【R18】魔術師伯爵の秘密実験〜快楽の代償は溺愛でした〜

布団のノラネコ

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8話

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 少しずつ仕事にも慣れ始めてきた頃——。

 新たな試練がエリーゼに襲いかかってきていた。

「外出時の遠隔桃玉性能試験?」

 ヴィクトールに言われた言葉に、エリーゼは頭に疑問符を浮かべる。

「そう。青玉の遠隔操作を可能にしたものを開発してね。色にちなんで桃玉と名付けたんだけど、それの外出時の性能試験がしたいんだ」

 ヴィクトールが取り出したのは、あの振動する水色の球とよく似た形をした、桃色の球だった。

「これを乳首や陰核に取り付けて、外出先で遠隔操作で振動させる。そういう遊び方が実際にできるのかどうか、試してみたい」
「……は、はいぃぃ!?」

 何を言っているんだこの人は——と、エリーゼは絶句した。

 ヴィクトールの言い分が理解できない。いや、理解したくない。

「使用はデートを想定しているからね。せっかくだから、観劇に行こうか」

 王都の国立歌劇場は気になってはいた。確かに観にいってみたいとも。だが、こんな形で、ではない。

「あ、あの……本当に、何を言って……。流石に私、それは嫌です!」

 このまま流されてはいけない、とエリーゼは必死で主張する。

 その言葉に眉を下げたヴィクトールは、さらさらと小切手に何事か書きつけた。

「じゃあ、臨時手当てを弾もう。これくらいでどうかな?」

 示された数字は、母の治療費を補うだけではなく、父の残した借金の返済にも回せるような額だった。

「くっ……うぅ……」

 呻くエリーゼ。

「わ、わかりました。やります」

 渋々受け入れたエリーゼは、外出の支度をする。

 乳首と陰核に桃色の球を取り付けると、吸い付くようなその感触だけで、体が熱くなった。
 こんな状態で本当に出かけられるのかと疑問を持ちつつも、臨時手当てのために気力を振り絞ってドレスに着替える。

 メイドに手伝ってもらって外出用のサマードレスを着たエリーゼは、一見すると清楚なご令嬢そのものだ。
 それなのに乳首と秘部にいやらしい魔道具を取り付けているなんて、その事実にめまいがした。

 玄関ホールに降りて行くと、すでに正装に身を包んだヴィクトールが待ち構えていた。

 普段降ろされている銀髪は高い位置でハーフアップに結い上げられていて、女性的な美貌をさらに輝かせている。
 傾国の美女もかくやという顔立ちに反して、長身の肉体は男性らしく、ジャケットとブリーチズに身を包んだ長い手足は人気俳優のようだ。

 そのポケットの中に、桃玉の振動を操る妖しい魔道具のコントローラーが秘められていさえしなければ、エリーゼもデートを歓迎できたものを、と嘆息した。

「じゃあ、早速出かけようか」

 いつあの振動が襲ってくるのか、と緊張しながら、エリーゼは馬車に乗り込む。

 まずは王宮前の噴水広場で、軽食を食べる予定だった。それから国立歌劇場に行って観劇をする。

 エリーゼはその間、いつ襲いくるのかわからない振動を警戒しながら、声を出さないように我慢しなければならない。

 デートとは言っても、苦行に近いものだった。

 馬車に乗っている間は平和だった。

 ヴィクトールはコントローラーの入っているポケットに手を入れる様子はなく、馬車の窓をゆったりと眺めていた。その横顔は妖しいまでに美しく、日中の明るい日差しでさえもその神秘性を損なうことはなかった。

 (あんな研究をしているけれど、恋人や婚約者などはいないのかしら……)

 ヴィクトールの美しい横顔を眺めながら、エリーゼは思案する。

 伯爵という高い身分に、この美しい顔立ち。表に出せる健全な発明だけでも、魔道具師として名を馳せている実績の多さ。年頃の女性は放っておかないだろう。

 だが、仕事とはいえ女性の秘部を弄ったりするのだから、恋人はいないのだろうか。

「あの……、ヴィクトール様は、こういうお仕事をされているわけですけれど、恋人はいらっしゃらないのですか?」

 気になって仕方がなかったエリーゼは、つい無意識にそんな疑問を口にしてしまう。

「恋人? うーん、いらないかな」

 ヴィクトールは珍しく、冷たい口調で突き放すように答えた。

 『いる・いない』ではなく、いらないと答えたヴィクトール。そこに何かしらの含みを感じて、エリーゼは不用意な質問をしてしまったことを悔やむ。

 どうやらヴィクトールは恋人という存在に何かしらの抵抗感を抱いているようだった。

 重苦しい沈黙が馬車を包む。

 会話のきっかけを探しながらも何も言い出せないでいる内に、馬車は王宮前の噴水広場へと到着した。

 そこは中心に馬と英雄の石像が飾られている美しい円形の広場で、エリーゼも暇な時間に時折遊びにきている場所だ。

 王宮前の一等地にあるだけあって、あたりを行き交っているのは美しく着飾った紳士淑女が多い。最近流行りのつばが広い羽付き帽などをかぶっている貴婦人も多く、ぶつからないように気をつけなければならなかった。

「ランチでも食べて行こうか」

 ヴィクトールは馬車から降りるエリーゼに手を差し出して言った。

 エリーゼはその腕に捕まりながら、ヴィクトールの体に身を預ける。

 と、その瞬間。

 ヴゥン——。

「っ!?」

 乳首に取り付けられている桃玉が振動した。かろうじて声を出すのは抑えたが、体のバランスが崩れる。側から見たら、馬車から降りる時にバランスを崩してしまっただけのように見えるだろう。

 ヴィクトールはそれを狙ってスイッチを入れたのだ。

 他人から訝しがられないように。

 けれど、馬車を出て人目にさらされている羞恥と興奮を深く煽るように。

 エリーゼは次第にヴィクトールの習性が見えてきた。

 普段は優しく穏やかだが、研究者として冷酷なまでに真面目で、実験のためなら婦女を辱めることも厭わない。

 場所が屋外だからといって、情け容赦を期待するだけ無駄だ、とエリーゼは悟った。

 (もし周りの人に気づかれちゃったらどうしよう……。声、我慢しなきゃ)

 大きな不安に駆られながら、まだデートは始まったばかりだった。
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