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第五章 変身
第二節 roar
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酷く憔悴した様子のトゥケィは、変装の為に着ていたリオディン・ダグラ族の衣装も脱ぎ、腰巻きだけをしたほぼ半裸の状態であった。その手にあの石鉈はなかったが、その肩に、タムザ・クファーンとバラド=ドラグールの使用していた赤い鎧を担いでいる。
その逞しい裸体は、赤黒い液体で汚れていた。本人にそこまでの出血を伴うような傷痕は見えず、タムザ・クファーンの返り血だろうかと、オウマは思った。
「トゥケィ……」
真っ先に駆け寄り、彼を労ったのはオウマだ。
「やったのか……?」
「ああ……」
トゥケィは堪らない自己嫌悪に襲われているような表情だった。殺さずに勝つ事を誓っていたのに、タムザ・クファーンの命を奪ってしまった事を、大変後悔しているようだった。
オウマは彼の激しい悔悟の念を知り、優しく肩を叩いた。
「あれはどうした?」
オウマが、石鉈の所在について訊いた。ドドラグラ族の総帥を討ち、リオディン・ダグラ族の頭領を斃した巨大な石鉈は、これからヴァーマ・ドゥエルの力の象徴となろう。
トゥケィは黙って、腰からそれを引き抜いた。それは、あの石鉈とは似ても似つかない、一対二本の湾曲した刃物であった。刃先から柄に至るまで、全て赤い光を孕んだ金属で造られている。
「石鉈の……中から……これが、出て……来た」
トゥケィはその表情からも消耗の度合いが伺われ、掠れた声や虚ろな眼は、これ以上の会話を望まない事を物語っていた。
オウマは偉大なる戦友の体力を考慮し、話は後で聞く事を決めた。
今は、故郷に戻る事が先決だ。
「帰ろう、トゥケィ。俺たちの故郷に……」
「ああ……」
トゥケィは力なく頷き、ふらふらと歩み始めた。血まみれの彼を畏れて、しかし同時に敬って、女たちが道を開けた。そして自然と、彼の後を、馬を曳いて付いてゆく。
殿を務めるのはオウマであったが、彼の傍に、マキアは留まっていた。彼女の性格であれば、兄の傍にいる事を一番望んでいる筈だったのに。
「どうしたんだ」
「い、いえ……」
「早くしないと遅れるぞ」
オウマは仕方なしに、マキアを抱き上げて運んでやる事にした。彼女の体重は思った以上に軽い。まるで赤ん坊の大きさをした綿の塊のようだった。
「オウマさん……」
マキアは小声で、オウマにだけ聞こえるように囁いた。
「あ?」
「あれは……あれは本当に、お兄さんなんでしょうか……?」
そんな事を、マキアは言った。
「あれは……あれは本当に、お兄さんなんでしょうか……?」
マキアがそう言うのが、俺には聞こえた。
マキアは小声で言った心算なのだろう。いや、実際、小さな声で、今、マキアを抱えているオウマにだけ聞こえるくらいの声量で、彼女は言った筈だ。
だが俺は、五〇人近くの女たちと、馬たちを率いながら歩いており、マキアとオウマはその殿にいる。
あのような声量で、俺の耳まで届く訳がないのだった。
だのに俺は、マキアの声を聞く事が出来てしまっていた。
眼が見えないマキアは、その人の気配で、個人を識別する。
気配とは、足音や声、匂い、自分との間合いの取り方、などである。そしてマキアが言うには、それに加えて、自分の前に立つ気配の中に存在する、ぼんやりとした空気を感じ取って、人を区別しているらしい。
その空気をカーラは、ソッツァフィムと呼んでいた。ソッツァとは魂の事、フィムとは形状を意味するフィの変化形だ。意味合いとしてはアィダラに近いものかもしれないが、ソッツァフィムというのは、生前のものである。
個人が所持するソッツァには、それぞれの形状があり、このソッツァフィムを読み取る事が出来れば、例え姿を隠していてもその人物が誰であるか、分かるらしい。これは司祭の一族、即ちルマ族やフルマ族には不可欠な能力であり、この能力を習得しない事には、祈祷師の座を継ぐ事は出来ない。
マキアは常に、その技術を要求されて来た。眼の見えない世界で、音もなく近付いて来る悪意を感じ取らなければ、すぐにでも追放されてしまうような生き方だったのだ。
その鋭敏な感覚――視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に次ぐ、第六感と言うべきものを磨き続けて来たマキアは、その感覚を用いて、俺の存在を疑ったのである。
あれは本当に、トゥケィ……自分の兄なのか。
オウマはこの問いに対して、「当り前じゃないか」と、返していた。
妙な事を言うもんじゃない、と、苦笑さえしている。
きっと、他の誰に言ってもそういう答えが返って来るだろう。
だが、俺には分かっている。俺は、恐らく既に、昨日までのトゥケィ=ゼノキスァではない事を。
タムザ・クファーンとの戦いの中で、俺はその現実を、ありありと見せ付けられ、そして体験したのだから。
ナーガ・ゾデのククーラが発した赤黒い光の珠を受けたタムザ・クファーンは、その場で胸を押さえて倒れ込み、呻き声を上げながらのた打ち回った。
地面を転がり、樹の根元にぶつかって悶え、身体を丸めたり伸ばしたりを繰り返している。
悲鳴を這い上げるのに顎をばっくりと開き、赤い舌を天に伸ばしていた。唾液でぐしょ濡れになった顔に欠陥が太く浮かび上がり、眼がぎょろぎょろと突き出して来る。
とてもまともな人間が浮かべる表情であるとは、思えなかった。例え蛮人であるリオディン・ダグラ族の頭領であっても、その残酷さは人間であるが故の冷徹な残虐だ。今のタムザ・クファーンが浮かべているのは、苦悶と激痛の向こう側にあるものだ。
「げおっ」
タムザ・クファーンは仰向けになった状態で、背中をぐっと逸らした。尻が浮かび上がり、頭頂部が身体を支えて、大きな橋を作った。
心臓の鼓動が飛び出しているように、分厚い胸筋がもこもこと膨れ上がる。赤い鎧の手を使って衣服を裂き、肋骨や胸骨を砕いて膨張した心臓を包む皮膚を、剥き出した。
異常だ。
どれだけ心臓が鼓動を速めたとて、あんな事にはならない筈だ。
何だ?
何が起こっている!?
ナーガ・ゾデのククーラは何をしたんだ!?
当の本人であるナーガ・ゾデのククーラは、唇にのみ楽しげな色を浮かべて、タムザ・クファーンが悶えているさまを包帯の奥から眺めている。
タムザ・クファーンがこうなったのは、ナーガ・ゾデのククーラが放つ赤黒い光球を受けたからだ。ともすると俺も、あのような目に遭っていたのかもしれない。
タムザ・クファーンは今度は寝返りを打ってうつ伏せになり、身体を内側に丸め込んで激しく呻いた。腹の下に潜り込ませた頭部ががくがくと揺れ、咽喉が逆流する音がする。げぇげぇと、口から腹の中のものを吐き出していた.酸っぱい匂いの中に、何となく甘い香りが混じっている。さっき飲んでいた、酒だ。
そこで俺は、奇妙な事に気付いた。
奴の……タムザ・クファーンの身体が、何となく、大きくなっているような気がしたのだ。
タムザ・クファーンは一頻り吐瀉を撒き散らすと、又、もんどりうって転げ回った。タムザ・クファーンは鎧を身に着けており、その硬い鎧が、樹の幹を傷付け、うろを剥がす。最初に付けた傷よりも明らかに高い位置に、腕を持ち上げたりはしていないのに、鋭い切れ込みが入っている。
その違和感を覚えた時、同時に、鎧の方が小さくなっているのではないかとも思った。
元から、ドドラグラ族の使うような大柄な鎧ではない。しかし張り出した肩は、身に着けていて充分、身体をより大きく見せる。今、タムザ・クファーンの鎧は、腕に布を巻き付けた程度の大きさに変わっていた。
金属が何でもないのにあんな風に変形する訳がない。だから、異変が生じているとすればそれはタムザ・クファーンの肉体の方である。彼の身体は、やはり、見る見る大きくなっているのだった。
タムザ・クファーンは荒く息を付きながら、心臓を胸の中に抑え込むと、鎧の手を一本の樹の幹に引っ掛け、身体を持ち上げた。ぬぅっと立ち上がった時、彼の身長は俺を越え、アーヴァン以上のものになっていた。
ばきん、ばきん、という太い枝を断ち折るような音が、奴の膝の下で連続した。脛の骨が、急激に肥大化した上半身の重みに耐え切れなくなり、圧し折れているのだ。当然、そんな事は起こらない。脚の太さも数倍になっており、筋肉の圧力で挟み折られたものであるらしかった。
あるのか……
そんな事が、あるのか!?
タムザ・クファーンの全身で、同じ事が起こっている。
脛、膝、腿、腰、背骨、肩、腕、頸……タムザ・クファーンの身体中の骨という骨が軋み、潰れてゆく。骨格を自らの身体で締め上げるタムザ・クファーンは、そのたびに肥大化してゆくようであった。
骨を圧し折り、その巨大な肉体を直立させる事が出来なくなったタムザ・クファーンは、自分が立ち上がる頼りとした樹に寄り掛かった。そしてそのまま、根元から押し倒してしまう。上の方の枝が、近くの樹を巻き込んで千切れ、こずえの先にぶら下がっていた葉っぱが舞い落ちる。
ずん……と、倒れた樹の上で、タムザ・クファーンが上体を逸らした。背骨がないものであるかのように、彼の腰はほぼ垂直に反り返っている。
顎をがばっと開き、天を仰ぐ。その瞬間、タムザ・クファーンの口が、食道と真っ直ぐに繋がったようであった。
「をぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~っ」
ケダモノそのままの絶叫が、タムザ・クファーンの腹の底から迸った。
本当におぞましい事は、ここから起こった。
その逞しい裸体は、赤黒い液体で汚れていた。本人にそこまでの出血を伴うような傷痕は見えず、タムザ・クファーンの返り血だろうかと、オウマは思った。
「トゥケィ……」
真っ先に駆け寄り、彼を労ったのはオウマだ。
「やったのか……?」
「ああ……」
トゥケィは堪らない自己嫌悪に襲われているような表情だった。殺さずに勝つ事を誓っていたのに、タムザ・クファーンの命を奪ってしまった事を、大変後悔しているようだった。
オウマは彼の激しい悔悟の念を知り、優しく肩を叩いた。
「あれはどうした?」
オウマが、石鉈の所在について訊いた。ドドラグラ族の総帥を討ち、リオディン・ダグラ族の頭領を斃した巨大な石鉈は、これからヴァーマ・ドゥエルの力の象徴となろう。
トゥケィは黙って、腰からそれを引き抜いた。それは、あの石鉈とは似ても似つかない、一対二本の湾曲した刃物であった。刃先から柄に至るまで、全て赤い光を孕んだ金属で造られている。
「石鉈の……中から……これが、出て……来た」
トゥケィはその表情からも消耗の度合いが伺われ、掠れた声や虚ろな眼は、これ以上の会話を望まない事を物語っていた。
オウマは偉大なる戦友の体力を考慮し、話は後で聞く事を決めた。
今は、故郷に戻る事が先決だ。
「帰ろう、トゥケィ。俺たちの故郷に……」
「ああ……」
トゥケィは力なく頷き、ふらふらと歩み始めた。血まみれの彼を畏れて、しかし同時に敬って、女たちが道を開けた。そして自然と、彼の後を、馬を曳いて付いてゆく。
殿を務めるのはオウマであったが、彼の傍に、マキアは留まっていた。彼女の性格であれば、兄の傍にいる事を一番望んでいる筈だったのに。
「どうしたんだ」
「い、いえ……」
「早くしないと遅れるぞ」
オウマは仕方なしに、マキアを抱き上げて運んでやる事にした。彼女の体重は思った以上に軽い。まるで赤ん坊の大きさをした綿の塊のようだった。
「オウマさん……」
マキアは小声で、オウマにだけ聞こえるように囁いた。
「あ?」
「あれは……あれは本当に、お兄さんなんでしょうか……?」
そんな事を、マキアは言った。
「あれは……あれは本当に、お兄さんなんでしょうか……?」
マキアがそう言うのが、俺には聞こえた。
マキアは小声で言った心算なのだろう。いや、実際、小さな声で、今、マキアを抱えているオウマにだけ聞こえるくらいの声量で、彼女は言った筈だ。
だが俺は、五〇人近くの女たちと、馬たちを率いながら歩いており、マキアとオウマはその殿にいる。
あのような声量で、俺の耳まで届く訳がないのだった。
だのに俺は、マキアの声を聞く事が出来てしまっていた。
眼が見えないマキアは、その人の気配で、個人を識別する。
気配とは、足音や声、匂い、自分との間合いの取り方、などである。そしてマキアが言うには、それに加えて、自分の前に立つ気配の中に存在する、ぼんやりとした空気を感じ取って、人を区別しているらしい。
その空気をカーラは、ソッツァフィムと呼んでいた。ソッツァとは魂の事、フィムとは形状を意味するフィの変化形だ。意味合いとしてはアィダラに近いものかもしれないが、ソッツァフィムというのは、生前のものである。
個人が所持するソッツァには、それぞれの形状があり、このソッツァフィムを読み取る事が出来れば、例え姿を隠していてもその人物が誰であるか、分かるらしい。これは司祭の一族、即ちルマ族やフルマ族には不可欠な能力であり、この能力を習得しない事には、祈祷師の座を継ぐ事は出来ない。
マキアは常に、その技術を要求されて来た。眼の見えない世界で、音もなく近付いて来る悪意を感じ取らなければ、すぐにでも追放されてしまうような生き方だったのだ。
その鋭敏な感覚――視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に次ぐ、第六感と言うべきものを磨き続けて来たマキアは、その感覚を用いて、俺の存在を疑ったのである。
あれは本当に、トゥケィ……自分の兄なのか。
オウマはこの問いに対して、「当り前じゃないか」と、返していた。
妙な事を言うもんじゃない、と、苦笑さえしている。
きっと、他の誰に言ってもそういう答えが返って来るだろう。
だが、俺には分かっている。俺は、恐らく既に、昨日までのトゥケィ=ゼノキスァではない事を。
タムザ・クファーンとの戦いの中で、俺はその現実を、ありありと見せ付けられ、そして体験したのだから。
ナーガ・ゾデのククーラが発した赤黒い光の珠を受けたタムザ・クファーンは、その場で胸を押さえて倒れ込み、呻き声を上げながらのた打ち回った。
地面を転がり、樹の根元にぶつかって悶え、身体を丸めたり伸ばしたりを繰り返している。
悲鳴を這い上げるのに顎をばっくりと開き、赤い舌を天に伸ばしていた。唾液でぐしょ濡れになった顔に欠陥が太く浮かび上がり、眼がぎょろぎょろと突き出して来る。
とてもまともな人間が浮かべる表情であるとは、思えなかった。例え蛮人であるリオディン・ダグラ族の頭領であっても、その残酷さは人間であるが故の冷徹な残虐だ。今のタムザ・クファーンが浮かべているのは、苦悶と激痛の向こう側にあるものだ。
「げおっ」
タムザ・クファーンは仰向けになった状態で、背中をぐっと逸らした。尻が浮かび上がり、頭頂部が身体を支えて、大きな橋を作った。
心臓の鼓動が飛び出しているように、分厚い胸筋がもこもこと膨れ上がる。赤い鎧の手を使って衣服を裂き、肋骨や胸骨を砕いて膨張した心臓を包む皮膚を、剥き出した。
異常だ。
どれだけ心臓が鼓動を速めたとて、あんな事にはならない筈だ。
何だ?
何が起こっている!?
ナーガ・ゾデのククーラは何をしたんだ!?
当の本人であるナーガ・ゾデのククーラは、唇にのみ楽しげな色を浮かべて、タムザ・クファーンが悶えているさまを包帯の奥から眺めている。
タムザ・クファーンがこうなったのは、ナーガ・ゾデのククーラが放つ赤黒い光球を受けたからだ。ともすると俺も、あのような目に遭っていたのかもしれない。
タムザ・クファーンは今度は寝返りを打ってうつ伏せになり、身体を内側に丸め込んで激しく呻いた。腹の下に潜り込ませた頭部ががくがくと揺れ、咽喉が逆流する音がする。げぇげぇと、口から腹の中のものを吐き出していた.酸っぱい匂いの中に、何となく甘い香りが混じっている。さっき飲んでいた、酒だ。
そこで俺は、奇妙な事に気付いた。
奴の……タムザ・クファーンの身体が、何となく、大きくなっているような気がしたのだ。
タムザ・クファーンは一頻り吐瀉を撒き散らすと、又、もんどりうって転げ回った。タムザ・クファーンは鎧を身に着けており、その硬い鎧が、樹の幹を傷付け、うろを剥がす。最初に付けた傷よりも明らかに高い位置に、腕を持ち上げたりはしていないのに、鋭い切れ込みが入っている。
その違和感を覚えた時、同時に、鎧の方が小さくなっているのではないかとも思った。
元から、ドドラグラ族の使うような大柄な鎧ではない。しかし張り出した肩は、身に着けていて充分、身体をより大きく見せる。今、タムザ・クファーンの鎧は、腕に布を巻き付けた程度の大きさに変わっていた。
金属が何でもないのにあんな風に変形する訳がない。だから、異変が生じているとすればそれはタムザ・クファーンの肉体の方である。彼の身体は、やはり、見る見る大きくなっているのだった。
タムザ・クファーンは荒く息を付きながら、心臓を胸の中に抑え込むと、鎧の手を一本の樹の幹に引っ掛け、身体を持ち上げた。ぬぅっと立ち上がった時、彼の身長は俺を越え、アーヴァン以上のものになっていた。
ばきん、ばきん、という太い枝を断ち折るような音が、奴の膝の下で連続した。脛の骨が、急激に肥大化した上半身の重みに耐え切れなくなり、圧し折れているのだ。当然、そんな事は起こらない。脚の太さも数倍になっており、筋肉の圧力で挟み折られたものであるらしかった。
あるのか……
そんな事が、あるのか!?
タムザ・クファーンの全身で、同じ事が起こっている。
脛、膝、腿、腰、背骨、肩、腕、頸……タムザ・クファーンの身体中の骨という骨が軋み、潰れてゆく。骨格を自らの身体で締め上げるタムザ・クファーンは、そのたびに肥大化してゆくようであった。
骨を圧し折り、その巨大な肉体を直立させる事が出来なくなったタムザ・クファーンは、自分が立ち上がる頼りとした樹に寄り掛かった。そしてそのまま、根元から押し倒してしまう。上の方の枝が、近くの樹を巻き込んで千切れ、こずえの先にぶら下がっていた葉っぱが舞い落ちる。
ずん……と、倒れた樹の上で、タムザ・クファーンが上体を逸らした。背骨がないものであるかのように、彼の腰はほぼ垂直に反り返っている。
顎をがばっと開き、天を仰ぐ。その瞬間、タムザ・クファーンの口が、食道と真っ直ぐに繋がったようであった。
「をぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~っ」
ケダモノそのままの絶叫が、タムザ・クファーンの腹の底から迸った。
本当におぞましい事は、ここから起こった。
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