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第五章 覚醒める拳士
第九節 餓 鬼
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「良い眺めだな、おい……」
加瀬は雲梯の上に腰を下ろして、笑った。
その足元では、加瀬の小便を頭から掛けられ、恥辱に歯噛みしている半裸のいずみがいる。
建物の二階よりも低いが、夜の風を一身に受ける公園の遊具に乗って地上を見下ろしていると、東京タワーのような高層建築から大都会を睥睨するよりもずっと気分が良いかもしれない。
それに加えて、尻の孔まで舐めた女に謝罪の言葉を吐かせ、小便を浴びせてやった下衆な支配欲を満たした事によって、加瀬は一仕事終えて汗を流したくらいの爽快感であった。
その加瀬を見上げて、島田が治郎の髪を掴んで顔を持ち上げさせた。
治郎の腫れ上がった瞼の内側から、変わる事のない黒い瞳が覗き、いずみの惨めな姿を捉えている。島田は治郎のこめかみに拳をあてがって、ぐりぐりと圧迫しながら、煽るように言った。
「どうだ、小僧。あんな女の姿は見た事ないだろう。あの女は金さえ貰えば小便だって飲み干すような淫売なんだぜ。残念だったな、相手にして貰えなくて。何を考えていたか知らないが、俺たちに刃向かっちまったのが間違いさ。今からお前の拳の腱を切ってやるぜ。大層、空手がお強いらしいが、もうお終いだな」
島田はそう言うと、懐から折り畳み式のナイフを取り出した。ぱちん、と音を立てて銀色を出現させると、治郎の右手の手錠を外して手首を掴んだ。
いずみがそれに気付いて、声を上げた。
「やめて! その子は助けてくれるって、言ったじゃない! 私には何をしても良いから、その子は助けて!」
「小便の匂いがする口で喋るな! まだ分かっていないようだな? お前は俺たちがどんな風にしても良い女なんだよ。てめぇの身体一つで今更、言う事を聞いて貰えるとでも思ったのか!」
加瀬は雲梯をがんがんと殴り付けた。いずみの頭髪の毛先から、加瀬に浴びせられた小便の雫が飛び散る。
島田は治郎の右手首を持ち上げると、拳を握る腱に狙いを定めて、ナイフの先端をあてがった。
「ぎゃっ!」
悲鳴が上がった。
いずみは眼を瞑ったが、声を上げたのは治郎ではない。
「てめぇ……」
島田の手から、ナイフがこぼれ落ちていた。治郎の靴の踵が、島田の足の甲を強く踏み抜いている。意外な反撃に驚いて、ナイフを手から離してしまったらしい。
「この餓鬼、舐めた事……」
そう言い掛けた島田の顎に、治郎の足の爪先がクリーンヒットした。喋り掛けていた島田は、爪先蹴りによって下顎を閉じさせられ、上下の歯で舌を噛んでしまう。蹴りの勢いがかなりのものであった事と、言葉を発そうとしていた為に顎の筋肉が緩んでいた事で、歯は舌を半分ばかり千切ってしまう結果となった。
治郎は左腕を鉄棒に絡ませられ、手錠をはめられた状態で、その柔軟な下半身を駆使して右脚を繰り出した。そのような体勢からであっても治郎は、フィギュアスケーターの如く爪先を天に向けて脚を垂直にする事が可能であった。
口から血をこぼして悶える島田。
治郎は持ち上げた脚で、今度は島田の膝を狙った。踵を使って膝関節を横から叩いてやると、島田はがくんと体勢を崩した。
これで下がった島田の頭に、治郎のサッカーボールキックが炸裂した。島田は千切れた舌を口から垂らして、その場に崩れ落ちた。
「野郎……!」
加瀬が、雲梯から飛び降りた。
島田を下した治郎は、自由になった右手で左手の手錠を引き千切った。本物ならばまだしも、SMプレイに使う玩具のような拘束具など、治郎にとっては枝を手折るに等しい。
左手に手錠の枷部分だけを残したまま、治郎は加瀬に向かって行った。
治郎は殴られながらも待っていたのだ。自身の体力が回復するのを。そして島田に階段から落とされた時と同じように、彼の足を踏み付けて隙を作った。
「餓鬼!」
加瀬は吼えると、治郎に向かって大振りな右のパンチを繰り出した。
治郎は左の上段受けでパンチを弾きながら、鳩尾に正拳突きを叩き付ける。
加瀬の口から、空気と唾液が吐き出される。
治郎は続けて左のアッパーカットで加瀬の顎を打ち上げた。更にその場で跳躍して、膝を加瀬の咽喉に叩き込んでゆく。
加瀬の身体が、後方に反れて倒れた。
治郎は着地したが、島田にいたぶられていたダメージが残っていたのか、その場に崩れてしまう。
この所為で膝蹴りのダメージも半減し、加瀬は下の歯を圧し折られて赤い涎掛けをしながらも、立ち上がる事が出来た。
加瀬は治郎が起き上がる前にいずみの背後に回った。
その頸に腕を回し、もう片方の手でナイフを取り出している。
「くふうぇあーっ!」
加瀬が血と唾と折れた歯を撒き散らしながら、治郎に叫んだ。
加瀬は雲梯の上に腰を下ろして、笑った。
その足元では、加瀬の小便を頭から掛けられ、恥辱に歯噛みしている半裸のいずみがいる。
建物の二階よりも低いが、夜の風を一身に受ける公園の遊具に乗って地上を見下ろしていると、東京タワーのような高層建築から大都会を睥睨するよりもずっと気分が良いかもしれない。
それに加えて、尻の孔まで舐めた女に謝罪の言葉を吐かせ、小便を浴びせてやった下衆な支配欲を満たした事によって、加瀬は一仕事終えて汗を流したくらいの爽快感であった。
その加瀬を見上げて、島田が治郎の髪を掴んで顔を持ち上げさせた。
治郎の腫れ上がった瞼の内側から、変わる事のない黒い瞳が覗き、いずみの惨めな姿を捉えている。島田は治郎のこめかみに拳をあてがって、ぐりぐりと圧迫しながら、煽るように言った。
「どうだ、小僧。あんな女の姿は見た事ないだろう。あの女は金さえ貰えば小便だって飲み干すような淫売なんだぜ。残念だったな、相手にして貰えなくて。何を考えていたか知らないが、俺たちに刃向かっちまったのが間違いさ。今からお前の拳の腱を切ってやるぜ。大層、空手がお強いらしいが、もうお終いだな」
島田はそう言うと、懐から折り畳み式のナイフを取り出した。ぱちん、と音を立てて銀色を出現させると、治郎の右手の手錠を外して手首を掴んだ。
いずみがそれに気付いて、声を上げた。
「やめて! その子は助けてくれるって、言ったじゃない! 私には何をしても良いから、その子は助けて!」
「小便の匂いがする口で喋るな! まだ分かっていないようだな? お前は俺たちがどんな風にしても良い女なんだよ。てめぇの身体一つで今更、言う事を聞いて貰えるとでも思ったのか!」
加瀬は雲梯をがんがんと殴り付けた。いずみの頭髪の毛先から、加瀬に浴びせられた小便の雫が飛び散る。
島田は治郎の右手首を持ち上げると、拳を握る腱に狙いを定めて、ナイフの先端をあてがった。
「ぎゃっ!」
悲鳴が上がった。
いずみは眼を瞑ったが、声を上げたのは治郎ではない。
「てめぇ……」
島田の手から、ナイフがこぼれ落ちていた。治郎の靴の踵が、島田の足の甲を強く踏み抜いている。意外な反撃に驚いて、ナイフを手から離してしまったらしい。
「この餓鬼、舐めた事……」
そう言い掛けた島田の顎に、治郎の足の爪先がクリーンヒットした。喋り掛けていた島田は、爪先蹴りによって下顎を閉じさせられ、上下の歯で舌を噛んでしまう。蹴りの勢いがかなりのものであった事と、言葉を発そうとしていた為に顎の筋肉が緩んでいた事で、歯は舌を半分ばかり千切ってしまう結果となった。
治郎は左腕を鉄棒に絡ませられ、手錠をはめられた状態で、その柔軟な下半身を駆使して右脚を繰り出した。そのような体勢からであっても治郎は、フィギュアスケーターの如く爪先を天に向けて脚を垂直にする事が可能であった。
口から血をこぼして悶える島田。
治郎は持ち上げた脚で、今度は島田の膝を狙った。踵を使って膝関節を横から叩いてやると、島田はがくんと体勢を崩した。
これで下がった島田の頭に、治郎のサッカーボールキックが炸裂した。島田は千切れた舌を口から垂らして、その場に崩れ落ちた。
「野郎……!」
加瀬が、雲梯から飛び降りた。
島田を下した治郎は、自由になった右手で左手の手錠を引き千切った。本物ならばまだしも、SMプレイに使う玩具のような拘束具など、治郎にとっては枝を手折るに等しい。
左手に手錠の枷部分だけを残したまま、治郎は加瀬に向かって行った。
治郎は殴られながらも待っていたのだ。自身の体力が回復するのを。そして島田に階段から落とされた時と同じように、彼の足を踏み付けて隙を作った。
「餓鬼!」
加瀬は吼えると、治郎に向かって大振りな右のパンチを繰り出した。
治郎は左の上段受けでパンチを弾きながら、鳩尾に正拳突きを叩き付ける。
加瀬の口から、空気と唾液が吐き出される。
治郎は続けて左のアッパーカットで加瀬の顎を打ち上げた。更にその場で跳躍して、膝を加瀬の咽喉に叩き込んでゆく。
加瀬の身体が、後方に反れて倒れた。
治郎は着地したが、島田にいたぶられていたダメージが残っていたのか、その場に崩れてしまう。
この所為で膝蹴りのダメージも半減し、加瀬は下の歯を圧し折られて赤い涎掛けをしながらも、立ち上がる事が出来た。
加瀬は治郎が起き上がる前にいずみの背後に回った。
その頸に腕を回し、もう片方の手でナイフを取り出している。
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