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第7話「見上げた夜空」④
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「すみません…すみません…」
父はそう繰り返し謝り続ける。一度は我慢した涙が今、恐怖によって溢れ出した。目の前の状況にうちひしがれていると、サイレンとともに救急車が到着した。救急隊員がやってきて、俺と男の人が担架に乗せられた。
俺はその場で簡単に質問の受け答えをしたり、容態を確認されたあと、念のために病院へということだったが、あの男の人はすぐさま救急車に運び込まれ、女の人と志保を乗せて、瞬く間に走り去っていった。
俺を助けてくれたのが志保の父親で、泣いていたのが母親だったと知ったのは、その後すぐに行われた通夜の席でだった。
後から聞いた話だが、志保の父親は俺をテトラポットにどうにか押しあげたところで力尽きて、また海へ流されてしまったらしい。気になって戻った俺の父が、そんな俺と志保の父親を見つけて、波止場へ担ぎあげたときには、もう手遅れに近い状態だったそうだ。
志保は式の間中、ずっと母親にしがみついて泣いていて、言葉を交わすことはなかった。俺が参列していたことに気付いていたのかもわからない。俺は俺で、自分のしでかしたことを受け止めきれずに、父に隠れて怯えていることしかできなかった。
志保と会ったのはこれが最後だった。
それから数年経ち、ようやく自分の中で整理がついたころ、医者になろうと決めた。理由は単純で、志保の父親が医者だったからだ。
自分のせいで死んでしまったあの人に変わって、自分が誰かの命を救おう。いや、救わなくちゃいけない。そう思った。綺麗事なんかじゃなく、罪滅ぼしのつもりだった。志望する大学も、志保の祖父と父親が学んだという学校にした。それなのに。
今日のテストの結果を見て、まず自分が思ったのは『やっぱりな』だった。思うように上がらない成績。何をどうすればいいのかわからなくなって、いつもなら必ずしていた講義後の自習もそこそこに、適当に街をぶらついてゲーセンへ逃げ込んだ。
父子家庭は裕福とはいえず、ゲーム機なんて当然持っていなかったので、どれを試してもうまくはいかない。結局そこで得たものは、虚しさだけだった。
『ゲームオーバー』
画面にチカチカと映し出されるそんな言葉すらも、自分自身に向けられたもののように感じてしまう。
多少遊んだくらいでとやかくいう父では無いだろうが、大事なことを放っておいてとなると話は別だろうし、何より自分を日頃から応援してくれるその気持ちを裏切ってしまったようで、それがなによりも後悔する原因だった。頭をかきむしり、もう馬鹿な真似はよそうと思った。
父はそう繰り返し謝り続ける。一度は我慢した涙が今、恐怖によって溢れ出した。目の前の状況にうちひしがれていると、サイレンとともに救急車が到着した。救急隊員がやってきて、俺と男の人が担架に乗せられた。
俺はその場で簡単に質問の受け答えをしたり、容態を確認されたあと、念のために病院へということだったが、あの男の人はすぐさま救急車に運び込まれ、女の人と志保を乗せて、瞬く間に走り去っていった。
俺を助けてくれたのが志保の父親で、泣いていたのが母親だったと知ったのは、その後すぐに行われた通夜の席でだった。
後から聞いた話だが、志保の父親は俺をテトラポットにどうにか押しあげたところで力尽きて、また海へ流されてしまったらしい。気になって戻った俺の父が、そんな俺と志保の父親を見つけて、波止場へ担ぎあげたときには、もう手遅れに近い状態だったそうだ。
志保は式の間中、ずっと母親にしがみついて泣いていて、言葉を交わすことはなかった。俺が参列していたことに気付いていたのかもわからない。俺は俺で、自分のしでかしたことを受け止めきれずに、父に隠れて怯えていることしかできなかった。
志保と会ったのはこれが最後だった。
それから数年経ち、ようやく自分の中で整理がついたころ、医者になろうと決めた。理由は単純で、志保の父親が医者だったからだ。
自分のせいで死んでしまったあの人に変わって、自分が誰かの命を救おう。いや、救わなくちゃいけない。そう思った。綺麗事なんかじゃなく、罪滅ぼしのつもりだった。志望する大学も、志保の祖父と父親が学んだという学校にした。それなのに。
今日のテストの結果を見て、まず自分が思ったのは『やっぱりな』だった。思うように上がらない成績。何をどうすればいいのかわからなくなって、いつもなら必ずしていた講義後の自習もそこそこに、適当に街をぶらついてゲーセンへ逃げ込んだ。
父子家庭は裕福とはいえず、ゲーム機なんて当然持っていなかったので、どれを試してもうまくはいかない。結局そこで得たものは、虚しさだけだった。
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多少遊んだくらいでとやかくいう父では無いだろうが、大事なことを放っておいてとなると話は別だろうし、何より自分を日頃から応援してくれるその気持ちを裏切ってしまったようで、それがなによりも後悔する原因だった。頭をかきむしり、もう馬鹿な真似はよそうと思った。
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