いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第9話「待ち人」①

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    バス停のベンチに座る。壁にかけられた時計を見ると、ちょうど八時になったところだった。
    八月もとっくに半ばを過ぎて、太陽はいよいよ容赦なく押しつけがましいその灼熱を、手当たり次第に浴びせかけている。とても暑い。

    蝉の声に混じって笛の音が聞こえる。坂を登りきった先にある神社で、数日後に夏祭りが行われるのだが、どうやら近くの公民館でお囃子の練習をしているようだった。いつもの坂道はもちろん、海岸通りにものぼりが立てられている。お祭りの期間中は、近所中の人が神社へ繰り出しては、賑やかなひとときを共にする。境内は提灯で淡く照らされ、そこかしこに出された屋台には子どもたちの笑顔と笑い声が溢れる。夏祭り最後の夜には、近くの小学校のグラウンドを使って、あまり派手ではないが、打ち上げ花火があげられた。

    最後に行ったのはいつだったか。

    待ち人はそろそろやってくる頃だろう。ベンチに座って今か今かと待っていた。そういえばと、手に持ったビニール袋を見て、中のアイスのコンディションを確かめる。


「樹が来てから持ってくればよかった」

    少し後悔した。蓋のできるものを選んだので平気だろうが、ベチャベチャに溶けたアイスを渡すのも忍びない。確かめてみることにした。
    持ってきていたのは、バスの中でも食べやすそうな、キャップ付きのチアパックにラクトアイスの入った商品だ。触ってみると、アイスケースから取り出したときよりほんの少し柔らかくなっていて、食べごろのようだった。手のひらがひんやりと心地よい。

「あっ」

    そう言うが早いか、手が勝手にキャップを開けていた。暑さに対する防衛本能だろうか、人間という種族の持つ類稀な危機管理能力は、こうした事態にも発揮されるものなのだな。アイスを流し込みながら、生命の神秘に感嘆する。

(樹が来るまでに食べ終わったら、もう一つのアイスは『最初から自分のために用意したものだ』と主張しよう)

    そんなことを考えながら、樹の来る方を注意深く観察していると、道路に落ちている何かが目に留まった。近づいてから、よーく見ようとしゃがんでみる。照りつけるような日差しにうなじが焼かれてヒリヒリした。顎の先から汗の雫がアスファルトにぽたっと落ちて、一瞬ののちに乾く。
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