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第二章 葬送
第四節 berserker
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一人の男が、月を背にして、樹の上に立っている。
背の高い樹で、幹も太い。大の男が複数人、手を繋いでぐるりを回っても、一〇人が必要か否か、というくらいの見事な巨樹であった。
周りの樹から、頭一つ分飛び出したその樹の頂上に、男は立っている。
太い幹から横に伸びる太い枝の上ではない。まだまだ空へ自らを押し上げる事を望んでいるかのように尖った樹のてっぺん、足を置く事など普通は出来そうもない先端に立っているのだ。
右足をほんの少しだけ持ち上げている。虚空に浮かべているようだった。
樹の上に身体を固定しているのは、左足のみであった。左足の親指と人差し指で、樹の先端を挟んでいるのだ。
足の指の把持力もバランス感覚も、並の人間ではない。
男はディバーダ族の衣装を身に着けていた。
二つに分かれた下衣を膝まで捲り、脛には金属の脛当てをし、その上から包帯で固定している。
袷の上衣を羽織っていたが、前は開くままにしている。腹にも包帯を巻き付けていた。手首までを包む服は、最上位の戦士であるナーガ・ゾデの証だ。
肩の部分が妙に膨らんでいる。恐らく服の内側に、金属の装甲を身に着けているらしかった。
頸には複数の鎖を垂らした金属の輪を嵌めている。こうしたアクセサリーはゾデ戦士ばかりではなく、名もなき下級戦士たちも身に着けているが、ゾデ戦士になって階級を上げてゆくに連れて、次第に豪奢なものになってゆく。男の首輪から垂れる鎖は、多くの装飾品が銀色であるのに対し、金の輝きがあった。
男は長時間、樹の上でそうしていた。
樹の海の向こうに、月を喰らおうとする地上の鷲が見える。ヴァーマ・ドゥエルの砦に近い巨大な崖だった。あの崖のこちら側は断層になっており、その土地の作りもあって、ヴァーマ・ドゥエルへと攻め入る事が難しくなっていた。
と、樹の根元に近付く気配を、男は察知した。
すると男は、ぱっと左足の指を開きながら、後方に身体を逸らした。
重力に引かれて、男の身体が逆さまに落下してゆく。
男は地上近くで身を翻し、膝をたわめて着地の衝撃を殺した。
「相変わらず不気味な奴よ……」
そう言ったのは、ダブーラ・アブ・シャブーラであった。
男が樹上で感知した気配というのは、このダブーラのものであったようだ。
男は顔を持ち上げた。
その顔に至るまで、男は包帯を巻き付けていた。露出しているのは、赤い唇だけだ。鼻も妙に低い気がする。視覚も聴覚も嗅覚も自ら閉ざしており、どうやって気配を察知しているのか分からず、不気味であった。
「何か用か、ダブーラ」
「昼頃の礼を……」
ダブーラは軽く頭を下げた。昼頃――即ち、ヴァーマ・ドゥエルに侵攻した際の事だ。ダブーラはそこで、ヴァーマ・ドゥエルが誇る戦士、トゥケィ=ゼノキスァと戦った。彼が持ち出した巨大な石鉈を奪い、その重量に悪戦苦闘しながらも、彼を追い詰めた。
しかし最後の一合、トゥケィ=ゼノキスァはダブーラの片脚を破壊し、あまつさえ睾丸を踏み潰して痛みに悶絶させ、あわやという所まで逆転してしまった。
その時、ガビジ――鉄製の棒状の暗器をトゥケィの眉間に投げて突き立てたのが、この包帯を巻き付けた男――
「ハーラ・グル・アーヤバよ」
「構わんさ」
ハーラ・グル・アーヤバと呼ばれた男は、感情を見せずに礼を受け取った。眼を見る事が出来ないから、感情を読み取れないのではない。彼と相対した人物は誰もが、人形と会話している気分になる。
ダブーラは顔を上げると、しかし口にしたお礼の言葉とは真逆の表情を浮かべていた。
「しかしハーラ・グル・アーヤバよ、我らが誇るナーガ・ゾデのククーラよ、何故、私と奴との神聖なる遊戯に水を差したのだ。我らゾデ戦士の掟を忘れたか、貴方ともあろう者が。例え命を落とす事になろうとも、互いの遊戯に横槍を入れる事は、重大な罪に当たるのだぞ」
ディバーダ族は狩猟民族である。
彼らの獲物は、別の部族の人間だった。
そして彼らは自分たちの生業とする狩猟を、遊戯と呼び、明確な規則の下で行なっていた。
多数で多数を攻める侵略遊戯では、その限りではない。しかしこの形式では、何人の人間を殺害し捕食しても、ゾデ戦士への昇格は不可能だった。
ゾデ戦士になり、更に上位への昇格を目指すのであれば、何人の人間を殺したのか、その明確な証拠を持ち帰って証明し、複数の証人の前で食す事で認められなければならない。
「ハーラ・グル・アーヤバよ、偉大なる我らの狂戦士よ、如何に貴方と雖も、あのような助力は許せない。お蔭で私は、この脚と子種を無駄に失った事になる……」
ゾデ昇格の儀式に立ち会う神官は、証拠として持ち帰った相手の一部から情報を読み取る事が出来る。ダブーラがトゥケィの遺体の一部を持ち帰れば、ダブーラ自身が言っていたように、普通の戦士一〇人分の得点を手にした事であろう。しかしその打倒にハーラ・グル・アーヤバの助力があったと知れれば、ダブーラの遊戯の得点としては認められない。
それでは、片脚を潰され、睾丸を踏み潰された甲斐もなかった。
「命に勝るものはないだろう」
ハーラ・グル・アーヤバが言った。
ダブーラ・アブ・シャブーラは眉を寄せた。
「まるでヴァーマ・ドゥエルの腰抜けのような事を言う……。我らにとって命とは、奪い、奪われるものだ。遊戯の中で死するは本望よ。我らは死を嘆かず赤き血の中で哄笑と共に死ぬ!」
ハーラは激昂するダブーラの前で、どのような反応も見せなかった。だがダブーラも、言葉で相手をなじる以上の事を、ハーラに対しては出来なかった。ハーン・ゾデとナーガ・ゾデの戦士では、天と地程の実力差がある事を知っている。ましてやダブーラは、凄まじい回復力で立ち直っているものの、腹部には今にも吐き出しそうな熱を孕み、立っているだけで脚に激痛が走る。
「ダブーラの言う通りだ……」
そこに、女が一人やって来た。
ダブーラは彼女の姿を確認すると、その場で跪こうとした。
それを制した女が、慈愛の眼で言う。
「良い、そのままで。ダブーラ・アブ・シャブーラ、ハーン・ゾデのククーラよ。負傷を押してまで通す礼など古き者の慣習だ。我らディバーダは進化の一族、既に骸と化した人の型など要らぬと心得よ」
「は……我らがディバーダのカムンナーギ、メルバよ。心遣い、痛み入る」
カムンナーギとは、ディバーダ族の最高位であり、ナーガ・ゾデに匹敵する神官の事である。ナーガが男性形で、女性形はナーギになるこの言葉は、“神の”、“超常的な”、などという意味を持つ。
メルバが身に着けているカムンナーギの服装は、ヴァーマ・ドゥエルの服と同じ筒形の貫頭衣で、襟から膝下までの大きな布が使われている。ゾデ部分は手首に近付くに連れて広がってゆくが、肩を露出している。ヒヒイロカネの装飾品もゾデ戦士より大きく、立派だ。特に眼を惹くのが、金色のヘッドドレスである。
カムンナーギ・メルバは非常に整った顔立ちの女で、宝石のような瞳と濡れた花のような唇を持っていた。
「姉よ、何の用だ」
「弟よ、ナーガ・ゾデのククーラよ、今のお前の言葉、お前の地位に相応しき者か、良く考えよ」
メルバはハーラに言った。
戦闘狩猟民族ディバーダ族にとって、最強の戦士は最高指導者の意味でもある。その補佐にいるのがカムンナーギであった。そしてカムンナーギはナーガ・ゾデのククーラの肉親という事になっている。最強のゾデ戦士が、しかし最良の指導者という事は滅多になく、実権はカムンナーギが握る事が通例であった。
しかしこの代のナーガ・ゾデのククーラ、即ちハーラ・グル・アーヤバの指導者としての能力は、歴代指導者の中に於いて最も低いと言う事が出来る。ナーガ・ゾデに次ぐヅィバン・ナーガ・ゾデの集まる会合にも参加せず、侵略の際にも作戦指揮官を無視して勝手気ままに行動する。あまつさえ、他のゾデ戦士の遊戯にちょっかいを出す始末だ。
仮にハーラ・グル・アーヤバでなければ、既にヅィバン・ナーガ・ゾデの戦士たちによって、反旗を翻されている事だろう。
尤も――
「気に入らない事があるのならば、掛かってくれば良い、一人でも二人でも、ディバーダ族総出でもな」
ハーラは何でもないように言った。
「それがディバーダのやり方だろう」
「――」
メルバは口を閉ざした。ダブーラ・アブ・シャブーラも、ハーラの言う事は分かっている。
ディバーダ族は戦闘民族だ。人をどれだけ殺したかによって部族内での地位が向上する。その最高位たるナーガ・ゾデとして認められるには、ヅィバン・ハーン・ゾデまで昇格した上で、ナーガ・ゾデとの一対一の決闘を制さなければならない。
当然、ハーラ・グル・アーヤバも、先代ナーガ・ゾデとの戦いに於いて、勝利を収めている。
だが、このハーラ・グル・アーヤバの戦績は、歴代ナーガ・ゾデの記録を大幅に上回るものであった。
アージュラ族、バッグベム族、リオディン・ダグラ族、フィダス族、ドドラグラ族、そしてヴァーマ・ドゥエル、これら敵対する六部族全て合わせて、一三二七もの首級を挙げ、そのまま先代ナーガ・ゾデのククーラを殺害して、
ディバーダ族の長老として有無を言わせず認めさせたのだ。
しかも、その当時から、ハーラ・グル・アーヤバは眼と耳と鼻を覆い隠す包帯を巻き付けていた。更に言うのならば、当時のハーラはガビジを数本携帯していただけで、実際に敵を殺す折には素手にて残虐を行なった。
それから一〇年、ハーラは指導者としてではなく相変わらずの狂戦士として在り続けたのだ。
背の高い樹で、幹も太い。大の男が複数人、手を繋いでぐるりを回っても、一〇人が必要か否か、というくらいの見事な巨樹であった。
周りの樹から、頭一つ分飛び出したその樹の頂上に、男は立っている。
太い幹から横に伸びる太い枝の上ではない。まだまだ空へ自らを押し上げる事を望んでいるかのように尖った樹のてっぺん、足を置く事など普通は出来そうもない先端に立っているのだ。
右足をほんの少しだけ持ち上げている。虚空に浮かべているようだった。
樹の上に身体を固定しているのは、左足のみであった。左足の親指と人差し指で、樹の先端を挟んでいるのだ。
足の指の把持力もバランス感覚も、並の人間ではない。
男はディバーダ族の衣装を身に着けていた。
二つに分かれた下衣を膝まで捲り、脛には金属の脛当てをし、その上から包帯で固定している。
袷の上衣を羽織っていたが、前は開くままにしている。腹にも包帯を巻き付けていた。手首までを包む服は、最上位の戦士であるナーガ・ゾデの証だ。
肩の部分が妙に膨らんでいる。恐らく服の内側に、金属の装甲を身に着けているらしかった。
頸には複数の鎖を垂らした金属の輪を嵌めている。こうしたアクセサリーはゾデ戦士ばかりではなく、名もなき下級戦士たちも身に着けているが、ゾデ戦士になって階級を上げてゆくに連れて、次第に豪奢なものになってゆく。男の首輪から垂れる鎖は、多くの装飾品が銀色であるのに対し、金の輝きがあった。
男は長時間、樹の上でそうしていた。
樹の海の向こうに、月を喰らおうとする地上の鷲が見える。ヴァーマ・ドゥエルの砦に近い巨大な崖だった。あの崖のこちら側は断層になっており、その土地の作りもあって、ヴァーマ・ドゥエルへと攻め入る事が難しくなっていた。
と、樹の根元に近付く気配を、男は察知した。
すると男は、ぱっと左足の指を開きながら、後方に身体を逸らした。
重力に引かれて、男の身体が逆さまに落下してゆく。
男は地上近くで身を翻し、膝をたわめて着地の衝撃を殺した。
「相変わらず不気味な奴よ……」
そう言ったのは、ダブーラ・アブ・シャブーラであった。
男が樹上で感知した気配というのは、このダブーラのものであったようだ。
男は顔を持ち上げた。
その顔に至るまで、男は包帯を巻き付けていた。露出しているのは、赤い唇だけだ。鼻も妙に低い気がする。視覚も聴覚も嗅覚も自ら閉ざしており、どうやって気配を察知しているのか分からず、不気味であった。
「何か用か、ダブーラ」
「昼頃の礼を……」
ダブーラは軽く頭を下げた。昼頃――即ち、ヴァーマ・ドゥエルに侵攻した際の事だ。ダブーラはそこで、ヴァーマ・ドゥエルが誇る戦士、トゥケィ=ゼノキスァと戦った。彼が持ち出した巨大な石鉈を奪い、その重量に悪戦苦闘しながらも、彼を追い詰めた。
しかし最後の一合、トゥケィ=ゼノキスァはダブーラの片脚を破壊し、あまつさえ睾丸を踏み潰して痛みに悶絶させ、あわやという所まで逆転してしまった。
その時、ガビジ――鉄製の棒状の暗器をトゥケィの眉間に投げて突き立てたのが、この包帯を巻き付けた男――
「ハーラ・グル・アーヤバよ」
「構わんさ」
ハーラ・グル・アーヤバと呼ばれた男は、感情を見せずに礼を受け取った。眼を見る事が出来ないから、感情を読み取れないのではない。彼と相対した人物は誰もが、人形と会話している気分になる。
ダブーラは顔を上げると、しかし口にしたお礼の言葉とは真逆の表情を浮かべていた。
「しかしハーラ・グル・アーヤバよ、我らが誇るナーガ・ゾデのククーラよ、何故、私と奴との神聖なる遊戯に水を差したのだ。我らゾデ戦士の掟を忘れたか、貴方ともあろう者が。例え命を落とす事になろうとも、互いの遊戯に横槍を入れる事は、重大な罪に当たるのだぞ」
ディバーダ族は狩猟民族である。
彼らの獲物は、別の部族の人間だった。
そして彼らは自分たちの生業とする狩猟を、遊戯と呼び、明確な規則の下で行なっていた。
多数で多数を攻める侵略遊戯では、その限りではない。しかしこの形式では、何人の人間を殺害し捕食しても、ゾデ戦士への昇格は不可能だった。
ゾデ戦士になり、更に上位への昇格を目指すのであれば、何人の人間を殺したのか、その明確な証拠を持ち帰って証明し、複数の証人の前で食す事で認められなければならない。
「ハーラ・グル・アーヤバよ、偉大なる我らの狂戦士よ、如何に貴方と雖も、あのような助力は許せない。お蔭で私は、この脚と子種を無駄に失った事になる……」
ゾデ昇格の儀式に立ち会う神官は、証拠として持ち帰った相手の一部から情報を読み取る事が出来る。ダブーラがトゥケィの遺体の一部を持ち帰れば、ダブーラ自身が言っていたように、普通の戦士一〇人分の得点を手にした事であろう。しかしその打倒にハーラ・グル・アーヤバの助力があったと知れれば、ダブーラの遊戯の得点としては認められない。
それでは、片脚を潰され、睾丸を踏み潰された甲斐もなかった。
「命に勝るものはないだろう」
ハーラ・グル・アーヤバが言った。
ダブーラ・アブ・シャブーラは眉を寄せた。
「まるでヴァーマ・ドゥエルの腰抜けのような事を言う……。我らにとって命とは、奪い、奪われるものだ。遊戯の中で死するは本望よ。我らは死を嘆かず赤き血の中で哄笑と共に死ぬ!」
ハーラは激昂するダブーラの前で、どのような反応も見せなかった。だがダブーラも、言葉で相手をなじる以上の事を、ハーラに対しては出来なかった。ハーン・ゾデとナーガ・ゾデの戦士では、天と地程の実力差がある事を知っている。ましてやダブーラは、凄まじい回復力で立ち直っているものの、腹部には今にも吐き出しそうな熱を孕み、立っているだけで脚に激痛が走る。
「ダブーラの言う通りだ……」
そこに、女が一人やって来た。
ダブーラは彼女の姿を確認すると、その場で跪こうとした。
それを制した女が、慈愛の眼で言う。
「良い、そのままで。ダブーラ・アブ・シャブーラ、ハーン・ゾデのククーラよ。負傷を押してまで通す礼など古き者の慣習だ。我らディバーダは進化の一族、既に骸と化した人の型など要らぬと心得よ」
「は……我らがディバーダのカムンナーギ、メルバよ。心遣い、痛み入る」
カムンナーギとは、ディバーダ族の最高位であり、ナーガ・ゾデに匹敵する神官の事である。ナーガが男性形で、女性形はナーギになるこの言葉は、“神の”、“超常的な”、などという意味を持つ。
メルバが身に着けているカムンナーギの服装は、ヴァーマ・ドゥエルの服と同じ筒形の貫頭衣で、襟から膝下までの大きな布が使われている。ゾデ部分は手首に近付くに連れて広がってゆくが、肩を露出している。ヒヒイロカネの装飾品もゾデ戦士より大きく、立派だ。特に眼を惹くのが、金色のヘッドドレスである。
カムンナーギ・メルバは非常に整った顔立ちの女で、宝石のような瞳と濡れた花のような唇を持っていた。
「姉よ、何の用だ」
「弟よ、ナーガ・ゾデのククーラよ、今のお前の言葉、お前の地位に相応しき者か、良く考えよ」
メルバはハーラに言った。
戦闘狩猟民族ディバーダ族にとって、最強の戦士は最高指導者の意味でもある。その補佐にいるのがカムンナーギであった。そしてカムンナーギはナーガ・ゾデのククーラの肉親という事になっている。最強のゾデ戦士が、しかし最良の指導者という事は滅多になく、実権はカムンナーギが握る事が通例であった。
しかしこの代のナーガ・ゾデのククーラ、即ちハーラ・グル・アーヤバの指導者としての能力は、歴代指導者の中に於いて最も低いと言う事が出来る。ナーガ・ゾデに次ぐヅィバン・ナーガ・ゾデの集まる会合にも参加せず、侵略の際にも作戦指揮官を無視して勝手気ままに行動する。あまつさえ、他のゾデ戦士の遊戯にちょっかいを出す始末だ。
仮にハーラ・グル・アーヤバでなければ、既にヅィバン・ナーガ・ゾデの戦士たちによって、反旗を翻されている事だろう。
尤も――
「気に入らない事があるのならば、掛かってくれば良い、一人でも二人でも、ディバーダ族総出でもな」
ハーラは何でもないように言った。
「それがディバーダのやり方だろう」
「――」
メルバは口を閉ざした。ダブーラ・アブ・シャブーラも、ハーラの言う事は分かっている。
ディバーダ族は戦闘民族だ。人をどれだけ殺したかによって部族内での地位が向上する。その最高位たるナーガ・ゾデとして認められるには、ヅィバン・ハーン・ゾデまで昇格した上で、ナーガ・ゾデとの一対一の決闘を制さなければならない。
当然、ハーラ・グル・アーヤバも、先代ナーガ・ゾデとの戦いに於いて、勝利を収めている。
だが、このハーラ・グル・アーヤバの戦績は、歴代ナーガ・ゾデの記録を大幅に上回るものであった。
アージュラ族、バッグベム族、リオディン・ダグラ族、フィダス族、ドドラグラ族、そしてヴァーマ・ドゥエル、これら敵対する六部族全て合わせて、一三二七もの首級を挙げ、そのまま先代ナーガ・ゾデのククーラを殺害して、
ディバーダ族の長老として有無を言わせず認めさせたのだ。
しかも、その当時から、ハーラ・グル・アーヤバは眼と耳と鼻を覆い隠す包帯を巻き付けていた。更に言うのならば、当時のハーラはガビジを数本携帯していただけで、実際に敵を殺す折には素手にて残虐を行なった。
それから一〇年、ハーラは指導者としてではなく相変わらずの狂戦士として在り続けたのだ。
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