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第二章 婚約破棄編
懲りない常習犯
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カチャ……リン
そぉーっと扉を開け、小さく鳴るベルに刺激を与えないよう、止める。
ここの配置は頭にある為、軋みが少ない板の上を忍び足で進む。
たどり着いた扉の鍵穴に、スペアキーの複製を差し込み回す。
ようやく目的地に着き、ホッとため息を吐いた。前回、みーちゃんが犯した失敗はしない。出入口である扉は開けたまま。すぐに入手した物を持って逃走する。
冷凍庫の一番下の段に狙いをつけて勢い良く踏み出した。
ゴン!!
「ぁ痛っ!」
見えない何かに頭をぶつけ、後方へと倒れる。その人物を慌てて受け止めると、ガチャ…バタン!ダダダダッと、耳にしたくない音が上からまた聞こえて来た。
すでに明かりは着いており彼らの到着を待つばかり。
「ヴァイス、倒れている彼女が常習犯のアクロ・グランツです」
「し、師匠ー。カイトさん来ちゃいましたー」
スッと上体を起こし立ち上がった彼女の額はやや赤くなっていて、痛そうだ。彼女は先程頭をぶつけた場所を一目見て、寝間着姿の男性の方へ振り返った。
「……誰、あんた」
「師匠、カイトさんです」
弟子に小声で言われてハッとした彼女は、再度確認して吹き出した。
「カウボア…かわいいですね」
カウボアの着ぐるみを寝間着としているカイトの姿に、彼女は吹き出したのだ。
「兵を呼びますか?」
「いや、いつものことだから大丈夫。ミーナさん朝食は?」
「お願いします!あっお皿出しますね」
お互い慣れたやり取りに困惑顔の青年ヴァイスは頭を抱えた。常識的に考えれば侵入は罪で兵に引き渡すもの。なのに彼女達は慣れた様子で接している。この国がおかしいのか、この店がおかしいのか…出た結論は後者だった。
深く考えること止めた彼は、賑やかなその輪に加わった。
「眠い……」
「シュウ君、寝不足?」
頷くシュウ少年の隣でカイトが理由を説明した。
「アース様に新作料理を教わってたんですよ」
「アース?今、アースって言った?!カイトあんた、アースに会ったの?!どこ?どこにいるか教えなさいよ!」
素早くテーブルを回り込みカイトの胸ぐらを掴み、激しく揺すること三十秒程。頭を押えるカイトに同情しつつ、アクロの熱狂的な反応に引くことを覚えたヴァイスは、彼の代わりに居場所を言った。いや、言ってしまった。
「アース様なら冒険者ギルドです」
聞き終わってすぐ、朝食をそのままに駆け出して行く。あまりの速さに、弟子のミーナは追いかけることを諦め食べ進めた。
「新作ってどんな料理なんですか?」
「カウボアのすじ肉煮込みと言って、トロトロになるまで具材と煮込んでいて、絶品でした。少量のトウガラシとネギが良い辛味でしたが、ミーナさんにはまだ早いのでそのままが良いでしょう」
「すじ肉がトロトロ……」
「その代わり、出来るまで半日はかかりますけど」
カイトの言葉にミーナはガックリ肩を落として、全身で落ち込んだ。
これが彼女の素なのかとヴァイスは受け止めた。想像してたよりも賑やかで話題に尽きない店に、ワクワクした。シャイニーに話したい、この楽しい空間を伝えたい。
彼がこの店に染まるのはそう遠くないだろう。
そぉーっと扉を開け、小さく鳴るベルに刺激を与えないよう、止める。
ここの配置は頭にある為、軋みが少ない板の上を忍び足で進む。
たどり着いた扉の鍵穴に、スペアキーの複製を差し込み回す。
ようやく目的地に着き、ホッとため息を吐いた。前回、みーちゃんが犯した失敗はしない。出入口である扉は開けたまま。すぐに入手した物を持って逃走する。
冷凍庫の一番下の段に狙いをつけて勢い良く踏み出した。
ゴン!!
「ぁ痛っ!」
見えない何かに頭をぶつけ、後方へと倒れる。その人物を慌てて受け止めると、ガチャ…バタン!ダダダダッと、耳にしたくない音が上からまた聞こえて来た。
すでに明かりは着いており彼らの到着を待つばかり。
「ヴァイス、倒れている彼女が常習犯のアクロ・グランツです」
「し、師匠ー。カイトさん来ちゃいましたー」
スッと上体を起こし立ち上がった彼女の額はやや赤くなっていて、痛そうだ。彼女は先程頭をぶつけた場所を一目見て、寝間着姿の男性の方へ振り返った。
「……誰、あんた」
「師匠、カイトさんです」
弟子に小声で言われてハッとした彼女は、再度確認して吹き出した。
「カウボア…かわいいですね」
カウボアの着ぐるみを寝間着としているカイトの姿に、彼女は吹き出したのだ。
「兵を呼びますか?」
「いや、いつものことだから大丈夫。ミーナさん朝食は?」
「お願いします!あっお皿出しますね」
お互い慣れたやり取りに困惑顔の青年ヴァイスは頭を抱えた。常識的に考えれば侵入は罪で兵に引き渡すもの。なのに彼女達は慣れた様子で接している。この国がおかしいのか、この店がおかしいのか…出た結論は後者だった。
深く考えること止めた彼は、賑やかなその輪に加わった。
「眠い……」
「シュウ君、寝不足?」
頷くシュウ少年の隣でカイトが理由を説明した。
「アース様に新作料理を教わってたんですよ」
「アース?今、アースって言った?!カイトあんた、アースに会ったの?!どこ?どこにいるか教えなさいよ!」
素早くテーブルを回り込みカイトの胸ぐらを掴み、激しく揺すること三十秒程。頭を押えるカイトに同情しつつ、アクロの熱狂的な反応に引くことを覚えたヴァイスは、彼の代わりに居場所を言った。いや、言ってしまった。
「アース様なら冒険者ギルドです」
聞き終わってすぐ、朝食をそのままに駆け出して行く。あまりの速さに、弟子のミーナは追いかけることを諦め食べ進めた。
「新作ってどんな料理なんですか?」
「カウボアのすじ肉煮込みと言って、トロトロになるまで具材と煮込んでいて、絶品でした。少量のトウガラシとネギが良い辛味でしたが、ミーナさんにはまだ早いのでそのままが良いでしょう」
「すじ肉がトロトロ……」
「その代わり、出来るまで半日はかかりますけど」
カイトの言葉にミーナはガックリ肩を落として、全身で落ち込んだ。
これが彼女の素なのかとヴァイスは受け止めた。想像してたよりも賑やかで話題に尽きない店に、ワクワクした。シャイニーに話したい、この楽しい空間を伝えたい。
彼がこの店に染まるのはそう遠くないだろう。
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