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第21話 幕間~ ニコが去った後の食堂「まるいひつじ亭」の人々 その1
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ニコが去った後の食堂「まるいひつじ亭」は復帰の準備に入った事の報告に店内は盛り上がった。
自称「親代わり」「兄代わり」は多い。圧倒的に多いのは「姉代わり」だが。
その家族同然と思っている人たちは喜んだ。
~勇者リオンの仲間たち~
「ニコが仕事復帰するってか……リオンに教えないとな!」
重そうな鎧を着たままのグエンが肉を頬張りながら言った。
「リオンはすっごく喜ぶね! でもどこまで回復しているか次第かなぁ? あ、グエン。その肉はボクの!」
青いローブを纏った魔道士のミヨンも同意する。背丈はグエンの半分ほどながら負けないサイズのオーラを放ちながら皿の肉を次々と口に放り込む。
「そうですね。今度こそ私達のパーティーに入ってもらわないと……って、ミヨン、口元がソースで大変ですよ! レディなのに! あ、髪にも付いてるし……せっかく綺麗なブロンドなのに……もう! それに今口に入れたお肉は私のですよ!」
法衣を汚さないようエプロンを着けて食べていたモーリーも同意しつつ、ミヨンの口元と髪の汚れを拭う。
「モブ子はうるさいし細かい」
「特徴無くてすいませんね! この間も『この国の平均』って言われましたよ!」
「それ大司教様に言われたんだろ?今更だよなぁ!!」
「グエンは大き過ぎて目立つからいいですよね!」
「隠れ聖女様……プフッ」
「ミヨン、お世話するのやめますよ!?」
「それは困る!」
「まったく!当代一の魔法使いなんですからビシッとしてよね?」
「検討しますー」
「もう……リオンへ報告に一旦、パーティーホームに戻りましょう」
「そうだな。それから再出発すっか!」
「そうしようー。あれ?今日の依頼ってなんだっけ? モブ子」
「モブ子じゃない! 盗賊団の殲滅です。規模は二百人くらいと聞いています」
「そういやモーリー、この間はミヨンと二人で百人規模の盗賊団討伐だっただろ? どうやって倒したんだ?」
「あーあれ! 洞窟を拠点にしていたから魔法で水を出して流したんだよ。どばー! って」
ミヨンは両手を広げて身振りで説明する。
「おー! それいいな。一網打尽な感じで」
「その後が大変だったんですよ……」
テーブルに両手を付きながらガバッと立ち上がるミヨン。
「私のお陰で死者は出なかったですが溺死寸前の人間を百人回復ですよ! 回復は得意なのでやらないわけでは無いですが倒すべき相手を回復するって「なんじゃこりゃー!」って思うじゃないですか! あ、でも攫われていた人も数十人いたのでその人は気持ちよく回復しましたけどね!!」
「お、おう……それは良かった?な」
気圧されるグエン。
「良くはないですよ! 奪われた物も水浸しにしちゃってたから盗られた人たちからは微妙な感謝をもらうはめに……」
「でも感謝はされてお金はもらえたよ!」
ミヨンは「グー」と言いながらサムズアップ。
「グー、じゃないよ……依頼は半分失敗にとられて報酬が半分になったんだからね……」
「守銭奴聖女」
「ミヨン。今日から一人で寝てね」
泣きそうな顔でブンブン首を振る。、
「ま、そういう事があったので今回は正攻法でいきたいと思ったからグエンも一緒に行ってもらう事にしたんですよ」
モーリーはミヨンの頭を撫でると、ミヨンは泣き止みモーリーに抱きつく。
「そうだったんだ! 最近は単独の依頼ばかりだったから仲間と一緒は楽しみだ。さて、時間がもったいないから一旦帰って報告するぞ! ケイト、またな!」
三人は王都中心近くにある彼らの家に戻った。
「それはウチに来てもらわないとね!ぜひ!絶対!!」
グエンから報告を受けたリオンは文字通りバラの花びらが舞っていそうな程の笑みを浮かべた。
モーリーは汚れたミヨンを着替えさせに部屋に連れて行っていた。
「なあ、リオン。この前、会った時は誘いもしなかったな?」
「あの時はまだ復帰するか分からなかったから無理に誘うのは止めたんだよ」
「だからあっさりとしていたのか」
「そう。でも調子が戻らなくてもニコは僕たちのところに来てほしいとは思っている」
「仲間にいてくれれば頼もしいな! あの時は「噂」のニコがどんなヤツかとポーターとして同行させたのは気まぐれみたいなものだったからな……でも、いなければヤバかった」
「うん。ゴブリン討伐だったけど「王」と「将軍」が指揮を執った「軍隊」だったからね」
「俺達は負けないが、あの数じゃ倒しきれなくて近隣の町は全滅だったろうな」
「そうだね。ニコの指示を聞いていなければ防げなかった」
お願いだから聞いてください、と言ってきたのを皆んなで撥ね除けたのは今では恥ずかしい。
「あぁ、それに身のこなしもすごかったな! 俺の振ってる戦斧とミヨンの魔法のの合間をすり抜けながら剣を繰り出してたのは圧巻だった!」
「あの俊敏さは僕よりも上かもしれないね。ま、僕のほうがまだ強いけどね」
「そうだな。ちゃんと復帰してきたら声をかけてみよう」
「そうしよう! 討伐に向かう途中だったのに報告ありがとう。グエン」
「いや、飯食ってたところだからまだ向かってもいなかたしな」
「そうか、では、気をつけてね!」
丁度、顔を出しに来たモーリーとミヨンを連れてグエン達は出かけて行った。
「……彼は誰に殺されかけたのだろうか」
リオンはニコがただの事故に遭ったとは思っていない。
彼はおそらく…………。
自称「親代わり」「兄代わり」は多い。圧倒的に多いのは「姉代わり」だが。
その家族同然と思っている人たちは喜んだ。
~勇者リオンの仲間たち~
「ニコが仕事復帰するってか……リオンに教えないとな!」
重そうな鎧を着たままのグエンが肉を頬張りながら言った。
「リオンはすっごく喜ぶね! でもどこまで回復しているか次第かなぁ? あ、グエン。その肉はボクの!」
青いローブを纏った魔道士のミヨンも同意する。背丈はグエンの半分ほどながら負けないサイズのオーラを放ちながら皿の肉を次々と口に放り込む。
「そうですね。今度こそ私達のパーティーに入ってもらわないと……って、ミヨン、口元がソースで大変ですよ! レディなのに! あ、髪にも付いてるし……せっかく綺麗なブロンドなのに……もう! それに今口に入れたお肉は私のですよ!」
法衣を汚さないようエプロンを着けて食べていたモーリーも同意しつつ、ミヨンの口元と髪の汚れを拭う。
「モブ子はうるさいし細かい」
「特徴無くてすいませんね! この間も『この国の平均』って言われましたよ!」
「それ大司教様に言われたんだろ?今更だよなぁ!!」
「グエンは大き過ぎて目立つからいいですよね!」
「隠れ聖女様……プフッ」
「ミヨン、お世話するのやめますよ!?」
「それは困る!」
「まったく!当代一の魔法使いなんですからビシッとしてよね?」
「検討しますー」
「もう……リオンへ報告に一旦、パーティーホームに戻りましょう」
「そうだな。それから再出発すっか!」
「そうしようー。あれ?今日の依頼ってなんだっけ? モブ子」
「モブ子じゃない! 盗賊団の殲滅です。規模は二百人くらいと聞いています」
「そういやモーリー、この間はミヨンと二人で百人規模の盗賊団討伐だっただろ? どうやって倒したんだ?」
「あーあれ! 洞窟を拠点にしていたから魔法で水を出して流したんだよ。どばー! って」
ミヨンは両手を広げて身振りで説明する。
「おー! それいいな。一網打尽な感じで」
「その後が大変だったんですよ……」
テーブルに両手を付きながらガバッと立ち上がるミヨン。
「私のお陰で死者は出なかったですが溺死寸前の人間を百人回復ですよ! 回復は得意なのでやらないわけでは無いですが倒すべき相手を回復するって「なんじゃこりゃー!」って思うじゃないですか! あ、でも攫われていた人も数十人いたのでその人は気持ちよく回復しましたけどね!!」
「お、おう……それは良かった?な」
気圧されるグエン。
「良くはないですよ! 奪われた物も水浸しにしちゃってたから盗られた人たちからは微妙な感謝をもらうはめに……」
「でも感謝はされてお金はもらえたよ!」
ミヨンは「グー」と言いながらサムズアップ。
「グー、じゃないよ……依頼は半分失敗にとられて報酬が半分になったんだからね……」
「守銭奴聖女」
「ミヨン。今日から一人で寝てね」
泣きそうな顔でブンブン首を振る。、
「ま、そういう事があったので今回は正攻法でいきたいと思ったからグエンも一緒に行ってもらう事にしたんですよ」
モーリーはミヨンの頭を撫でると、ミヨンは泣き止みモーリーに抱きつく。
「そうだったんだ! 最近は単独の依頼ばかりだったから仲間と一緒は楽しみだ。さて、時間がもったいないから一旦帰って報告するぞ! ケイト、またな!」
三人は王都中心近くにある彼らの家に戻った。
「それはウチに来てもらわないとね!ぜひ!絶対!!」
グエンから報告を受けたリオンは文字通りバラの花びらが舞っていそうな程の笑みを浮かべた。
モーリーは汚れたミヨンを着替えさせに部屋に連れて行っていた。
「なあ、リオン。この前、会った時は誘いもしなかったな?」
「あの時はまだ復帰するか分からなかったから無理に誘うのは止めたんだよ」
「だからあっさりとしていたのか」
「そう。でも調子が戻らなくてもニコは僕たちのところに来てほしいとは思っている」
「仲間にいてくれれば頼もしいな! あの時は「噂」のニコがどんなヤツかとポーターとして同行させたのは気まぐれみたいなものだったからな……でも、いなければヤバかった」
「うん。ゴブリン討伐だったけど「王」と「将軍」が指揮を執った「軍隊」だったからね」
「俺達は負けないが、あの数じゃ倒しきれなくて近隣の町は全滅だったろうな」
「そうだね。ニコの指示を聞いていなければ防げなかった」
お願いだから聞いてください、と言ってきたのを皆んなで撥ね除けたのは今では恥ずかしい。
「あぁ、それに身のこなしもすごかったな! 俺の振ってる戦斧とミヨンの魔法のの合間をすり抜けながら剣を繰り出してたのは圧巻だった!」
「あの俊敏さは僕よりも上かもしれないね。ま、僕のほうがまだ強いけどね」
「そうだな。ちゃんと復帰してきたら声をかけてみよう」
「そうしよう! 討伐に向かう途中だったのに報告ありがとう。グエン」
「いや、飯食ってたところだからまだ向かってもいなかたしな」
「そうか、では、気をつけてね!」
丁度、顔を出しに来たモーリーとミヨンを連れてグエン達は出かけて行った。
「……彼は誰に殺されかけたのだろうか」
リオンはニコがただの事故に遭ったとは思っていない。
彼はおそらく…………。
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