いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第5話「黄昏時」①

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《ガラガラガラ》

    バス停のすぐ横には、小さな駄菓子屋があった。店は今でこそ駄菓子屋だが、ずっと昔から、それこそ何代にもわたって、この海岸通りで何かしら商いを続けており、私のおばあちゃんで七代目になる。
    木製の格子戸を引くと、葉っぱ模様のガラスが一斉に音を立てる。それに混じってドアベルの音が聞こえた。シャラシャラと、涼しげな音が耳に心地よい。店には夕陽が差し込み、淡いオレンジで部屋の中は満たされていた。切り取られた影が待ちかねたように、主である私より先に中へと入る。

「こーんばーんはー!」店の奥へと声をかける。少しして、奥の部屋からおばあちゃんがゆっくりと現れた。


「ジュース持っていっていい?」おばあちゃんは笑顔で優しく頷くと、そっと土間へ下り、椅子へと腰掛けた。


「今日は遅いのね」
「うん。ちょっとね」

    店の前にある冷蔵庫を開け、ジュースを選びながら答える。私は水分補給をするとして、彼は多分お疲れだろうから、エナジードリンクとかがよいのだろうか。いろいろ考えを巡らせる。

「じゃ、持っていくね」
「それは構わないけど、早く帰るのよ?」

心からの心配がその声に滲んでいる。


「わかってるって」

    ジュースを両手にぶら下げて、店の中へ声をかける。私だって心配はかけたくない。できるだけ元気よく、それでいて申し訳なさをちょっぴり込めてそう言った。
    おばあちゃんが小さく頷いたように見えたので、小さくじゃあねと言って、格子戸をゆっくりガラガラと閉めた。来た時と同じドアベルのシャラシャラが、バス停へ向かう私の背中を見送る。じきにバス停に着いた私は、中のベンチに腰掛けた。

    夕方の海岸通りは車の往来もまばらで、時折、近所の住人が目の前を自転車で通り過ぎる程度だ。軽い会釈を交わして、徐々に遠ざかる後ろ姿と、黄昏時に別れを告げる。
    待ち人はまだ来ない。別に待ち合わせを約束したわけでもないから、海でも眺めてのんびりと待つつもりだった。
    水平線の彼方から、夕陽が私へ向かって真っ直ぐに伸びて、水面がキラキラと輝く。夕暮れの緋色は、徐々に深まる藍色にその場を譲り渡して、儚く静かに消えようとしていた。二色がせめぎ合うグラデーションがとても美しくて、何故だかとても泣きたくなった。あまり見なくても済むように、帽子を深くかぶり直す。
    程なくして、遠くからバスの音が聞こえてきた。なんとなく立ち上がる。彼は乗っているだろうか。
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