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第七章 魔獣、集結
第八節 非道連中
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雅人が紀田を訪ねる少し前の事だ。
紀田の許に池田組から池田享憲と小川が現れ、そこに治郎が乱入した。
池田享憲たちが治郎を連れて撤退し、治郎が自分を池田に売り込んだすぐ後で――
蛟は、いずみを捕えていた拷問部屋を再び訪れた。
蛟はいずみから雅人の事を聞き出そうと彼女を拉致したのだが、早々にいずみと雅人が無関係である事が察せられた。しかしいずみを解放するような事はせず、それまで彼女を拷問していたチンピラにその後の事を任せたのである。
すると想像していた通り、チンピラたちはいずみの身体を散々に弄んでいた。
いずみは、鉄管による拘束を解かれても抵抗する気力を奪われ、ぐったりとしている。
そのいずみの身体にチンピラたちは群がって、凌辱の限りを尽くしていたのだった。
薄暗い部屋の中に充満した濃厚な雄の匂いに眉を顰めつつも、蛟はチンピラたちに制止を掛けた。腫れ上がった尻を天井に向けて、死んだように動かないいずみの背中を踏み付けて乱暴に肋骨を開かせる。
「げほっ……ぇっ、ぐ……おぇっ、がはっ、げふぅ……」
いずみが口から体液を吐き出した。
その上体を起こしてやった蛟が、饐えた匂いを口からこぼすいずみに顔を近付ける。
「もぉ……ゆるして……」
「貴方が彼の関係者でない事は分かりました。ですから、質問を変えましょう」
童女のように泣きじゃくるいずみを前にしても、蛟の顔は変わらない。
「あの男には、匿っている女がいます。彼女の居場所に心当たりはありませんか?」
蛟は、渋江杏子の写真を見せた。美野秋葉から奪い取っていたスマーフォンのデータを復元したものの内、彼女の葬儀に参列した者たちから聞き込んで杏子と特定したものだ。学園祭か何かの様子だろうか、クレープを頬張る杏子にカメラを向け、彼女が恥ずかしがって撮影をやめさせようとするシーンが連写されていた。
いずみは首を横に振った。
「市内のホテルやネットカフェ、海に近い旅館や山荘、24時間営業のコンビニやレストラン、一人暮らしのアパートの部屋、それに不動産屋なども調べさせましたが、彼女は発見出来ませんでした。そこで質問なのですが、この町に知り合いのいない彼女が何処に隠れるか、想像は付きませんか? 人が全くおらずに何日か隠れ仰せられる場所、或いはその逆……」
いずみは知らないと言おうとしたが、それはこの質問の前提としてあるものだ。想像でも良いから喋れと言っているのである。
いずみは痛みと恐怖でぐちゃぐちゃになった頭の中に思考を巡らせ、不意に思い出した事を口に出した。
「弥奈倉橋……」
「弥奈倉橋?」
「河川敷で……時々、ホームレスの、人たちが……集まって……」
店に、余った料理や賞味期限切れの食材はないかと尋ねて来る事があった。
時には、ものを何日も食べられていないとか、病気なのだが医者に掛かれないとか言って、金を貰いに来た事も。
そのホームレスたちが集まっているのが、隣県への電車と海へ向かう高架線が分離する光景を眺められる弥奈倉橋の近くの河川敷であると、聞いた事があった。
ホームレスのグループ間の繋がりは、そうでない人たちが思うよりもずっとしっかりとしており、そこに外部の人間を入れるという事は滅多にない筈だ。
しかしながら、勝義会と池田組が冷戦状態にあり、彼らによる理不尽な暴力に晒され、警察力に守られない危険もあるホームレスたちであるから、勝義会を失脚させかねない証拠を持った人間を匿うという事は、あり得ないとも言えなかった。
「成程、ホームレスか……ふふ、ご協力感謝します。お礼にこちらを……」
蛟はいずみの前で、“アンリミテッド”のアンプルを取り出した。
すると勝義会のチンピラが、それを止めた。
「待って下さいよ、先生」
「この女、薬でおかしくしちまうには、惜しい身体してるんすよ」
「キメセクより、シラフでやった方が反応が良いと思うんすよね」
「だからもうちょっと、待ってくれませんかね。反応がなくなったら使わせて貰いますわ」
げらげらと笑いながら、男たちが言う。
蛟はチンピラたちの精力に呆れながらも、立ち上がって彼らの一人にアンプルを手渡した。
「それでは、ご自由にどうぞ」
蛟がいずみに背中を向けて部屋から出てゆくのと反対に、男たちがいきり立ちながら再びいずみに群がった。
「薬で楽になろうだなんて思わない事だな」
「もっと泣き喚いて、俺たちを楽しませてくれよゥ」
とても人道的な教育を受けた事がある人間とは思えないような言葉を吐き出して、既に心身共に摩耗し切っているであろういずみに手を伸ばしてゆく男たち。
蛟は変わらぬ冷たい微笑を浮かべたまま、ホテルのフロントを目指した。
紀田の許に池田組から池田享憲と小川が現れ、そこに治郎が乱入した。
池田享憲たちが治郎を連れて撤退し、治郎が自分を池田に売り込んだすぐ後で――
蛟は、いずみを捕えていた拷問部屋を再び訪れた。
蛟はいずみから雅人の事を聞き出そうと彼女を拉致したのだが、早々にいずみと雅人が無関係である事が察せられた。しかしいずみを解放するような事はせず、それまで彼女を拷問していたチンピラにその後の事を任せたのである。
すると想像していた通り、チンピラたちはいずみの身体を散々に弄んでいた。
いずみは、鉄管による拘束を解かれても抵抗する気力を奪われ、ぐったりとしている。
そのいずみの身体にチンピラたちは群がって、凌辱の限りを尽くしていたのだった。
薄暗い部屋の中に充満した濃厚な雄の匂いに眉を顰めつつも、蛟はチンピラたちに制止を掛けた。腫れ上がった尻を天井に向けて、死んだように動かないいずみの背中を踏み付けて乱暴に肋骨を開かせる。
「げほっ……ぇっ、ぐ……おぇっ、がはっ、げふぅ……」
いずみが口から体液を吐き出した。
その上体を起こしてやった蛟が、饐えた匂いを口からこぼすいずみに顔を近付ける。
「もぉ……ゆるして……」
「貴方が彼の関係者でない事は分かりました。ですから、質問を変えましょう」
童女のように泣きじゃくるいずみを前にしても、蛟の顔は変わらない。
「あの男には、匿っている女がいます。彼女の居場所に心当たりはありませんか?」
蛟は、渋江杏子の写真を見せた。美野秋葉から奪い取っていたスマーフォンのデータを復元したものの内、彼女の葬儀に参列した者たちから聞き込んで杏子と特定したものだ。学園祭か何かの様子だろうか、クレープを頬張る杏子にカメラを向け、彼女が恥ずかしがって撮影をやめさせようとするシーンが連写されていた。
いずみは首を横に振った。
「市内のホテルやネットカフェ、海に近い旅館や山荘、24時間営業のコンビニやレストラン、一人暮らしのアパートの部屋、それに不動産屋なども調べさせましたが、彼女は発見出来ませんでした。そこで質問なのですが、この町に知り合いのいない彼女が何処に隠れるか、想像は付きませんか? 人が全くおらずに何日か隠れ仰せられる場所、或いはその逆……」
いずみは知らないと言おうとしたが、それはこの質問の前提としてあるものだ。想像でも良いから喋れと言っているのである。
いずみは痛みと恐怖でぐちゃぐちゃになった頭の中に思考を巡らせ、不意に思い出した事を口に出した。
「弥奈倉橋……」
「弥奈倉橋?」
「河川敷で……時々、ホームレスの、人たちが……集まって……」
店に、余った料理や賞味期限切れの食材はないかと尋ねて来る事があった。
時には、ものを何日も食べられていないとか、病気なのだが医者に掛かれないとか言って、金を貰いに来た事も。
そのホームレスたちが集まっているのが、隣県への電車と海へ向かう高架線が分離する光景を眺められる弥奈倉橋の近くの河川敷であると、聞いた事があった。
ホームレスのグループ間の繋がりは、そうでない人たちが思うよりもずっとしっかりとしており、そこに外部の人間を入れるという事は滅多にない筈だ。
しかしながら、勝義会と池田組が冷戦状態にあり、彼らによる理不尽な暴力に晒され、警察力に守られない危険もあるホームレスたちであるから、勝義会を失脚させかねない証拠を持った人間を匿うという事は、あり得ないとも言えなかった。
「成程、ホームレスか……ふふ、ご協力感謝します。お礼にこちらを……」
蛟はいずみの前で、“アンリミテッド”のアンプルを取り出した。
すると勝義会のチンピラが、それを止めた。
「待って下さいよ、先生」
「この女、薬でおかしくしちまうには、惜しい身体してるんすよ」
「キメセクより、シラフでやった方が反応が良いと思うんすよね」
「だからもうちょっと、待ってくれませんかね。反応がなくなったら使わせて貰いますわ」
げらげらと笑いながら、男たちが言う。
蛟はチンピラたちの精力に呆れながらも、立ち上がって彼らの一人にアンプルを手渡した。
「それでは、ご自由にどうぞ」
蛟がいずみに背中を向けて部屋から出てゆくのと反対に、男たちがいきり立ちながら再びいずみに群がった。
「薬で楽になろうだなんて思わない事だな」
「もっと泣き喚いて、俺たちを楽しませてくれよゥ」
とても人道的な教育を受けた事がある人間とは思えないような言葉を吐き出して、既に心身共に摩耗し切っているであろういずみに手を伸ばしてゆく男たち。
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