33 / 108
第一章 神編
リズの魔化
しおりを挟む
アース、アルシオン、テルトの三人が魔法陣を構築している時、リズは一人部分変化を解除して飛んでいた。
向かう先は、アルバ大森林の中心部に存在するであろう、魔界へと通じる穴。
森がギュウギュウになるほどの魔物は、本来存在しないハズ。
それは、森へ行く冒険者ならわかることで、ならそうなったのには理由がある。思いつくのはリズの背後に突然現れたエンヴィーとエンヴィーの背後の黒い穴。
魔物が増えるのなら、その黒い穴はまだそこにあるという結論になった。そこを突破出来れば、下界から魔界へと入ることが可能となる。
魔物達が一斉に動きを止めた。
オーガやオークはもちろん、レッドボアやダガーウルフ、ゴブリンなどが全て止まる。斜め上を見上げて、瞬きさえもせず停止していた。
「待ってて…メア」
森の中心部には以前見た黒い穴があり、奥に大地が見えた。
どぷんっ
まるで、沼に全身をくぐらせたような感覚があった。気持ち悪い。だがそれも一瞬で終わった。
さっきまで魔物がいた方向から魔法が放たれたのか、穴の向こうが真っ白になった。
しかし、音も爆風も衝撃も何も起きなかった。もしかしたら、そういうのは届かないのかも知れない。
黒い穴に、ヒビが入り……
バリィンッ!!
これで良い。私の役目は半分達成された。後は、メアを助けるだけ。
魔界には初めて来た。
魔界で生まれたことは覚えていないし、当時の魔界の様子もわからない。
でも、ここは酷い。
乾いた大地、見える場所に草木は一本もなく、大小様々な魔物が大量にいるだけ。
この敵を全て一人で倒さなければならない。たった一人で出来るだろうか。
『魔化するのだろう?』
上から問われた。見上げると、アビスという者がいた。
『魔化するならば、イビルメアと唱えよ』
「イビルメア」
身体の奥深くで押し止めていた力が溢れてくる。
薄らと瞼を開けると周囲で渦を巻くように、闇と光の二属性が輝く。
隣に着地したアビス。彼の周囲には男女問わず多くの者達が、跪いていた。
彼からはアースを見た時と同様の感覚がする。
『ナジャ、我が前に』
彼の言葉でナジャと呼ばれた女性が、降り立った。
鳥のような翼ではなく薄い膜のような黒い羽に、頭の側面から上に鋭く伸びた白銀の角、こげ茶色の肌に、際どい衣服を少し。
金色に光る瞳が美しかった。
あぁ、私もこんな綺麗な姿なのかな……。
『では、行くぞリズ、ナジャ』
『お任せ下さい!』
咄嗟に出た言葉に安心感を覚えた。
あぁ、私はこちら側なんだ。
……終わったら母と戻ろう。
向かう先は、アルバ大森林の中心部に存在するであろう、魔界へと通じる穴。
森がギュウギュウになるほどの魔物は、本来存在しないハズ。
それは、森へ行く冒険者ならわかることで、ならそうなったのには理由がある。思いつくのはリズの背後に突然現れたエンヴィーとエンヴィーの背後の黒い穴。
魔物が増えるのなら、その黒い穴はまだそこにあるという結論になった。そこを突破出来れば、下界から魔界へと入ることが可能となる。
魔物達が一斉に動きを止めた。
オーガやオークはもちろん、レッドボアやダガーウルフ、ゴブリンなどが全て止まる。斜め上を見上げて、瞬きさえもせず停止していた。
「待ってて…メア」
森の中心部には以前見た黒い穴があり、奥に大地が見えた。
どぷんっ
まるで、沼に全身をくぐらせたような感覚があった。気持ち悪い。だがそれも一瞬で終わった。
さっきまで魔物がいた方向から魔法が放たれたのか、穴の向こうが真っ白になった。
しかし、音も爆風も衝撃も何も起きなかった。もしかしたら、そういうのは届かないのかも知れない。
黒い穴に、ヒビが入り……
バリィンッ!!
これで良い。私の役目は半分達成された。後は、メアを助けるだけ。
魔界には初めて来た。
魔界で生まれたことは覚えていないし、当時の魔界の様子もわからない。
でも、ここは酷い。
乾いた大地、見える場所に草木は一本もなく、大小様々な魔物が大量にいるだけ。
この敵を全て一人で倒さなければならない。たった一人で出来るだろうか。
『魔化するのだろう?』
上から問われた。見上げると、アビスという者がいた。
『魔化するならば、イビルメアと唱えよ』
「イビルメア」
身体の奥深くで押し止めていた力が溢れてくる。
薄らと瞼を開けると周囲で渦を巻くように、闇と光の二属性が輝く。
隣に着地したアビス。彼の周囲には男女問わず多くの者達が、跪いていた。
彼からはアースを見た時と同様の感覚がする。
『ナジャ、我が前に』
彼の言葉でナジャと呼ばれた女性が、降り立った。
鳥のような翼ではなく薄い膜のような黒い羽に、頭の側面から上に鋭く伸びた白銀の角、こげ茶色の肌に、際どい衣服を少し。
金色に光る瞳が美しかった。
あぁ、私もこんな綺麗な姿なのかな……。
『では、行くぞリズ、ナジャ』
『お任せ下さい!』
咄嗟に出た言葉に安心感を覚えた。
あぁ、私はこちら側なんだ。
……終わったら母と戻ろう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
212
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる