93 / 232
第七章 魔獣、集結
第七節 対 峙
しおりを挟む
おっパブ“ゲリラ”で、雅人と紀田勝義が対峙している。
ブス――という雅人の発言に、紀田の横にいた女が反応を示した。誰だって、そんな事を言われて良い気分になる人間はいない。
しかし雅人は、その二人に対してブスと言ったのではない。
「てめぇのような奴は、かわいこちゃんを二人も侍らせる資格なんかねぇんだよ」
「俺の顔が醜いからか?」
「そうだ。俺も決して良い面じゃないし、人間性が優れているという訳でもねぇ。でも、てめぇ程、はらわたまで腐り切ってはいないと断言出来るぜ。この、屑が」
雅人の歯に衣着せぬ言葉に、顔を蒼褪めさせるコンパニオンたち。紀田のこめかみにアルコールの所為で浮かび上がった血管が、更にぴくぴくと跳ねていた。
「言うじゃねぇか。俺が誰だか分かっているのか」
「分かっているから来たんだ」
「ふ……桃城の奴をやっただけはあるな。ただの自信家ではないらしい……」
紀田勝義はそう言うと、両脇の女をその場からどかせる所か、逆に胸の前まで抱き寄せた。そうして自分のシャツの胸元を開けさせると、体毛の茂った胸板からこぼれる分厚い脂肪の両端を、女たちに舐めるよう指示を出した。
脚の間の女は、相変わらず紀田の逸物を口に含んでいる。
「その通りだ。俺は醜い。性格だってよかないさ。だが、金がある。暴力がある。だから女を従える事が出来る。どんなに顔の良い男だって、チンポが小さかったら意味がねぇし、お前がどれだけ強かろうが、金がなくっちゃ不細工は相手にして貰えねぇぜ」
紀田勝義は雅人に見せ付けるようにして、二人の女の唇を交互に吸った。そして脚の間の三人目に立ち上がるように指示をすると、局部だけを隠していた紐のような衣装を横にずらさせた。
三人目の女は、雅人に向かって尻の孔を広げながら、ガニ股になって紀田勝義に跨った。
――巧いな。
雅人は、紀田が自分の言葉を理解していると分かった。女をどけるように言ったのは、紀田と戦う為だ。
しかし紀田は、女を自分の身体の前にやって、肉の盾にしている。雅人が非情なヒットマンではない事を見抜き、自分が金で買った女を人質にしているのだ。
「口数が減ったな。今度は俺から話してやろう。お前、一体何者で、何が目的だ? あの女を匿って何を企んでいる? 何故、俺の事を狙う? 見た所、警察か何かじゃないようだが……」
「あんたを狙う理由は二つある。一人は、あんたが女を殺した映像を奪った女を守り、あんたの悪行を世間に公表し、そしてあんたを警察に突き出してやる為だ」
「俺は殺しちゃいない。あの女は勝手に死んだんだ」
「……その事で言い争いをするのは無駄だろうな。そしてもう一つは……」
「美野秋葉の復讐という所か。それとも、渋江杏子とかに頼まれたか」
「それは一つ目の理由だ。もう一つは俺の個人的な望み……あんたと戦い、倒したいからだ」
「何故だ?」
「あんたが暴力で身を立てた人間だという事は、あんたを知る人間ならば誰だって知っているだろう。あんたがそれだけ強いという事だ。俺は、俺より強いかもしれない人間がいると聞くと、どうにも我慢ならなくてな。どっちが強いのか? 白黒付けたくなる性質なのさ」
「それだけか? 俺の今の地位が欲しいとか、大金が欲しいとか、女が欲しいとか、そんな理由ではないのか?」
「地位も金も女も、俺には無用の長物さ。分かったらさっさと女をどけろ。そして俺と戦え。これ以上てめぇと話していると、こっちの脳みそまで腐りそうだ」
雅人が吐き捨てるように言うと、紀田勝義は豪放に笑った。
「悪いが坊や、お前の望みは一つも叶わねぇ……」
「ほぅ……」
「先ず一つ、俺はお前なんかにゃ敗けないからだ」
「最初は誰だってそう言うのさ」
「次に、既にあの映像を奪いに俺の用心棒が動いている」
「何だと……」
「早くしないと、お仲間たちが大変な事になるぞ。尤も、橋の下で幾ら死体が転がろうが、警察が動いたりはしないだろうがな」
「……てめぇ!」
雅人はすぐにでも、紀田の醜い顔面に拳をぶち込んでやりたかった。しかし紀田はコンパニオンの身体を自分に乗せており、下手な攻撃では何の罪もない女に重傷を負わせかねない。
雅人は舌打ちすると踵を返し、“ゲリラ”の出口へ向かった。
だがその出入り口の前に、さっきの黒服も含めた三人が立っており、何れも拳銃を構えていた。
銃口に怯まず接近する雅人に、中央の黒服が発砲した。
雅人はその瞬間、爪先で銃を持った手を蹴り上げた。発射された銃弾は天井に突き刺さり、淫蕩な光を放っていた照明器具を破壊した。
雅人と紀田勝義の遣り取りなど知らない他の客やコンパニオンたちが、銃声に混乱する。
「こいつ!」
「死ね!」
最初の黒服は、雅人の蹴りで手の指を折られていた。残る二人が、左右に展開して挟撃しようとする。
雅人は先ず、右側に走った男を追うように身体を回転させた。左方から床に飛び込むような斜めの回転を決めると、鉄のような右の踵が男の鼻骨を砕いてめり込んだ。浴びせ蹴りだ。
腰をひねって、この蹴り足を三人目の黒服の手前に着地させると、床を手で叩いて加速し、下からすり上げるようにして左足が相手の股間に潜り込んだ。
丸太のような金的蹴りを炸裂させられ、その場にへなへなと倒れ込む黒服。
雅人はそのままの勢いで立ち上がり、“ゲリラ”から飛び出した。
その後ろ姿を、紀田勝義がにやにやと見据えていた。
ブス――という雅人の発言に、紀田の横にいた女が反応を示した。誰だって、そんな事を言われて良い気分になる人間はいない。
しかし雅人は、その二人に対してブスと言ったのではない。
「てめぇのような奴は、かわいこちゃんを二人も侍らせる資格なんかねぇんだよ」
「俺の顔が醜いからか?」
「そうだ。俺も決して良い面じゃないし、人間性が優れているという訳でもねぇ。でも、てめぇ程、はらわたまで腐り切ってはいないと断言出来るぜ。この、屑が」
雅人の歯に衣着せぬ言葉に、顔を蒼褪めさせるコンパニオンたち。紀田のこめかみにアルコールの所為で浮かび上がった血管が、更にぴくぴくと跳ねていた。
「言うじゃねぇか。俺が誰だか分かっているのか」
「分かっているから来たんだ」
「ふ……桃城の奴をやっただけはあるな。ただの自信家ではないらしい……」
紀田勝義はそう言うと、両脇の女をその場からどかせる所か、逆に胸の前まで抱き寄せた。そうして自分のシャツの胸元を開けさせると、体毛の茂った胸板からこぼれる分厚い脂肪の両端を、女たちに舐めるよう指示を出した。
脚の間の女は、相変わらず紀田の逸物を口に含んでいる。
「その通りだ。俺は醜い。性格だってよかないさ。だが、金がある。暴力がある。だから女を従える事が出来る。どんなに顔の良い男だって、チンポが小さかったら意味がねぇし、お前がどれだけ強かろうが、金がなくっちゃ不細工は相手にして貰えねぇぜ」
紀田勝義は雅人に見せ付けるようにして、二人の女の唇を交互に吸った。そして脚の間の三人目に立ち上がるように指示をすると、局部だけを隠していた紐のような衣装を横にずらさせた。
三人目の女は、雅人に向かって尻の孔を広げながら、ガニ股になって紀田勝義に跨った。
――巧いな。
雅人は、紀田が自分の言葉を理解していると分かった。女をどけるように言ったのは、紀田と戦う為だ。
しかし紀田は、女を自分の身体の前にやって、肉の盾にしている。雅人が非情なヒットマンではない事を見抜き、自分が金で買った女を人質にしているのだ。
「口数が減ったな。今度は俺から話してやろう。お前、一体何者で、何が目的だ? あの女を匿って何を企んでいる? 何故、俺の事を狙う? 見た所、警察か何かじゃないようだが……」
「あんたを狙う理由は二つある。一人は、あんたが女を殺した映像を奪った女を守り、あんたの悪行を世間に公表し、そしてあんたを警察に突き出してやる為だ」
「俺は殺しちゃいない。あの女は勝手に死んだんだ」
「……その事で言い争いをするのは無駄だろうな。そしてもう一つは……」
「美野秋葉の復讐という所か。それとも、渋江杏子とかに頼まれたか」
「それは一つ目の理由だ。もう一つは俺の個人的な望み……あんたと戦い、倒したいからだ」
「何故だ?」
「あんたが暴力で身を立てた人間だという事は、あんたを知る人間ならば誰だって知っているだろう。あんたがそれだけ強いという事だ。俺は、俺より強いかもしれない人間がいると聞くと、どうにも我慢ならなくてな。どっちが強いのか? 白黒付けたくなる性質なのさ」
「それだけか? 俺の今の地位が欲しいとか、大金が欲しいとか、女が欲しいとか、そんな理由ではないのか?」
「地位も金も女も、俺には無用の長物さ。分かったらさっさと女をどけろ。そして俺と戦え。これ以上てめぇと話していると、こっちの脳みそまで腐りそうだ」
雅人が吐き捨てるように言うと、紀田勝義は豪放に笑った。
「悪いが坊や、お前の望みは一つも叶わねぇ……」
「ほぅ……」
「先ず一つ、俺はお前なんかにゃ敗けないからだ」
「最初は誰だってそう言うのさ」
「次に、既にあの映像を奪いに俺の用心棒が動いている」
「何だと……」
「早くしないと、お仲間たちが大変な事になるぞ。尤も、橋の下で幾ら死体が転がろうが、警察が動いたりはしないだろうがな」
「……てめぇ!」
雅人はすぐにでも、紀田の醜い顔面に拳をぶち込んでやりたかった。しかし紀田はコンパニオンの身体を自分に乗せており、下手な攻撃では何の罪もない女に重傷を負わせかねない。
雅人は舌打ちすると踵を返し、“ゲリラ”の出口へ向かった。
だがその出入り口の前に、さっきの黒服も含めた三人が立っており、何れも拳銃を構えていた。
銃口に怯まず接近する雅人に、中央の黒服が発砲した。
雅人はその瞬間、爪先で銃を持った手を蹴り上げた。発射された銃弾は天井に突き刺さり、淫蕩な光を放っていた照明器具を破壊した。
雅人と紀田勝義の遣り取りなど知らない他の客やコンパニオンたちが、銃声に混乱する。
「こいつ!」
「死ね!」
最初の黒服は、雅人の蹴りで手の指を折られていた。残る二人が、左右に展開して挟撃しようとする。
雅人は先ず、右側に走った男を追うように身体を回転させた。左方から床に飛び込むような斜めの回転を決めると、鉄のような右の踵が男の鼻骨を砕いてめり込んだ。浴びせ蹴りだ。
腰をひねって、この蹴り足を三人目の黒服の手前に着地させると、床を手で叩いて加速し、下からすり上げるようにして左足が相手の股間に潜り込んだ。
丸太のような金的蹴りを炸裂させられ、その場にへなへなと倒れ込む黒服。
雅人はそのままの勢いで立ち上がり、“ゲリラ”から飛び出した。
その後ろ姿を、紀田勝義がにやにやと見据えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる