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24話
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無事に舞踏会での顔見せが終わった。
次は婚約お披露目パーティーの準備だ。
準備期間中、エリーゼは目まぐるしく働いた。アルトマン伯爵夫人から、伯爵夫人としての心得や仕事を教わり、それと同時進行でお披露目パーティーの差配を振るう。
アドバイスを受けながらも、女主人はエリーゼであるため、最終決定権はエリーゼにある。仕事はかけらもサボれない。
「エリーゼ様、テーブルクロスはこちらの白地に金の刺繍が入ったものでよろしいでしょうか?」
「ええ。それで結構です。ただし、シミや綻びがないか、使用前に必ず確認してください」
「かしこまりました」
メイドたちに指示を出しながら、エリーゼは招待客のリストに目を通す。
上級貴族にヴィクトールと親交のある魔道具師たち。招待客は百人を超える。その一人一人の席次をきめ、食事の好みを把握しなければならない。
「エリーゼ、無理をしていないかい?」
執務室から出てきたヴィクトールが、心配そうにエリーゼの顔を覗き込んだ。
「大丈夫です。これくらい、伯爵夫人になるための修行だと思えば」
「でも、顔色が悪いよ……。少し休んだほうがいい」
「ヴィクトール様こそ、最近お忙しそうですね。王族からの依頼の魔道具、納期が迫っているのでは?」
エリーゼがそう問いかけると、ヴィクトールは少し困ったように眉を下げた。
「まあ、そうなんだけど。でも、君のほうが心配だよ」
「ありがとうございます。でも準備は順調に進んでいますから」
多忙な中でも互いを慈しみ合い、お披露目パーティーだけでなく二人の関係も順調だった。
そして、ついにその日を迎える。
早朝から屋敷は大忙しだ。使用人たちが会場の最終チェックをし、料理人たちは厨房で腕を振るっている。
「エリーゼ様、お召し物の準備ができております」
メイドに促されて、エリーゼは自室へ向かった。
そこには、アルトマン夫人と相談して特別に仕立てた、豪華なドレスが用意されていた。
淡いラベンダー色のシルクに、繊細な銀糸の刺繍が施されている。胸元と袖口には小さな宝石が散りばめられていて、光を受けるとキラキラと輝く。
「本当に素敵……」
エリーゼは思わずうっとりとため息を吐いた。
メイドたちの手を借りて、丁寧にドレスを着込んでいく。
コルセットをきつく閉められ、スカートの下にはパニエが何枚も重ねられている。
髪は優雅に結い上げられ、ヴィクトールから贈られた宝石のティアラが飾られた。
「エリーゼ様、本当にお美しい……」
鏡に映る自分を見て、エリーゼ自身も驚いた。まるで別人のように華やかで、気品に満ちている。
「これなら、伯爵夫人として恥ずかしくないかしら……」
緊張を押し殺しながら、エリーゼは深く深呼吸した。
そのとき、ドアがノックされる。
「エリーゼ、準備はできたかい?」
ヴィクトールの声だ。
「はい、ただいま」
エリーゼがドアを開けると、ヴィクトールは目を見開いた。
「綺麗だ……エリーゼ」
ヴィクトールも正装に身を包んでいた。白を基調とした礼服に、エリーゼの栗色の髪と青い瞳に合わせた刺繍と宝石が散りばめられている。
彼の美しい容姿と相待って、まるで伝説の貴公子のようだ。
「ヴィクトール様も、とてもお似合いです」
二人は見つめ合い、微笑んだ。
「さあ、行こうか。君の晴れ舞台だ」
二人は歩き出し、来客を出迎えるべく階下へと降りる。
大広間は美しく飾り付けられていた。
シャンデリアの魔道具が煌々と光り輝き、テーブルには豪華な料理が並んでいる。今日のために特別に雇った楽団が優雅な音楽を奏で、招待客たちは談笑している。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。私は新たな妻として、このエリーゼ・フォン・リヒテンベルクを迎えることといたしました。皆様におかれましては、伯爵家の新たなる門出を祝福していただけますと幸いです」
ヴィクトールが招待客に挨拶をし、エリーゼを紹介する。
「まあ、なんて美しい方なの」
「リヒテンベルクといえば、南の田舎の方にある男爵領か……名門のシュタインフェルト伯爵家と結ばれるとは……」
「でも、なんだか雰囲気がお似合いだわ」
人々は口々に囁き合い、エリーゼを品評するもの、祝福するもの、微笑ましげに見守るものと様々な視線が向けられた。
その視線にも臆さずに、エリーゼはピンと背筋を伸ばして迎え入れる。
人の群衆の中には、エリーゼの母と兄も含まれていた。
それぞれ滂沱の涙を流しながら、エリーゼを見つめている。
(もう、お母様とお兄様ったら、そんなに感動して泣かなくてもいいのに……)
壇上での挨拶が終わったら、それぞれ招待客と挨拶を交わしていく。
招待客リストは完璧に頭に入れてきたから、なんとか粗相はせずに挨拶を済ませることができた。
「本当におめでとう、ヴィクトール」
「ヨハン、ありがとう」
「今日のエリーゼ嬢は格別に美しいな、ヴィクトール、この幸せ者め」
「はは、だろう?」
中でもヴィクトールの友人であるヨハンは気さくで、挨拶の緊張で疲れた心が少し休まった。
エリーゼの家族、ヴィクトールの家族ともそれぞれ顔合わせを済ませて、お披露目パーティーはつつがなく進む。
パーティーも終盤に差し掛かった頃、アルトマン伯爵夫人がエリーゼの元へやってきた。
「エリーゼ、素晴らしいパーティーでしたわ」
「アルトマン夫人、ありがとうございます。夫人のご指導のおかげです」
「いいえ、これは貴方自身の努力の賜物よ。よくここまで成長されました」
夫人は満足げに微笑むと、エリーゼの手を取った。
「これから先、伯爵夫人として様々な困難があるでしょう。でも、貴方ならきっと乗り越えられる。そう確信しています」
「夫人……」
「そして、何かあれば遠慮なく私を頼りなさい。貴方は今や、私の大切な教え子なのですから」
その言葉に、エリーゼは目頭が熱くなった。
「ありがとうございます、夫人」
二人は固く抱き合った。
次は婚約お披露目パーティーの準備だ。
準備期間中、エリーゼは目まぐるしく働いた。アルトマン伯爵夫人から、伯爵夫人としての心得や仕事を教わり、それと同時進行でお披露目パーティーの差配を振るう。
アドバイスを受けながらも、女主人はエリーゼであるため、最終決定権はエリーゼにある。仕事はかけらもサボれない。
「エリーゼ様、テーブルクロスはこちらの白地に金の刺繍が入ったものでよろしいでしょうか?」
「ええ。それで結構です。ただし、シミや綻びがないか、使用前に必ず確認してください」
「かしこまりました」
メイドたちに指示を出しながら、エリーゼは招待客のリストに目を通す。
上級貴族にヴィクトールと親交のある魔道具師たち。招待客は百人を超える。その一人一人の席次をきめ、食事の好みを把握しなければならない。
「エリーゼ、無理をしていないかい?」
執務室から出てきたヴィクトールが、心配そうにエリーゼの顔を覗き込んだ。
「大丈夫です。これくらい、伯爵夫人になるための修行だと思えば」
「でも、顔色が悪いよ……。少し休んだほうがいい」
「ヴィクトール様こそ、最近お忙しそうですね。王族からの依頼の魔道具、納期が迫っているのでは?」
エリーゼがそう問いかけると、ヴィクトールは少し困ったように眉を下げた。
「まあ、そうなんだけど。でも、君のほうが心配だよ」
「ありがとうございます。でも準備は順調に進んでいますから」
多忙な中でも互いを慈しみ合い、お披露目パーティーだけでなく二人の関係も順調だった。
そして、ついにその日を迎える。
早朝から屋敷は大忙しだ。使用人たちが会場の最終チェックをし、料理人たちは厨房で腕を振るっている。
「エリーゼ様、お召し物の準備ができております」
メイドに促されて、エリーゼは自室へ向かった。
そこには、アルトマン夫人と相談して特別に仕立てた、豪華なドレスが用意されていた。
淡いラベンダー色のシルクに、繊細な銀糸の刺繍が施されている。胸元と袖口には小さな宝石が散りばめられていて、光を受けるとキラキラと輝く。
「本当に素敵……」
エリーゼは思わずうっとりとため息を吐いた。
メイドたちの手を借りて、丁寧にドレスを着込んでいく。
コルセットをきつく閉められ、スカートの下にはパニエが何枚も重ねられている。
髪は優雅に結い上げられ、ヴィクトールから贈られた宝石のティアラが飾られた。
「エリーゼ様、本当にお美しい……」
鏡に映る自分を見て、エリーゼ自身も驚いた。まるで別人のように華やかで、気品に満ちている。
「これなら、伯爵夫人として恥ずかしくないかしら……」
緊張を押し殺しながら、エリーゼは深く深呼吸した。
そのとき、ドアがノックされる。
「エリーゼ、準備はできたかい?」
ヴィクトールの声だ。
「はい、ただいま」
エリーゼがドアを開けると、ヴィクトールは目を見開いた。
「綺麗だ……エリーゼ」
ヴィクトールも正装に身を包んでいた。白を基調とした礼服に、エリーゼの栗色の髪と青い瞳に合わせた刺繍と宝石が散りばめられている。
彼の美しい容姿と相待って、まるで伝説の貴公子のようだ。
「ヴィクトール様も、とてもお似合いです」
二人は見つめ合い、微笑んだ。
「さあ、行こうか。君の晴れ舞台だ」
二人は歩き出し、来客を出迎えるべく階下へと降りる。
大広間は美しく飾り付けられていた。
シャンデリアの魔道具が煌々と光り輝き、テーブルには豪華な料理が並んでいる。今日のために特別に雇った楽団が優雅な音楽を奏で、招待客たちは談笑している。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。私は新たな妻として、このエリーゼ・フォン・リヒテンベルクを迎えることといたしました。皆様におかれましては、伯爵家の新たなる門出を祝福していただけますと幸いです」
ヴィクトールが招待客に挨拶をし、エリーゼを紹介する。
「まあ、なんて美しい方なの」
「リヒテンベルクといえば、南の田舎の方にある男爵領か……名門のシュタインフェルト伯爵家と結ばれるとは……」
「でも、なんだか雰囲気がお似合いだわ」
人々は口々に囁き合い、エリーゼを品評するもの、祝福するもの、微笑ましげに見守るものと様々な視線が向けられた。
その視線にも臆さずに、エリーゼはピンと背筋を伸ばして迎え入れる。
人の群衆の中には、エリーゼの母と兄も含まれていた。
それぞれ滂沱の涙を流しながら、エリーゼを見つめている。
(もう、お母様とお兄様ったら、そんなに感動して泣かなくてもいいのに……)
壇上での挨拶が終わったら、それぞれ招待客と挨拶を交わしていく。
招待客リストは完璧に頭に入れてきたから、なんとか粗相はせずに挨拶を済ませることができた。
「本当におめでとう、ヴィクトール」
「ヨハン、ありがとう」
「今日のエリーゼ嬢は格別に美しいな、ヴィクトール、この幸せ者め」
「はは、だろう?」
中でもヴィクトールの友人であるヨハンは気さくで、挨拶の緊張で疲れた心が少し休まった。
エリーゼの家族、ヴィクトールの家族ともそれぞれ顔合わせを済ませて、お披露目パーティーはつつがなく進む。
パーティーも終盤に差し掛かった頃、アルトマン伯爵夫人がエリーゼの元へやってきた。
「エリーゼ、素晴らしいパーティーでしたわ」
「アルトマン夫人、ありがとうございます。夫人のご指導のおかげです」
「いいえ、これは貴方自身の努力の賜物よ。よくここまで成長されました」
夫人は満足げに微笑むと、エリーゼの手を取った。
「これから先、伯爵夫人として様々な困難があるでしょう。でも、貴方ならきっと乗り越えられる。そう確信しています」
「夫人……」
「そして、何かあれば遠慮なく私を頼りなさい。貴方は今や、私の大切な教え子なのですから」
その言葉に、エリーゼは目頭が熱くなった。
「ありがとうございます、夫人」
二人は固く抱き合った。
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