神様のお楽しみ!

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第一章 神編

リズの魔化

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 アース、アルシオン、テルトの三人が魔法陣を構築している時、リズは一人部分変化を解除して飛んでいた。
 向かう先は、アルバ大森林の中心部に存在するであろう、魔界へと通じる穴。

 森がギュウギュウになるほどの魔物は、本来存在しないハズ。
 それは、森へ行く冒険者ならわかることで、ならそうなったのには理由がある。思いつくのはリズの背後に突然現れたエンヴィーとエンヴィーの背後の黒い穴。
 魔物が増えるのなら、その黒い穴はまだそこにあるという結論になった。そこを突破出来れば、下界から魔界へと入ることが可能となる。

 
 魔物達が一斉に動きを止めた。

 オーガやオークはもちろん、レッドボアやダガーウルフ、ゴブリンなどが全て止まる。斜め上を見上げて、瞬きさえもせず停止していた。

 「待ってて…メア」

 森の中心部には以前見た黒い穴があり、奥に大地が見えた。

 どぷんっ

 まるで、沼に全身をくぐらせたような感覚があった。気持ち悪い。だがそれも一瞬で終わった。

 さっきまで魔物がいた方向から魔法が放たれたのか、穴の向こうが真っ白になった。
 しかし、音も爆風も衝撃も何も起きなかった。もしかしたら、そういうのは届かないのかも知れない。
 黒い穴に、ヒビが入り……


 バリィンッ!!


 これで良い。私の役目は半分達成された。後は、メアを助けるだけ。





 魔界には初めて来た。
 魔界で生まれたことは覚えていないし、当時の魔界の様子もわからない。
 でも、ここは酷い。

 乾いた大地、見える場所に草木は一本もなく、大小様々な魔物が大量にいるだけ。
 この敵を全て一人で倒さなければならない。たった一人で出来るだろうか。

 『魔化するのだろう?』
 
 上から問われた。見上げると、アビスという者がいた。

 『魔化するならば、イビルメアと唱えよ』

 「イビルメア」

 身体の奥深くで押し止めていたちからが溢れてくる。
 薄らと瞼を開けると周囲で渦を巻くように、闇と光の二属性が輝く。

 隣に着地したアビス。彼の周囲には男女問わず多くの者達が、跪いていた。
 彼からはアースを見た時と同様の感覚がする。

 『ナジャ、我が前に』

 彼の言葉でナジャと呼ばれた女性が、降り立った。

 鳥のような翼ではなく薄い膜のような黒い羽に、頭の側面から上に鋭く伸びた白銀の角、こげ茶色の肌に、きわどい衣服を少し。
 金色に光る瞳が美しかった。

 あぁ、私もこんな綺麗な姿なのかな……。

 『では、行くぞリズ、ナジャ』

 『お任せ下さい!』

 咄嗟に出た言葉に安心感を覚えた。
 
 あぁ、私はこちら側なんだ。

 ……終わったら母と戻ろう。

 
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