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『フリスビー』
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フリスビー、何かの景品でもらった蛍光色のフリスビー。
夫との平穏だが低彩度な日常。
きっと私の本質は、映画やドラマのような高彩度の非日常をくれる男性を求めている。
夫とは大学のサークルで知りあった。穏やかで、セーターが似合い、高身長も好きだった。
結婚。
しかし心でそんな事じゃダメだと抗しつつも、日常はどんどん色褪せていく。
とうに魔法は溶け、ただの大柄な男に見えてしょうがない。
旧友は「あんな温厚でいい男性はめったにいないって。贅沢病よ」と言うけれど。
夫がフリスビーをしに行こうと言い、広い原っぱへ。
いい機会だ、この秘めていた気持ちを大声で表現せねば。
「私のこと、知ってた!?」
フリスビーはおきゃんなカーブで飛び、夫の頭上を越していく。
「知っているよ、昔から」
「そうじゃなくてっ!」
喉元まで出かかった「一度、別居してみない?ごめん、私のせいなの」を押しとどめる。
夫との学友から夫婦生活への酸い甘い想い出、フリスビーは上がり、下がり、回る。
蛍光色は回りつづける。
数秒だったか、回る蛍光に魅入っていて、脳裏にあることが閃いてしまった。
・・・。
私の病弱な子供時代、駄々をこじらせて酷い咳をしてから、過剰に溺愛された。
華やかな贅沢ばかり与えられ、いつしか当然だと思うようになり、洞窟みたいな心の一番奥で氷柱(つらら)が太くなっていくようにそれが増大し、異形の女王像へと完成し君臨していた、と。
クラクラし、三つ葉のクローバー草だらけの地面にへたりこむ。
「おーぃ、どうしたの。おーぃ」
「うぅん、何でもないの」
私は目をこすって徐々に蘇生するように立ち上がった。
私の異形の女王像に退位してもらおう、デキるよきっと。
色褪せてると思っていた日常は、
私の分際を軽く超えてる位の、まばゆい蛍光色のフリスビーだった。
夫は必死な外野手、リトリバー犬よろしく私のどんな投げっぷりにも視界いっぱい右往左往し受けとめてくれている。
受けとめる感触にただ充実を感じているよう。
なんだか、お腹もすっからかんに空いてきた。
「学生時代に通った店、デカ盛りタンメン食べに行こうよ」と叫び、
力一杯のスロウで愛おしい蛍光色を投げた。
「やったぁー、分かったぞ、タンメン大好きだと言いたかったんだ」
「そうじゃなくてっ!!」
夫との平穏だが低彩度な日常。
きっと私の本質は、映画やドラマのような高彩度の非日常をくれる男性を求めている。
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とうに魔法は溶け、ただの大柄な男に見えてしょうがない。
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夫がフリスビーをしに行こうと言い、広い原っぱへ。
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数秒だったか、回る蛍光に魅入っていて、脳裏にあることが閃いてしまった。
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華やかな贅沢ばかり与えられ、いつしか当然だと思うようになり、洞窟みたいな心の一番奥で氷柱(つらら)が太くなっていくようにそれが増大し、異形の女王像へと完成し君臨していた、と。
クラクラし、三つ葉のクローバー草だらけの地面にへたりこむ。
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