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第10話「次なんて」②
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「確かに、今はそうかも知れないけど、また前みたいに倒れちゃうかも知れないでしょ?お祭りに行くのだって、この坂を登らないと行けないの、知ってるはずよ」
ちいちゃんは再び窓の外へ目を向けた。病院の前から下りる分には緩やかな坂道も、山頂の神社へ近づくにつれて、どんどん傾斜はきつくなる。最後の石段なんかは『心臓破りの石段』とも呼ばれていた。
「わかってる。でも階段なら、ゆっくり上がったり途中途中休憩すれば大丈夫だと思うの」ついには立ち上がって訴えかけてみる。だけど、ちいちゃんの態度は変わらなかった。
「私は…私は反対…。今は、まだゆっくり身体を休めるべきだと思う」
「何か取り返しのつかないことになってからでは遅いの。おじいちゃんだって、それが心配なんだよ」
そう言って、ちいちゃんは視線を床に落とした。
「なんで…なんでちいちゃんまで、そんなこと言うの?」言葉の最後は、ほとんど震えていた。涙が頬を伝う。
「今年、無理に行かなくたって、元気になってから行けばいいじゃない。手術を受けて、元気になってそれから…」
「次なんてないかも知れないじゃない!」
ちいちゃんの言葉を最後まで聞かずに、叫ぶようにして言った。押し込めていた感情が爆発した。次なんてないかもしれない。何もしなくても、したとしても、次があるなんて保証はない。だから、何か心に思い出を刻んでから、手術を受けることにしよう。そう思っていた。それなのに。
「もういい!ちいちゃんなんか、大っ嫌い!」
そう言ってから(しまった…)と思った。そんなことを言うつもりはなかったのに。ちいちゃんを見ると、静かに泣いていた。
「ごめん。ごめんね」
ちいちゃんの膝の上で握りしめた手が小さく震えていた。どうしていいかわからず、布団の中へ逃げ込んだ。そのまましばらくしていると、椅子を片付ける音が聞こえて、ちいちゃんは帰っていった。
ちいちゃんは再び窓の外へ目を向けた。病院の前から下りる分には緩やかな坂道も、山頂の神社へ近づくにつれて、どんどん傾斜はきつくなる。最後の石段なんかは『心臓破りの石段』とも呼ばれていた。
「わかってる。でも階段なら、ゆっくり上がったり途中途中休憩すれば大丈夫だと思うの」ついには立ち上がって訴えかけてみる。だけど、ちいちゃんの態度は変わらなかった。
「私は…私は反対…。今は、まだゆっくり身体を休めるべきだと思う」
「何か取り返しのつかないことになってからでは遅いの。おじいちゃんだって、それが心配なんだよ」
そう言って、ちいちゃんは視線を床に落とした。
「なんで…なんでちいちゃんまで、そんなこと言うの?」言葉の最後は、ほとんど震えていた。涙が頬を伝う。
「今年、無理に行かなくたって、元気になってから行けばいいじゃない。手術を受けて、元気になってそれから…」
「次なんてないかも知れないじゃない!」
ちいちゃんの言葉を最後まで聞かずに、叫ぶようにして言った。押し込めていた感情が爆発した。次なんてないかもしれない。何もしなくても、したとしても、次があるなんて保証はない。だから、何か心に思い出を刻んでから、手術を受けることにしよう。そう思っていた。それなのに。
「もういい!ちいちゃんなんか、大っ嫌い!」
そう言ってから(しまった…)と思った。そんなことを言うつもりはなかったのに。ちいちゃんを見ると、静かに泣いていた。
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