線が合衆国を囲んでいる。
ハワイ諸島ばかりではない。太平洋の取り残された島々も大日本帝国の手に落ちたのである。
抵抗は少なかった。
当たり前だ。太平洋の諸島は最早補給の見込みなど無く、残された道は飢え死にか玉砕かなのだ。
そして、大日本帝国は玉砕等と言う贅沢な真似をさせる積りは毛頭なかった。
降伏するなら良し、しないなら放っておく。
食い物が無限に湧き出る魔法の板を投下してである。
板に映しだされるのは、先に飽食を楽しむ日本本土の捕虜たちの姿。
瘦せ細り飢えに苦しむ者は之を見てどう思うだろう?
やってられないだろう。
そして映像の最後を締めくくるのは一言である。
「裏切れ、頑として降伏を拒む連中を自分たちで始末しろ」
オアフ島に上陸した日本軍が目にしたのは、内部から崩れ落ちた米海軍の牙城であった。
そうだろう。一人で何千人でも相手に出来る兵器が手元にあるのだ、切羽詰まった誰かが誘惑に負けてもしょうがない。
オアフ島要塞には穴と言う穴からトロピカルジュースを噴出した死体が溢れ、疑心暗鬼と後悔の念に駆られた少数の生き残りが、下手な万歳三唱を上げていた。
「なにがあったかは考えたくないし、記したくもない。」
米国通と言う事で、急遽上陸軍司令に抜擢された栗林中将は日記にそう記している。
「人は所詮獣だ。それは日本人だろうとアメリカ人だろうと変わらない、追い詰められ、クモの糸を垂らされれば人を蹴落としても掴もうとする」
栗林中将はこの世の地獄を見た。
燃えあと残るホノルル市街では、最後まで米国への忠誠を忘れない兵たちが、始末しようとした地元日系人の手で返り討ちに会いヤシの実に埋もれ、ヒッカム飛行場は騒乱の爪痕として血とココナッツオイルに塗れていた。
軍は市民に銃を向け、市民は軍の頭にココナッツをご馳走する。誰が敵で誰が味方だ?
飢餓の地獄でのた打ち回った人々は誰を信用して良いのだろうか?
米国は無理だ。生き残った軍民の人々は星条旗に唾を吐く事で命を長らえてたのだから。
一つしかない。悪魔で有ろうと鬼畜で有ろうと一つしかない。
大日本帝国。新たな主人に首を垂れてその支配を受け入れる他は無いのだ。
そしてこの光景は拡大した形で合衆国全土で行われる事になる。
タブレットから愉快で不快な放送が流れていた。
「ドイツ国民ラジオのお時間です!米国の皆さんお元気ですか?ゲッペルス宣伝大臣です!今日は時間を拡大して放送いたします!米国では今回で七回目になる本放送ですが、真に喜ばしい事に、次々と戦果を挙げている名誉国民の皆さまの情報が届いております!」
ドイツ国民ラジオ。合衆国東海岸ではこの放送を心待ちにしている者さえ出始めている。
「御手許のタブレットを良ーく確認してください!では始めますよ!今週のMVPは!何とご婦人!戦車一五両を撃破!何々、流石は主婦ですね!戦車のバター煮とは恐れ入る!聞いてますか?フランダース婦人!貴方が一等!大統領!名誉アーリア人入りです!ご家族共々ようこそ我が第三帝国へ!」
合衆国の人間に共食いさせようとしているのは、何も大日本帝国だけではない。ナチスドイツも効果的に共食いを煽っている。
「次は、、、良くやった少年!歩兵2個小隊を始末!君は実に優秀だ!我が国が東海岸に上陸した暁には是非、親衛隊の門を叩いてくれ給え!もう少しだぞバート少年!君と家族の名誉市民権獲得は近い!」
合衆国は東西に分割される。1945年の終わりに世界に発表された宣言は、勿論米国全体にもタブレットを通して伝わっている。
ドイツはその宣言に少し補足説明を加えた。
「戦果を上げよ名誉市民!そして名誉アーリア人!ドイツは君達を求めている!敵を撃て!君達こそが新たな支配者だ!」
市民権を餌に殺し合わせるのだ。
情け無用の悪鬼たるナチスドイツが米国の東半分を持っていく事は、ドイツ自身が盛大に宣伝している。宣伝相自らがこうしてラジオDJをしながら。
「名誉市民だ!君は自分を足蹴にして来た奴が落ちぶれているのを眺めながら、グリューワインを飲む立場に成れる!一緒にフリカッセを作ろう!」
自由と民主主義を愛する米国国民は、当然ながらナチスドイツが今まで何をやって来たか知っている。米国には報道の自由が有るのだ。
その恐怖が迫っている。軍はボロボロ、自分たちは腹ペコでだ。
貴方ならどうする?
逃げるか?
戦うか?
それは困難な道だ。
国内流通は麻痺しつつあり、降りしきる氷菓で移動もままならない、郊外に逃げようと食い物はない。
西に逃げる?ナチスよりジャップの方がまし?
塩の大地をどうやって抜けて行くというのだ?
そこは選ばれた裏切者だけが進める道だ。苦難のレベルは茨とアザミどころでは無い。水も食もガソリンすら塩に汚染されているのだから。
なら取るべきは一つだろう?
「さあ今からでも遅くはない!国民タブレットを手にするのだ!戦え!嵐だ!君は嵐になるのだ!もっと戦果を!更なる嵐を!」
宣伝相の言葉は魅力に溢れていると思わないか?
国家は君を守らない。
ライフルは君を助けてくれない。
「所で、、リスナーの皆さんから、配点について要望が届いているのでお知らせしよう!歩兵一人十点!政府役人同じく十点!政府・軍高官は百点!目指せ千点!それが名誉市民への道だ!ああそうだ、、大統領は大ボーナスで一万点!彼を討ち取ったらベルリンにお引越し!君も総統と握手しよう!」
戦線だ。敵も味方も分からない戦線が合衆国を囲んでいる。
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