いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第18話「うちのもん」②

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    千鶴さんはおじいさんをまん丸に見開いた目でまじまじと見つめたあと、俺を見やって満面の笑みをこぼした。声には出さずに『聞いた?今の?』と口を動かして、俺に目配せをする。
「あらいけない、おつまみが足りないわね。とびっきり活きのいいお魚を健二さんに頂いたのよ。さっき樹君が持ってきてくれたのよね。お礼は?あなた」
「......」
    おじいさんは相変わらず仏頂面で酒を飲んでいる。やれやれと千鶴さんは台所へ姿を消した。二人きりになった居間に、静かな時間が流れる。聞こえる物音といえば、柱に掛けられた振り子時計の《コチコチ》という音だけだ。

「おい」
    突然の呼びかけに、体がびくっと強張る。
「はっ...はい!」思わず正座に足を組み直す。
「あいつの...志保の状態が仮に今より劇的に良くなったとしよう。それでも、今後一生、ハンデを持って生きていくことになる。千鶴のように、奇跡的にうまくいくとも限らんしな」
    それはいつになく、弱気な発言に思えた。
「お前、支えていくだけの覚悟はあるんだろうな?」
    そう言って俺を見据えるおじいさんの目を、真っ直ぐ見返して答えた。
「もちろんです。志保がどんな状態であったって、あいつはあいつですから」
「ふんっ...」
「それに、志保の体はおじいさんたちが完璧に治すと、俺、そう信じてますから」
    おじいさんの口元に酒を運ぶ手が止まった。しまった。余計なことを言ったかもしれない。

《ダンッ!》おじいさんはコップを机に叩きつけて言った。
「当たり前だ!ばかもん!」
    なんとなく笑った俺を見て、おじいさんもつられて笑う。それはたった一瞬で、自分が笑ったことに気付いたすぐ後には、元の仏頂面に戻ってしまった。しかし、その眼差しはさっきまでと違って、力強く輝いていたように見えた。
    おじいさんは次の日にはまた海の向こうへ渡っていった。千鶴さんいわく、『若いもんにいいように言われたまま、黙っているわけにはいかん』とのことだった。
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