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第18話「うちのもん」①
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それからまた一ヶ月と少しが過ぎて、年が変わろうとしていた。
『志保の容体は良いとも悪いとも言えない』
それが、現地で実際に確認したおじいさんの見解だった。
できるだけ術後の負担やリスクを避けるために、いわゆる『弁形成術』というものを施したとのことだったが、形成した弁の機能が思うようにはたらかないらしく、以前ほどではないとしても、これまでと同じように、発作や不整脈の発生といった懸念は残っているとのことだった。
正月に一旦帰国したおじいさんに呼び出された俺は、何故だか元旦から遠野家の団らんにお邪魔することになり、なんとも居心地の悪い雰囲気の中、そうした報告を聞いていた。
多佳子さんは志保に付きっきりの状態らしく、事務所どころではないらしい。幸い、その仕事ぶりから圧倒的信頼を勝ち取っていたため、顧客が離れるといったことはほとんど無かったそうだ。
協力関係にある事務所を紹介して、一旦、専属的な立場を退くことも考えたそうだが、顧客がそれを許さなかったらしい。
あくまでも多佳子さんを仲介する形で、日々舞い込む依頼は処理されており、仲介手数料と名を変えた見舞い金が現地での生活を支えていると、千鶴さんが自慢げに話してくれた。
「おい、お前。酒は飲めるのか」
おじいさんがぶすっとした態度でそう問いかけると、間髪入れず千鶴さんが窘める。
「あなた!樹君はまだ未成年です!それに何ですか、お前だなんて!」
「ふん!こいつの親父なんかは、これくらいの年の頃にはわしの酒に付き合いおったもんだがな!」
「また!こいつ呼ばわりなんかして。影じゃ『いつきくん、いつきくん』って言ってるくせに...」
「千鶴!」
どんな表情をするのが正解なのかがわからないまま、おじいさんと千鶴さんの押し問答を聞いていた。
「だいたいな。こいつはいずれうちのもんになるんだろう!?そんな奴が酒も飲めないでどうする!」
「だから!樹君は未成年だって……え…?あなた…今なんて言ったの?」
「知らん!」
そう言ったきり、おじいさんがこの件で口を開くことはなかった。
『志保の容体は良いとも悪いとも言えない』
それが、現地で実際に確認したおじいさんの見解だった。
できるだけ術後の負担やリスクを避けるために、いわゆる『弁形成術』というものを施したとのことだったが、形成した弁の機能が思うようにはたらかないらしく、以前ほどではないとしても、これまでと同じように、発作や不整脈の発生といった懸念は残っているとのことだった。
正月に一旦帰国したおじいさんに呼び出された俺は、何故だか元旦から遠野家の団らんにお邪魔することになり、なんとも居心地の悪い雰囲気の中、そうした報告を聞いていた。
多佳子さんは志保に付きっきりの状態らしく、事務所どころではないらしい。幸い、その仕事ぶりから圧倒的信頼を勝ち取っていたため、顧客が離れるといったことはほとんど無かったそうだ。
協力関係にある事務所を紹介して、一旦、専属的な立場を退くことも考えたそうだが、顧客がそれを許さなかったらしい。
あくまでも多佳子さんを仲介する形で、日々舞い込む依頼は処理されており、仲介手数料と名を変えた見舞い金が現地での生活を支えていると、千鶴さんが自慢げに話してくれた。
「おい、お前。酒は飲めるのか」
おじいさんがぶすっとした態度でそう問いかけると、間髪入れず千鶴さんが窘める。
「あなた!樹君はまだ未成年です!それに何ですか、お前だなんて!」
「ふん!こいつの親父なんかは、これくらいの年の頃にはわしの酒に付き合いおったもんだがな!」
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「千鶴!」
どんな表情をするのが正解なのかがわからないまま、おじいさんと千鶴さんの押し問答を聞いていた。
「だいたいな。こいつはいずれうちのもんになるんだろう!?そんな奴が酒も飲めないでどうする!」
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そう言ったきり、おじいさんがこの件で口を開くことはなかった。
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