いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第9話「待ち人」②

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    テープか何かに見えたそれは、車に轢かれて潰された体長三十センチほどの蛇だった。このあたりでは特に珍しいものではない。朝起きて仲良く添い寝していたのを見たときは、飛び上がって逃げたものだが。


「クーリッシュ血管に流し込んだら、涼しくなると思う?」なんとなく聞いてみたけど、もちろん返事はない。アーメン。

    あまりの暑さにどこかへ逃げようとでもしていたのだろうか。命の抜殻。私はなんとなく目が離せなかった。
    すると、目の前のアスファルトに突然影ができた。同時に頭の上あたりからあの人の声がした。

「朝っぱらから何してんだ?そんなところで。危ないだろ」

    樹がこちらを見下ろしていた。空には立派な入道雲。見上げるような格好だったので、樹が光を放っているように見えた。

「眩しいぜ…」
「何言ってんだ。暑さでやられたのか?」

    樹は自転車から降りると、バス停の正面を通って裏へ回る。自転車を停めに行ったのだろう。一足先にバス停へ入って待っていることにした。樹もすぐに戻ってきて、並んでベンチに腰掛ける。アイスを手渡す。

「はい」
「お、サンキュー。気がきくじゃあないか」

    まるで、おじさんみたいな台詞だ。

「ずいぶん早いんだな」
「まあね」

    気づけばさっきの笛の音に太鼓も参加して、いよいよお囃子らしくなってきた。

「そうか。祭り近いんだったな」
「うん」

    二人並んでアイスを食べながら、黙ってお囃子を聞いていた。バスが来るまであと十五分ほど。

「なあ」
「ん?」

    隣を見ると、樹は何か聞きたそうにアイスを両手で弄んでいた。何のことかはなんとなくわかった。

「志保、帰ってるって言ってたよな?こっちに。元気なんだよな?」

    やっぱり。

「あー…志保ちゃんか…。そうだね。帰ってるけど…元気って?」

    なるべく何でも無い風を装ってそう言った。

「いや、ずっとこっちに帰ってなかっただろ?久々に見たと思ったんだ…おじいさんの病院で。家じゃ無いのが気になって」

    そういうことか。

「なるほどね。心配ありがとう。でも、大丈夫だよ。病院にいたのもたまたまじゃない?おじいさんのところなんだし」
「そうか。それもそうだな」

    病気のことは、教えるわけにはいかない。納得したのかどうなのか表情からは読み取れなかったが、樹は何度か小さく頷いた。私は話を替えることにした。今朝からずっとしたい話があったのだ。どこか遠くを見つめる樹に問いかける。
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